金融と通貨システム

世界貿易の分断を乗り切るための、ハイブリッドモデルとは

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世界貿易のモデルは変化しつつあります。 Image: REUTERS/Carlos Barria

Gilles Moëc
AXA Group Chief Economist, AXA
  • 世界経済は、統一的な「グローバリゼーション」モデルから、複数の国が政治、経済、安全保障上の利害に沿って連携する「リージョナルクラブ」モデルへと移行しています。
  • グローバル金融システムは、米国と中国の経済的相互依存関係の緩和を含む、投資パターンの変化によって再構築されつつあります。
  • 伝統的なグローバリゼーションと地域的同盟のハイブリッドモデルにより、完全なる分断を最小限に抑えることができるでしょう。

世界経済は、1990年代のグローバリゼーションのような単一の連結システムから、競合する複数のグループへと分断されつつあります。一方、これが必ずしも国境を越えた貿易の縮小を意味するわけではありません。

グローバル企業は、生産を消費国へ回帰させるのではなく、価値観や安全保障上の懸念が共通する国々のグループ、いわゆる「クラブ」を中心にサプライチェーンを再編成しています。

こうしたクラブの形成と一部のグローバル貿易の穏やかな継続に加え、国際通貨基金(IMF)は「コネクター国」という概念を提唱しました。コネクター国とは、異なるクラブ間での貿易を維持する中立的な生産拠点を持つ国を指し、メキシコやベトナムがそのような役割を果たしてきました。

この再編成は、かつてのグローバリゼーションを完全に代替するものであるとは言えないものの、貿易の流れを維持することは可能です。クラブに低賃金国と高消費国の両方が含まれる限り、経済の分断によるインフレや効率低下といった悪影響を緩和することができるのです。

経済的相互依存の抑制

「クラブ化」は、国際的な金融の流れにおいても、従来のグローバリゼーションに取って代わりつつあります。米国が完全に開かれたグローバルシステムではなく、特定の国々によるグループを通じて財政赤字に対する資金調達していることが、その一例です。

2000年代初頭には、1944年に44カ国が合意した通貨制度を発展させ、為替レートの調整を行う「ブレトンウッズ体制2.0」構想が注目を集めました。

中国は当時、経常収支の黒字を活用して米国債を購入していたため、この新たな枠組みは、中国と米国の金融的な結びつきを強化すると考えられていました。世界最大である二つの経済大国の金融的な連携は、経済の結びつきを深め、地政学的な緊張の高まりを抑制するという前提に基づいたものだったのです。

また、製造業が中国へ流出することで生じた米国での雇用喪失を、低金利政策によって一部相殺する効果もありました。

一方、近年では、中国が米国資産への投資を縮小する中、米国と政治的・軍事的に連携する国々の投資家が米国資産への投資を増やしています。

アメリカの保護政策

米国の財政赤字の資金調達は、再び米国の友好国によって支えられるようになりました。一方、米国債市場から撤退を進める中国は、新興国、特にアフリカや中南米への資本流入を増やし、開発途上国間の協力を指す「南南協力」に基づく金融関係を強化しました。

しかし、このように劣化した形のグローバリゼーションですら、現在脅威にさらされています。コネクター国は、地政学的な競争相手が市場アクセスを維持するための「トロイの木馬」と見なされやすくなっています。第一次トランプ政権下で交渉された米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)では、原産地規則の厳格化が重要な成果の一つとなりました。

原産地規則は、特定の貿易において優遇措置を受ける製品の製造地域を定めるものです。この強化により、中国が生産拠点をメキシコへ移すだけで米国市場への優遇アクセスを受けることができるという抜け穴がふさがれました。

一方、米国が引き続き重商主義的な政策を取る中、隣国との貿易赤字の拡大、つまり輸出よりも輸入が上回る状況が進めば、米国はカナダやメキシコに対し、関税を引き上げる可能性があります。

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南南間の緊張

同様に、米国と欧州連合(EU)との間で自由貿易協定が締結される可能性はこれまで現実的とは考えられていませんでしたが、両地域は強固な政治的・軍事的な結びつきにより統一されています。そのため、比較的低水準かつ予測可能な二国間関税のもとで安定した貿易関係が維持されてきました。しかし、今後この状況が変化する可能性があります。

グローバル・サウスもまた、一枚岩ではありません。 BRICS 諸国が協力関係を制度化しようとする中、従来からの地政学的・経済的な対立がその障害となっています。

中国とインドの緊張関係が、その一例です。地政学的な課題だけでなく、インドは、自らを中国に代わる存在として世界的な地位を確立する誘惑に駆られています。さらに、成熟した経済圏と同様、インドネシアのように、一部の新興国も自国産業を保護するために中国製品への関税を引き上げる傾向を示しています。

金融分野においても、グローバル・ノース間の規制の乖離がさらなる統合を妨げる要因となり、特に、持続可能な金融の分野では、大西洋を挟んだ米欧間の対立が深まっています。その例えとして、欧州の一部の金融機関は、EUの規制に基づき投資にサステナビリティ基準を適用しているため、米国の特定の州の年金基金とは取引ができない状況にあります。

グローバル・サウスにおいても、アンゴラにおいて中国が一部保有する債務の再編が進められるなど、支払い問題が顕在化して以来、中国はアフリカへの投資を縮小しつつあります。

ハイブリッド型のグローバリゼーション

つまり、グローバル企業が供給網や流通網を構築する際、数年前までのように「クラブ」に安定性を期待することが難しくなっています。不確実性を伴う完全な分断は、今や現実的なリスクであり、世界的な物価水準や経済効率に悪影響を及ぼすでしょう。

一方、ハイブリッド型のグローバリゼーションも考えられます。米国を中心とするクラブと中国を中心とするクラブという二つの不安定な経済圏だけでなく、従来の多国間におけるグローバリゼーションの枠組みに基づく、緩やかな同盟が存続する可能性があります。

その兆候は、EUと南米の貿易圏「 メルコスール」との新たな合意や、EU離脱後の英国とEUとの関係改善に見られます。この緩やかな同盟と二つのクラブは、相互に排他的なものではありません。

例えば、カナダとメキシコは、米国主導のクラブに属しながらも、EUやメルコスールとの経済関係を強化することができます。

最終的に、グローバル企業には高い敏捷性が求められるものの、完全な分断よりもハイブリッド型のグローバリゼーションの方が受け入れやすく、現実的な選択肢となる可能性が高いでしょう。

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