金融と通貨システム

女性の金融リテラシーを高め、豊かな人生100年時代を

Boosting women's financial literacy is an economic must for our ageing society.

女性の金融リテラシーを高めることは、高齢化社会における経済の必須事項です。 Image: Pexels/Andrea Piacquadio

Morgan Camp
Coordinator, Financial and Monetary Systems, World Economic Forum
本稿は、以下センター (部門)の一部です。 金融と通貨システム
  • 平均寿命が伸び続ける中、生涯を通じた資産形成額の男女格差が女性の老後を経済的に不安定にしています。
  • 世界経済フォーラムの白書「Longevity Economy Principles(長寿経済の原則)」は、効果的な金融エコシステムが個人の意思決定における自由をいかに促進するかを示しており、この意思決定能力の鍵となるのが女性の金融リテラシーです。
  • 金融教育へのアクセス向上に向けた政策や、女性向けの金融サービスおよび経済的機会に対する産業界の投資は、男女間の富の格差など構造的な不平等を解消することができます。

2100年、私は100歳になります。おそらくまだ生きているでしょう。米国の女性の平均退職年齢である62歳で定年退職した場合、その後38年間続く「第二の人生」の生活資金をまかなうことになります。これは、フルタイムで定年まで働く年数よりわずか2年短い期間。つまり、まったく別の新たな人生が与えられるようなものです。

政府の政策や職場の支援があれば、実際には62歳を過ぎても働き続ける人が多いでしょう。一方で、72歳、82歳、92歳まで働いたとしても、女性が経済的安定を確保することは簡単ではありません。

世界的に、女性は男性よりも平均収入が23%低く生涯を通じた資産形成額も39万6,000ドル下がります。さらに、介護など男女間で負担が不均衡な無償労働により、女性がより多く仕事を離れる傾向にあります。2050年までに65歳以上の年齢層が総人口の約4分の1に達すると同時に労働人口が減少する米国などの国において、こうした傾向は今後も拡大する見込みです。

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女性の金融リテラシー

余生を楽しむという考えは、心が躍るものであるはずです。しかし、生活を成り立たせるための手段や教育がなければ、余生を有意義に過ごすことはできません。女性の金融リテラシーを高めることは、より長い人生を楽しむために必要な経済的自由を得るための第一歩なのです。

世界経済フォーラムの最新の白書「Longevity Economy Principles(長寿経済の原則)」は、効果的で包括的な金融エコシステムが、個人の自由な意思決定を促進し、それを支援する仕組みを提供することを実証しています。この意思決定能力の鍵となるのが、女性の金融リテラシーです。

米国では、4月は国民の金融リテラシー月間。女性が金融リテラシーに関して知っておくべき3つのポイントは、次のとおりです。

1. 金融リテラシーから始まる、100年人生の再構築の自由

金融リテラシーがある人は世界人口のわずか33%とされており、女性の割合はほぼ全ての国や年齢層で、男性よりも著しく低いとされています。このリテラシーの欠如は、他の要因と共に、世界中の人々が、引退後の貯金を最大20年超えて生き延びることになり、その影響を最も受けるのは女性です。

女性は、引退後の人生がより長い一方で、生涯で保有する富は男性より少ないのが一般的です。介護など無償労働のためにキャリアを中断せざるを得ないケースが多く、キャリアアップの機会も少ないことがその一因でしょう。金融リテラシーの低い女性は、週に平均16時間をお金に関する問題に費やし、仕事に就いていたとしても、基本的なニーズを満たすことに苦労する可能性が5倍高いとされています。

世界の100歳以上の人口は、2054年までに400万人に達すると予測されており、その間、米国では100歳を超える人口が4倍に増える見込みです。確実な寿命の延伸とともに「人生100年時代」を迎える中、目的を持って生きるためには生活を再構築する自由を手にする必要があります。自由は、金融リテラシーを向上させることから始まります。これにより、100年にわたる人生に投資するための金融サービスやツールにアクセスできるようになります。同様に、教育へのアクセスも女性をエンパワーする極めて重要な要素となります。

2. 変化を生み出す責任は、社会全体で背負う

女性に認められている法的権利は、平均で男性の77%にすぎません。また、男性の収入1ドルに対して女性の収入は77セント。政策立案者や金融サービス業界は、こうした現実に変化を起こすために女性の金融リテラシーの向上に優先的に取り組む必要があります。

65歳以上の女性の退職所得は男性より26%低く、働く女性の半数以上(開発途上国では最大90%)が、年金制度が整備されていない不安定なインフォーマル経済での労働機会しか得ることができていません。

世代を超えて深刻化するこうした機会の不平等は、女性の経済状況を不安定にすると同時に長寿の恩恵を阻害しています。根深い構造的な不平等に対処するには、金融教育やサービスへのアクセスを促進する政策および女性の経済的機会への産業界による投資が必要です。

3. 女性の金融リテラシー向上は、すべての人の益に

女性の労働人口が増加しより多くの富が女性に分配されるようになってきたことは、明るい兆しです。2030年までに女性が米国の富の66%を握るようになるとも見込まれており、これは2020年の予測の2倍になります。

金融教育とサービスへのアクセス向上は、女性による富の移転の力を解き放つことができるでしょう。そのためには、女性のニーズに合う金融商品を提供し、男女格差の解消を促進できるよう、金融サービスのあり方を見直す必要があります。

男女間の雇用格差を埋めることができれば、一人当たりのGDPを20%引き上げることができます。つまり、政策立案者や金融サービス業界が女性の金融リテラシーの向上を優先することで、100年続く人生を通じてその社会的利益がもたらされるのです。

100歳まで生きる

冒頭、私は2100年に100歳になると述べました。満ち足りた100歳となるかは、金融教育とサービスへのアクセスにかかっているといっても過言ではないでしょう。

官民両セクターが女性の金融リテラシー向上への取り組みを優先させることで、余生は可能かつ意義深いものにすることができます。その上で、私たちは経済的自由を獲得し、今生きる21世紀をより持続可能なものにすることができるのです。あなたの100年人生は、どのような姿をしていますか。

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