自然と生物多様性

コンゴ民主共和国が、地球上で最大の熱帯雨林保護地区を制定

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世界最大の熱帯雨林の炭素吸収源であるコンゴ盆地は、戦争、貧困、気候危機に脅かされています。 Image: Therese Redaelli

Gill Einhorn
Head of Innovation and Transformation, World Economic Forum
Emmanuel de Merode
Director, Virunga National Park, Institut Congolais pour la Conservation de la Nature (ICCN)
本稿は、以下会合の一部です。世界経済フォーラム年次総会2025
  • 世界最大の熱帯雨林の炭素吸収源であるコンゴ盆地は、戦争、貧困、気候危機に脅かされています。
  • コンゴ民主共和国東部では、環境に配慮した経済発展、自然保護、平和構築の新しいモデルが、森林を保護しながら、自然資源を持続的に活用して地域社会に利益をもたらしています。
  • コンゴ民主共和国政府とパートナーは、ダボスで開催される世界経済フォーラム年次総会で「キブ・キンシャサ・グリーン回廊」を発表しました。このモデルは、フランスと同等の面積に拡大される予定です。

森林は、大気中の二酸化炭素を酸素に変換し、人間の呼吸を可能にすると同時に、炭素を地中に貯蔵します。アマゾンの炭素貯蔵能力は着実に失われており、2021年には炭素吸収源から排出源へと転換しました。しかし、コンゴ盆地は依然として炭素吸収源として有効に機能しており、大気中の温室効果ガスを制限する、地球にとって重要な緩衝地帯となっています。

コンゴ民主共和国政府の大胆かつ協調的なリーダーシップにより、森林とその生息生物を保護、回復、再生させるための計画が進行中です。

中央アフリカに抱かれた緑の宝石

コンゴ盆地は、地球上で最大の広大な手つかずの熱帯雨林の生息地であり、その面積は約370万平方キロメートルに及びます。また、コンゴ民主共和国には、アイスランドとほぼ同じ面積の10万8,000平方キロメートルもの広大な原生林が残されています。しかし今日、地球に残るこの最大の森林地帯の分断が進行しています。その要因となっているのは、道路インフラ、人間による資源採取、気候危機です。これらの要因が組み合わさり、森林伐採、熱、干ばつ、火災、洪水などの事象を通じて、森林の生物群系や生物種が変化し、減少しているのです。これまでのところ、コンゴ盆地は驚くべきレジリエンスを示してきました。

この地域は現在、世界最大の健全な熱帯林炭素吸収源であり、泥炭湿地帯に290億トンもの炭素が貯蔵され、年間15億トンの二酸化炭素を吸収しています。これは、世界の温室効果ガス排出量の約3年分に相当します。

コンゴ盆地はカメルーン、中央アフリカ共和国、コンゴ民主共和国、コンゴ、赤道ギニア、ガボンの6か国にまたがっています。この森林の約60%はコンゴ民主共和国に位置しています。また、コンゴ盆地には1万種の固有種が生息しており、その3分の1は地球上の他の場所では見られません。同時にこの森林は6,000万の人々の生活も支えており、食料、暖房、エネルギー、雇用を森林資源に依存しています。
危機に瀕するアフリカの熱帯雨林

コンゴ盆地は、単一作物のプランテーション、工業的畜産、森林伐採、干ばつや伝染病の蔓延をはじめとする気候危機の影響など、数多くの脅威に直面しており、その脅威は増大する一方です。コンゴ民主共和国の東部では、森林は戦争の脅威にもさらされています。数十年にわたる武力紛争は地域社会を苦しめ、経済成長を阻害してきました。住民の90%近くが極度の貧困水準(世界銀行の基準で1人1日あたり1.90ドル未満)で暮らしているため、薪のための森林伐採や自給自足の農業が一般的ですが、武装集団が違法に天然資源を横流ししており、特に電気の不足による木炭需要の高さが課題となっています。

1996年の戦争開始以来、600万人以上のコンゴ人が命を落としており、この30年間で最も多くの死者を出した悲劇の一つです。しかしこれはほとんど知られていません。このことは、アフリカ最古の国立公園であるヴィルンガ国立公園のあるコンゴ民主共和国東部において、特に顕著です。同公園は、地球上で最も生物多様性に富んだ場所の一つです。国際連合教育科学文化機関(ユネスコ)世界遺産であるヴィルンガ国立公園は、大きなレジリエンスと悲劇の物語を体現しています。現在、同公園の半分以上が反政府勢力の支配下にあり、この独特な自然遺産を守ろうとして、公務員である公園監視員211名が命を落としています。

新たな道を切り開く「ヴィルンガ・アライアンス」

ヴィルンガ国立公園は、現在も続く武力紛争にもかかわらず、驚くべきレジリエンスを示しています。コンゴ民主共和国政府は、この公園の保護、森林の保全、そして貴重な野生生物の回復に尽力してきました。さらに重要なことに、公園の豊富な天然資源を継続的に活用し、環境に配慮した経済活動を活性化させるという原則に基づく、画期的な経済モデルを他国に先駆けて導入。これにより、平和と繁栄の条件が整い、地域住民に機会を提供し、武装集団が天然資源の違法取引で利益を得られないようにする、クリーンな代替経済が徐々に構築されていきます。

