AIがエントリーレベルの仕事を変革する中、必要な職務の再設計とは

新たな報告書が、AI時代におけるエントリーレベルの労働者の職業キャリアパス構築に向けた枠組みを提示しています。 Image: Unsplash/campaign creators
- AIの台頭により、エントリーレベルのキャリアパスに大きなプレッシャーがかかっており、企業がこの変化にどう対応するかが重大な課題となっています。
- 世界経済フォーラムの新たな報告書『Artificial Intelligence and the Future of Entry-Level Work(AIとエントリーレベル職の未来)』では、エントリーレベルの労働者がキャリアパスを構築するための枠組みが示されています。
- ランスタッドは、仕事からの「置き換え」を恐れるのではなく、仕事における「人間性」の重要性を強調しています。
AIは労働環境を根本から変革しつつあり、すでに企業の人材採用、育成、昇進のあり方に大きな影響を及ぼしています。この変化が最も顕著に現れているのが、まさにエントリーレベルの職種です。
新卒や未経験者などが最初に行うエントリーレベルの職務は、長年にわたり労働力参加とスキル形成において重要な役割を果たしてきました。これらは雇用と経済的機会への体系的な道筋を提供し、人々が実践的な経験を積みスキルを身に付けることを可能にします。同時に、企業が将来の人材を育成し、その能力を発展させる上でも重要な役割を果たしています。
現在、このモデルは岐路に立たされています。問われているのは、技術の進歩が機会を狭めるのではなく、機会を広げるためにどうすればよいか。そして、次世代の人々が成功に必要な経験、判断力、スキルを従来同様に身に付けられるようにするには、どうすればよいかです。
この課題の範囲は、個人のキャリア形成に留まりません。労働環境の基盤が変化する中で、組織は仕事の設計方法、業務の組織化方法、人材開発のあり方を根本的に見直し、長期的な生産性向上、競争力維持、成長を実現する必要があります。
世界経済フォーラムがPwCの協力を得て作成した新たな報告書『Artificial Intelligence and the Future of Entry-Level Work(AIとエントリーレベル職の未来)』では、リーダーたちがこの新たな環境下でどのように初期キャリアの道筋を守り、再構築すべきかを考察しています。
また、職務の再設計が実際の現場でどのように実現されているかを探るため、世界最大級の人材サービス企業であるランスタッドの見解と実践例が示されています。
レジリエンスの高い人材基盤構築における職務設計の重要性
同報告書では、人材管理の専門家、雇用主、有識者から得た知見を基に分析を実施。特に、職務へのアクセス、職務設計、人材パイプライン、教育システムとの連携という、4つの側面に焦点を当てたフレームワークを提示しています。これらの要素を通じて、ステークホルダーは負担が生じている箇所を特定し、どのような意図的な対策が必要かを見極め、レジリエンスの高い労働市場への道筋を構築するために優先すべき目標を明確にすることができます。
また、職務設計が戦略的な重要要素であることが強調されています。従来の職務ベースの人材構造から脱却し、より能力に基づいた人材開発モデルへと移行する必要性を指摘。このモデルでは、多様な経験を通じてスキルが形成され、より柔軟かつ非直線的なキャリアパスが可能になります。
さらに、雇用主と教育関係者が連携し、スキル要件の変化が現行の教育システムの適応速度を上回る中で、就職準備の指標を強化し、新たな就業ルートを創出する方法についても考察しています。
AIの導入が進むにつれ、組織内外の人材エコシステム全体で変革の必要性が高まっています。一方、AIへの投資が活発化している中で、職務設計の再構築に関する確立された方法論はまだ存在しません。
組織がこの変革の旅路に踏み出す際には、AIの影響が技術そのものだけで決まるわけではないという点を念頭に置くことが重要です。その影響は、組織、教育者、政策立案者が今日下す意図的な選択によって形作られることになるでしょう。

人間とAIのための職場を再設計する方法
同フォーラムが提唱する職務再設計の枠組みは、ランスタッドが現在直面している大変革期を端的に表現しています。これは、私たちが「労働力の大適応」と呼ぶ重要な局面であり、急速な技術革新に対応するため、企業や人材が共に適応を迫られている決定的な転換期です。
同社では、この課題に対して明確な方針を打ち出しています。それは、雇用喪失への恐れから脱却し、AIがもたらす成長の現実へと焦点を移すことです。ただし、これには単なる楽観主義以上のものが求められます。真に必要なのは、根本的な再設計です。
私たちの基本原則はシンプルです。「人間が常に主導権を握る」ということです。AIが定型業務の多くを担うようになっても、私たちはその背後にいる人材の育成にさらに力を注いでいます。
具体的には、エントリーレベルの職務を、判断能力、監督業務、人間同士のつながりといった、AIでは代替できない能力を重視する役割へと進化させることを意味します。また、従業員が日々の業務にAIを効果的に統合することができるよう、必要なツールとスキルを提供すると同時に、その導入を定着させるための組織文化とインフラ整備も重視します。
この変革は多くの場合、キャリアの初期段階で最も顕著に現れますが、それだけに限定されるものではありません。現実には、AIはあらゆるレベルの仕事のあり方を変えつつありますだからこそ、私たちのアプローチは、全従業員を対象に能力開発を推進し、キャリアのどの段階にある人でも、AI活用環境に適応し、成長し、リーダーシップを発揮できるようにすることに重点を置いています。
また、同社ではすべての従業員を対象としたAIスキル習得プログラムを導入し、AIリテラシーの強固な基盤を構築しています。受講が義務付けられたこのプログラムにより、同社の従業員はAIを効果的に活用することができるようになり、生産性向上におけるAIの可能性を理解すると同時に、適切なガイドラインを遵守できるようになります。
ただし、スキルだけでは十分ではありません。AIを大規模に導入するには、従業員が実験を行い、出力結果を検証し、失敗から学ぶことが安心してできる環境が必要です。そのため、私たちは組織のあらゆるレベルで信頼を築き、レジリエンスを育み、パフォーマンスを向上させるための取り組みに投資しています。人々がAIを活用する世界において、従業員は常に最高のパフォーマンスを発揮できなければなりません。
この変革を大規模に実現するため、私たちは仕事そのものの設計方法を見直しています。明確かつ透明性の高い職務体系を構築することで、現在必要なスキルだけでなく、将来必要となるスキルも明確に定義していきます。これにより、従業員に求められる役割がはっきりと理解できるようになり、組織全体でより柔軟かつスキルベースのキャリアパスが開かれることになります。
AIがもたらす変革は、単なる新しいツールの導入ではありません。それは、人々が判断力、創造性、そして人間同士のつながりを重視しながら、それぞれの能力を最大限に発揮できるよう、仕事そのものを再設計することを意味します。
これこそが現在進行中の真の変革なのです。
単にAIを最も早く導入した組織ではなく、人とテクノロジーが共に働く方法を最も戦略的に再設計した組織こそが、成功を収めることになるでしょう。
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