ミドルパワーが台頭する世界で、日本が果たす役割

世界経済フォーラム年次総会2026 Image: 世界経済フォーラム
Bing Chomprasob
Chief Representative Officer, Japan; Member of the Executive Committee, World Economic Forumミドルパワーの影響力の高まりが、世界秩序を再構築しています。この潮流を象徴したのが、ダボスで開催された2026年の世界経済フォーラム年次総会において、カナダのマーク・カーニー首相が、ルールに基づく体制のさらなる崩壊を防ぐため、志を同じくする国々の間での連携強化を呼びかけた場面でした。ウクライナから中東に至るまで、紛争が旧来の秩序に試練を与えており、経済のレジリエンス、エネルギー安全保障、サプライチェーンの安定、さらには外交においても、ミドルパワーの果たす役割が一層重要になっています。二極化の時代は終わりを告げ、課題に応じたより柔軟な協力体制へと移行しつつあるのです。
「ミドルパワー」とはGDPや軍事費だけで決まるものではなく、実質的な経済力、外交的影響力、そして主導力によって定義されます。グローバルな貿易、テクノロジー、金融のネットワークに深く組み込まれているミドルパワーは、安定を確保し、二極化した環境における分断を埋める柔軟性を保つことに、強い利害関係を有しています。
一方、グローバル経済の「結合組織」を維持する上で、ミドルパワー間の協力はますます重要になっています。サプライチェーン、重要鉱物、フロンティアイノベーション、AIガバナンス、エネルギー転換、デジタル貿易といった分野が、協力のための強固な基盤となるでしょう。
リーダーシップにおける日本の役割
現実に即した外交の歴史がある日本は、ミドルパワーの中で主導的な立場をとるための経験と信頼性を兼ね備えています。1970年代以来、日本は中核的な同盟関係を維持すると同時に、東アジア、東南アジア、アフリカ、ラテンアメリカへと経済・外交関係を多角化してきました。現在、日本は対外直接投資(FDI)の純流出額において世界第二位であり、2024年の世界全体の純投資フローの約11.9%を占める一方で、ASEAN、オセアニア、ラテンアメリカ向けの投資は大きく拡大しています。また同国は、より深いパートナーシップの構築にも積極的に取り組んでいます。レアアースや鉱業インフラに関するオーストラリアとの最近の合意は、こうした協力により、より広範なグローバル経済との結び付きが維持されると同時に、経済的レジリエンスが強化され得ることを示しています。
そのアプローチは、質、能力構築、そして長期的なパートナーシップを重視するものです。この結果、安全保障および貿易のパートナーとして、グローバル・サウスを含むミドルパワーから強い信頼と尊敬を集めています。東南アジアにおいて、日本は最も信頼でき、責任感のあるパートナーとして認識されることが多く、これは数十年にわたる持続的な経済協力、開発援助、そして敬意を込めた外交的関与を反映したものです。
先端技術を通じた協力の構築
先端技術に関する協力を模索するミドルパワーにとって、日本は主導する技術的能力と戦略的意図の両方を備えた数少ないパートナーの一つとして際立っています。同国は、再生医療、AI、ロボティクス、先端材料などの分野で確固たる存在感を維持しており、特に、iPS細胞の研究と商業規模での生産への移行など、再生医療における日本のリーダーシップは、科学分野での卓越性を実社会での応用に結び付ける力を証明するものです。こうした信頼を基盤として、AIの責任ある開発と導入を促進する「広島AIプロセス」といったイニシアチブを通じ、同国はグローバルガバナンスの形成にも貢献しています。
スペースエコノミーもまた、説得力のある好例です。同国は月面着陸を達成した5番目の国であり、軌道上の衛星数で世界第6位にランクされています。ミドルパワーの中で唯一、日本の宇宙セクターは、政府機関や大手企業から急速に成長するスタートアップまで、エコシステム全体を網羅しています。
同分野はまた、最先端技術をミドルパワー外交の手段として活用する日本の能力を示す、好例でもあります。国内のイノベーションにとどまらず、同国は宇宙能力を活用して国際的な官民連携を推進。衛星データの共有、共同ミッション、気候モニタリング、災害対応、海洋状況把握における能力構築を通じて、東南アジア、インド太平洋、およびアフリカの一部諸国を支援しています。
こうした取り組みは、パートナー国の技術力構築を支援すると同時に、透明性、レジリエンス、宇宙の平和的利用に関する共通の規範を強化するものであり、フロンティア技術がミドルパワー間のより深い協力の基盤となり得ることを示しています。
今後の道筋
日本は信頼できるミドルパワーのリーダーで、過去の成果だけでは不十分です。地政学的競争が激化する中、何もしないことの代償は高まり、将来の結果を形作る余地は狭まるため、自国の強みを活かさなければなりません。
これは、近隣諸国にとどまらず、アフリカ、中東、ラテンアメリカとの関係を深めることを意味します。既存の関係を発展させることにより、サプライチェーンの多様化を図り、レジリエンスを強化し、グローバルサウスによる最先端技術の導入と運営を支援することにつながります。
同時に、日本は国内にも目を向ける必要があります。つまり、海外における影響力の基盤となる、イノベーションと科学への投資が不可欠です。これには、研究を拡大し、現実的なソリューションを提供するための官民連携の強化や、アカデミアやスタートアップのエコシステムとの緊密な連携が求められます。こうした施策を通じて、地政学的な不確実性の中でも、引き続き先見性を備えた姿勢を堅持することができるでしょう。
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2026年1月29日







