経済成長

GDPの次を考える―世界の変化が再構築する、経済的進歩の測定方法

グラフ画面を指さす女性の手。GDPに代わる、あるいはそれを補完する、より有用な経済的進歩の測定方法は存在するのでしょうか。

GDPに代わる、あるいはそれを補完する、より有用な経済的進歩の測定方法は存在するのでしょうか。 Image: Unsplash/DouglasLopez

Richard Samans
Special Advisor, United Nations Economist Network
本稿は、以下センター (部門)の一部です。 ニューエコノミーとソサエティ
  • 世界各国の経済的進歩を示す指標には通常、国内総生産(GDP)の成長率が用いられています。
  • ただし、多くの専門家は、経済的に正確かつ社会的に意義のある、より優れた進歩の尺度が必要だと主張しています。
  • 現在の経済におけるグローバルな変容と、今後予定されている国連での交渉が、GDPの枠を超えた世界の前進を支えていく可能性があります。

生活費の高騰、不平等、AIに関連する雇用の混乱、そして気候変動に対する一般市民の懸念が高まる中、国内総生産(GDP)が国家の経済的進歩の最重要指標としての座から退く時が、ついに来た可能性があります。

金融市場や経済学者たちは、堅調なGDPや生産性成長率の発表に一喜一憂しがちですが、一般市民を納得させるには、もっと具体的な指標が必要です。人々は、雇用状況や将来の見通し、賃金の上昇、生活必需品の価格、あるいは経済的、社会的、環境的な安全保障といった観点から、自身の世帯生活水準の向上によって自国経済の成功を判断します。

もちろん、GDPの伸びは長期的には生活水準の向上と高い相関がありますが、両者の関係は必ずしも完全に一致するわけではありません。また、国が豊かになるにつれて、その相関は弱まる傾向にあります。さらに、経済圏内でも生活水準には大きなばらつきが生じることがあり、大きな変化やショックが起きた場合、あるいは政治権力や経済的レント(超過利潤)が高度に集中している場合には特に顕著です。

確かに低所得国や下位中所得国における貧困削減には、成長が依然として重要ですが、現在、私たちは変革、移行、集中が激化する時代に生きています。このため、GDP成長率は、物質的な進歩を測る指標として前世紀よりもさらに不十分なものになっているのです。

経済的進歩を測定する、より優れた方法

経済的に正確かつ社会的に意義のある、より良い進歩の尺度をいかにして作り出すかという課題は、古くからあるものです。一方、この課題に関する技術的な取り組みや政治的な議論は、大きな発展を遂げようとしています。

2008年の世界金融危機を受けて、経済パフォーマンスと社会的進歩の測定方法に関する画期的なスティグリッツ・セン・フィトゥシ報告書が発表されてから、15年以上が経過しました。現在、国連のハイレベル専門家グループ(UN High-Level Expert Group on Beyond GDP)による新たな一連の提言が発表されようとしています。

これにより、国連内での政府間交渉プロセスが開始され、最終的にはこの分野を、断片的な「優良事例」から、国際的に比較可能な「慣行」へと、移行させることを目指します。そしてこれには、GDPに代わる主要指標の確立が含まれる可能性があります。より可能性が高いのは、GDPを組み込む、または併せて利用することでしょう。

こうした交渉が直面する最も困難な課題の一つは、関連するトピックやデータの多様性です。

私が筆頭著者を務めた、国連所属の経済学者グループによる最近発表された論文では、各国政府は進歩を測定する3つの主要な側面、すなわち生産的アウトプット、物質的な生活水準、そしてその他の非物質的または主観的なウェルビーイング(幸福)の指標を、明確に区分すべきであると提言しています。各国政府はこれら3つすべてについて、国際的に標準化された方法で報告を行うべきであり、その際、最初の2つを経済的進歩の新たな主要指標である「国民総持続可能な開発(Gross National Sustainable Development; GNSD)」に包含すべきです。

同指標は、生産的アウトプットの標準的な指標であるGDPの改良版と、新たな多次元生活水準指数(MLSI)を統合したものです。これにより、望遠鏡の反対側、すなわち人々の物質的な生活体験や世帯の中位生活水準という観点から、経済的進歩に関する国際的に標準化された視点が提供されることになります。

同論文では、これら2つの新たな概念について詳細に解説しています。これは、長年にわたる「Beyond GDP」プロジェクトが、政策立案者に対して最大限の行動変容をもたらすと同時に、普遍的な経済的、社会的権利の「漸進的実現」に関する各国の透明性を高めるためにはどうすべきかについて、根本的な考察(ある意味では原点回帰)を行うことを目的としています。

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AI、気候変動、国際貿易など

このような、より包括的かつバランスの取れた経済的進歩の主要指標は、21世紀の各国が直面する最大の経済的課題の一部に関する、より良い政策論議と意思決定を可能にするでしょう。例えば、AIは生産性や国民所得を増加させる一方で、不平等を悪化させる可能性があります。

さらに、気候変動、人口の高齢化、国際貿易体制の分断化は、今後数年間、多くの国において経済成長の規模を制約する要因となるでしょう。したがって、こうした国の政府にとっては成長の社会的質、すなわちMLSI指数が追跡する生活水準の人間的な成果や側面を向上させる政策を優先することが、これまで以上に重要になります。

経済学においても、人間の営みに関する他の多くの分野と同様に、優先的に測定されるものは必然的に優先的に管理される傾向があります。今こそ、人々が真に重視する経済的進歩の側面を、国際的に一貫した基準で測定する時なのです。

報道の焦点がGNSDに当てられたなら、政策優先順位の再調整が可能となり、経済の包摂性、持続可能性、レジリエンスの向上という頻繁に言及される目標に対する、公的なアカウンタビリティの改善にも寄与するでしょう。

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