グリーン調達は、企業の気候変動対策の試金石

企業はスコープ3排出量の削減に向け、グリーン調達を主導して進める必要があります。 Image: Unsplash+ Community
- スコープ3排出量は企業全体の排出量の最大90%を占める可能性があり、調達活動は気候変動対策において決定的な影響力を持つ要素です。
- 調達部門にはサプライチェーンの脱炭素化が求められていますが、持続可能性とコストのトレードオフを解決することや、サプライヤーの排出量を測定することは容易ではありません。
- 世界経済フォーラムのレポートは、自社の具体的な状況に応じた気候変動への影響評価を行う、調達責任者向けの枠組みを提供します。
多くの企業の気候変動戦略は依然として、施設更改や電力契約の切り替え、車両の電動化といった運用マニュアルのような内容にとどまっています。こうした取り組みも重要ですが、多くの業界においては、これらは課題の大きさに比較して、その表面をわずかに削る程度の効果しかありません。より大きな可能性、そしてリスクは、上流工程に存在します。
多くのセクターにおいて、スコープ3排出量は企業全体の排出量の70~90%を占めており、購入した商品やサービスに組み込まれた排出量がその大部分を占めています。このため、調達は気候変動対策に真剣に取り組む組織にとって、最も影響力が大きく、かつまだ十分に活用されていない重要な手段の一つとなっています。
今、グリーン調達への圧力が高まる理由
企業のサステナビリティ戦略の中心に調達を据える動きが加速している背景には、3つの構造的な変化が重なっています。
まず、規制の方向性が、情報開示からアカウンタビリティへと移行している点です。要件は、報告義務を超えて、デューデリジェンスや製品の透明性、拡大生産者責任へと拡大しています。
英国では、再生材含有率が30%未満のプラスチック包装材について、すでに1トン単位の課税が導入されています。具体的な内容は地域によって異なりますが、方向性は明確です。企業は、単に目標を公表するだけでなく、バリューチェーン全体にわたる環境影響に対して管理を行っていることを実証することが求められるようになるでしょう。
一方、サプライチェーンの混乱はもはや散発的な事象ではなく、構造的な課題となっています。地政学的リスク、異常気象、資源制約などが、脆弱なネットワーク構造を露呈させているからです。スコープ3排出量の削減に必要な対策と同じ、サプライヤーの可視化強化、調達先の多様化、協力体制の強化などは、同時に混乱リスクへの露出を減らすことにもつながります。
コスト圧力も、この議論の形を変えつつあります。もはや問題は、より環境に優しい選択肢が経済的に実現可能かどうかではなく、組織が高リスク・高変動性の原材料に依存し続けることが経済的に許容できるかどうかという点にあります。調達部門は、このトレードオフが具体的に顕在化する場であり、今下される決定が今後数年間の競争優位性を決定付けることになるでしょう。
サプライヤーとの連携や調達意思決定プロセスに持続可能性を組み込むことにより、ビジネス価値を創出すると同時に、レジリエンスを強化することができます。
”気候目標と実行の間に存在するギャップ
こうした背景があるにも関わらず、多くの業界では依然としてギャップが存在しています。気候変動対策に関するコミットメントが先行している一方で、それを実現するためのオペレーションモデルの整備が追いついていないのです。
調達部門にはサプライチェーンの脱炭素化が求められていますが、その実現に必要な社内基盤を十分に備えていないケースが少なくありません。具体的には、持続可能性とコストが相反した際の明確な意思決定権限、財務・製品・持続可能性部門が連携してトレードオフを調整するガバナンス体制、さらにサプライヤーデータを実効性ある形で管理評価するための測定システムの3点です。
これらの要素が欠けていれば、取り組みは断片化したままとなり、ある場所にはサプライヤー向け行動規範が、別の場所には提案依頼書に関する疑問が、そしてあるカテゴリーではパイロットプロジェクトが孤立した状態で存在することになります。
その結果、組織は、自社のグリーン調達機能がどの程度成熟しているか、同業他社と比較してどうなのか、またどのような施策が最も効果的に進展をもたらすかを判断できない状況に陥る場合が多くあります。これは、経営陣レベルに共通した盲点です。
グリーン調達における真のリーダーシップ
このギャップを解消する組織には、一貫した特徴があります。それは、グリーン調達を単独のプログラムとして扱っていないことです。むしろ、インセンティブやガバナンス構造、サプライヤー連携といった、システム全体のレベルで統合的に組み込んでいます。
ある欧州の電力会社では、CEOを含む経営陣の長期インセンティブの一部をサプライヤーの持続可能性パフォーマンスと連動させることにより、持続可能性への取り組みを目標からアカウンタビリティへと転換させることに成功しました。
経営陣のインセンティブがサプライヤーの成果に結び付いている場合、調達決定は単なる個別カテゴリーマネージャーの裁量ではなく、戦略的な重みを持つようになります。
別の事例として、テクノロジー分野の多国籍企業のアプローチが参考になるでしょう。この企業では、情報が意思決定レベルの品質に達することで、調達が真の戦略的推進力となる仕組みを構築しています。