このモデルは「ヴィルンガ・アライアンス」と呼ばれ、クリーンな再生可能エネルギーと持続可能な農業を通じて、公園周辺の1,100万人の人々の経済推進力としてエコシステムを変貌させます。政府機関、市民社会、企業のユニークなパートナーシップを通じて、ヴィルンガ国立公園はコンゴ東部の住民にとって最大のクリーンエネルギー源となっているのです。過去5年間で21,000人以上の雇用を創出し、研究によれば、さらに100,000人の雇用と年間10億ドルの収益を生み出す可能性を秘めています。重要なことは、武装民兵を離れ、武器を捨てて有給の職に就くことを選んだ若者たちが、これらの職の11%を占めていることです。

Sustainable agroforestry powered by hydroelectricity is one of many industries with the potential to create up to 500,000 jobs across the corridor.
水力発電による持続可能なアグロフォレストリーは、この地域全体で最大50万の雇用を創出する可能性を秘めた産業の一つです。 Image: Virunga National Park

「ヴィルンガ・キンシャサ・グリーン回廊」への拡大

世界経済フォーラム年次総会2024での対話と、その後の地域社会および市民社会との協議を基に、コンゴ民主共和国のコンゴ盆地全体にヴィルンガ・アライアンスのモデルを拡大するという大胆な構想が練られました。

2025年1月にコンゴ民主共和国議会で可決された新しい法律により、54万平方キロメートル(フランスの面積に相当)の地域が保護されることになりました。この地域には、10万8,000平方キロメートル(アイスランドの面積に相当)の原生林があります。この地域は、環境保護および修復をグリーン経済開発と統合した、地域社会とのパートナーシップを通じて保護される予定です。

このパートナーシップにより、世界最大の保護林地域が形成されます。これには、持続可能な農業生産を基盤とし、コンゴ川の水力が秘める可能性を活用した再生可能エネルギーによって動力を得るた経済ハブのネットワークが含まれます。このイニシアチブは、500,000の新規雇用を創出し、アフリカ最大の都市であるキンシャサにキブ州から毎年100万トンの食料を供給することを目的としています。支援者には、本日、4200万ユーロの追加助成金の拠出を発表した欧州連合(EU)をはじめ、グラミン銀行、シュミット・ファミリー財団、世界経済フォーラムの「1t.org」イニシアチブが含まれています。

The geographical footprint of the Kivu-Kinshasa Green Corridor.
キブ・キンシャサ・グリーン回廊の地理的範囲。 Image: Virunga National Park

本イニシアチブを通じて、コンゴ民主共和国政府は、官民連携によるグリーンな繁栄の推進機会を提供しています。地球上で最大の保護熱帯林保護区の創設を含む詳細については、年次総会で発表された「1t.org」によるヴィルンガ・キンシャサ・グリーン回廊の協定書をご覧ください。

コンゴ民主共和国政府は、再生可能エネルギーの生成、送電インフラ、持続可能な農業への投資、サステナブルな物流、高品質かつ信頼性の高い炭素クレジット、そして保全、修復、地域社会の参加に対する幅広いサポートについて、パートナーによる支援を呼びかけています。

同フォーラム取締役のギム・フエイ・ネオは次のように述べています。「世界経済フォーラムは、地球最後の“肺”の一つであるコンゴ民主共和国の熱帯雨林を保護し再生するという、大胆かつ野心的な取り組みを支援できることを嬉しく思います。私たちは、コンゴ民主共和国政府、地元企業および国際企業、市民社会が協力して、自然を再生し保護するサステナブルな経済を創出し、地域社会を強化し、長期的な平和と繁栄のための雇用を創出することを目的としたこの共同事業を支援するよう、すべてのパートナーに呼びかけます」。

保護区は、地元の同意と経済的・社会的インセンティブを原則として構築されています。コンゴ民主共和国の東部と西部の相互依存関係を構築し、法の支配を回復させ、長期的な平和の基礎を築くことを目的としています。また、この保護区は、コンゴ盆地の比類なき生物多様性と気候変動への取り組みへの貢献を保護・維持しながら、国内のコミュニティが30年にわたる戦争の影響を克服する可能性を提供します。

キブ・キンシャサ・グリーン回廊は、不屈のコンゴ精神から生まれました。これは、コンゴの人々が人類全体に捧げる、人間の創意工夫、協力、平和への献身の証です。国際的な支援を受けたこの画期的イニシアチブは、自然保護、修復、再生可能エネルギーによる経済発展をかつてない規模で組み合わせ、地域内外に社会的、経済的、環境的利益をもたらすでしょう。

The DRC is home to three critically endangered gorillas: western lowland, eastern lowland, and mountain gorillas.
コンゴ民主共和国には、絶滅の危機に瀕しているニシローランドゴリラ、イーストローランドゴリラ、マウンテンゴリラの3種のゴリラが生息しています。 Image: Brent Stirton
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