具体的には、持続可能性要件を契約に組み込むと同時に、社内炭素価格制度を導入し、部品レベルまで遡って炭素データを追跡可能にすることで、調達チームは価格面以外の要素でもサプライヤーを評価できるようになり、持続可能性を製品開発の重要なマイルストーンに直接組み込むことが可能になりました。
さらに、世界的な物流大手の事例は、調達を単なるコストセンターではなく、戦略的投資部門として捉えることで実現可能な成果を示しています。
同社では、上級管理職によるガバナンス体制のもと、主要な調達決定に削減コストの論理を適用。業績連動型の目標を組織全体に水平展開することにより、顧客のプレミアム支払い意欲にばらつきがある状況下でも、持続可能な航空燃料などの次世代ソリューションの導入を支援することに成功しています。
これらの事例は必ずしも模範例というわけではなく、各組織にとって最適な出発点は、その業界特性、サプライヤー基盤、規制リスク、現在の成熟度によって異なります。ただし、これらの事例には共通する重要な原則が示されています。グリーン調達は単なる単一のプログラムではなく、複数の要素からなるポートフォリオであるということです。
排出量削減は複数側面で同時に進展
よくある誤解として、組織は一つの成熟段階を完全に達成してから次の段階に進む必要があると考えられがちです。実際には、グリーン調達は複数の側面で同時に進展する傾向があり、リーダーシップの方向性の一致、ガバナンス体制の確立、業務プロセスへの統合、サプライヤーとの連携、データインフラの整備、能力構築などが並行して進化していくものです。
例えば、まず影響力の大きい特定カテゴリーにおけるサプライヤーの排出量データの改善から着手する、財務部門と連携して投資ガバナンス体制を再構築する、体系的なサプライヤー関係管理プログラムを導入するなどがあります。
最も重要なのは、どのステップを最初に実施するかではなく、その組織特有の体制においてどの取り組みが推進力を生み出せるか、そしてそれをどの程度迅速に拡大できるかという点です。
自社が順調に進んでいると考えていても、新たな着想を得ることができます。
”このプロセスを実際に経験した実務家たちは、内部の進捗状況に加えて外部の基準点を参照することの価値を強調しています。
「調達部門は持続可能性目標の達成において極めて重要な役割を担っています」と、デンマークの再生可能エネルギー大手、オーステッドの最高調達責任者であるヴィルジニー・ヴァン・ド・コット氏は述べています。「サプライヤーとの連携や調達意思決定プロセスに持続可能性を組み込むことにより、ビジネス価値を創出すると同時に、レジリエンスを強化することができます」。
この指摘は、すでに先進的と評される組織にも当てはまるものです。シーメンス・ガメサ社の最高調達責任者であるオリバー・ビスコフ氏は次のように述べています。「たとえ自社が順調に進んでいると考えていても、新たな着想を得ることができます」。
理念から実践への移行
グリーン調達の次の段階は、野心的な目標表明ではなく、実行面での明確さによって定義されるでしょう。
組織は以下の3つの実践的な問いに対し、信頼できる回答を用意する必要があります。自社の強みと弱みはどこにあるのか、同業他社と比較してどのような状況にあるのか、彼らから何を学べるのか、そして今後12~24カ月で最も大きな進展をもたらす具体的な行動は何か、ということです。
これらの問いに答えるためには、単なる報告や診断を超えたツールが必要です。組織の成熟度を評価し、比較対象となる組織とのベンチマーク評価を行い、優先度の高い行動計画を策定する機能が求められます。このような基礎データは、それ自体が目的ではありません。これは実現のための手段です。つまり、共通の出発点として、トレードオフを明確に可視化し、野心的な目標と具体的な成果を結び付ける役割を果たすのです。
今後10年間で持続可能性について最も洗練された物語を持つ組織が評価されるわけではなく、調達に関する意思決定などを通じて、自社の移行が真に実現可能であることを実証できる組織が評価される時代になるでしょう。
グリーンサプライチェーン構築の始め方
世界経済フォーラムのレポート『Green Procurement Playbook: The CPO’s Guide to Delivering Value for Business and Planet(グリーン調達プレイブック:CPOのためのビジネスと地球への価値提供ガイド)』では、調達戦略、ガバナンス、サプライヤー連携にグリーン調達を組み込むことが、企業のレジリエンス強化と効果的な気候変動対策の実現につながることが強調されています。
同レポートはまた、組織が定期的に進捗を評価し、成熟度をベンチマークし、優先的に取り組むべき分野を特定する必要性を指摘。これにより、情報に基づいた意思決定を行うための体系的な基盤が提供され、重要なトレードオフを適切に判断できるようになります。
シュナイダーエレクトリックの最高調達責任者、アード・フェルボーン氏は次のように述べています。「このプレイブックは、サプライヤーとの連携方法、能力構築の方法、そしてバリューチェーン全体で測定可能な削減を達成する方法を明確に示しています。これは、野心的な目標を実際の成果に転換するために最も効果的だと実証された、実践的かつ協調的なアプローチなのです」。
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