日本における働き方の変革を読み解く

日本では、働き方の見直しを迫られています。 Image: Beth Macdonald on Unsplash
- 日本では、終身雇用や年功序列を前提とした従来の雇用・キャリアモデルが、今日の社会・経済の実態と次第に乖離しつつあり、仕事のあり方そのものの再設計が求められています。
- こうした変化を受け、サバティカル型のリスキリング、週休4日制、ハイブリッドワークといった新たな働き方が推進されています。
- 世界経済が大きな転換期を迎える中、世界経済フォーラム年次総会2026には世界各国のリーダーが集い、グローバルな労働力のレジリエンスをいかに確保するかを議論します。
新たなテクノロジーの進展や人々の価値観の変化を背景に、仕事のあり方は今、世界的に再定義されつつあります。日本においても、終身雇用や年功序列制度を前提とした従来の雇用モデルが社会や経済環境の変化に十分対応しきれなくなり、働き方のアップデートが進み始めています。
働き方の変化を促す大きな要因の一つが、スキルアップやリスキリングの重要性の高まりです。Workdayの調査によると、日本の管理職の76%が、スキルベースのアプローチは、生産性、イノベーション、組織の俊敏性の向上につながり、経済成長を促すと考え、日本企業の47%がスキルベースの人財モデルへの移行をすでに開始しています。
こうした傾向は、個人の意識にも現れています。リクルートが2025年に行った意識調査によると、新入社員が仕事で最も重視する要素として、「成長」(35.1%)が挙げられました。一方で、「自分が成長できるか」に不安を感じる人も3割を超えています。別の調査では、「従業員のスキル習得に対する取り組み」が「特になし」と回答した企業が22.7%に上り、スキル取得支援が十分とは言えない現状が浮き彫りになっています。
同時に、日本における「仕事の意味」も変化しています。内閣府による「国民生活に関する世論調査」によると、働く目的として「お金を得るため」と答えた人の割合が2001年の約50%から、2024年には約63%に上昇しました。一方、「生きがいを見つけるため」と回答した人は減少しており、仕事以外の領域に生きがいを見出す人が増えていることが示されています。理想とする仕事像では、「収入が安定している仕事」と「自分にとって楽しい仕事」に次いで「私生活とバランスがとれる仕事」が重視されている点も、この傾向を裏づけています。
こうした背景を受け、日本政府や自治体、企業は、時代に即した働き方の実現に向けた制度設計を進めています。
サバティカル制度の整備によるリスキリング支援
日本政府は2025年10月から、働いている人が一定期間仕事を離れ、新たなスキル習得に専念するための経済的支援制度を開始しました。企業による有給のリスキリング休暇を利用できない雇用者を対象に、休職期間中に賃金の5割から8割を「教育訓練休暇給付金」として支給する仕組みです。その原資には雇用保険が用いられ、給付日数は雇用保険の加入期間に応じて90日から150日とされています。
この制度は、企業と個人双方の負担を軽減し、リスキリングを促進することを目的としています。さらに、「現在の仕事を中断して他に目を向け、得た経験は、その後の仕事はもちろん、長い人生の糧となるのではないか。また、社会に還元されれば、我が国の成長につながる可能性がある」として、スキル取得以外の領域における成果にも期待が寄せられています。
ライフ・ワーク・バランスを支える、週休3日制度
柔軟な働き方を後押しする取り組みとして、週休3日制の導入も広がっています。茨城、千葉、兵庫、奈良、大阪などに続き、2025年4月からは、東京都でも同制度が開始されました。東京都では、4週間で155時間の所定労働時間を満たせば、週1日の追加休暇を取得でき、労働時間が維持されるため給与への影響もありません。
人手不足が深刻化する中、こうした柔軟な働き方を可能にする制度は、多様な人材の確保や定着につながる施策として注目されています。ファーストリテイリングやヤフー、佐川急便など、複数の企業でも導入済みであり、みずほフィナンシャルグループのように、週休4日を選択できる企業もあります。東京都のような自治体が率先して取り入れることにより、より多くの企業に同様の制度が広がることが期待されます。
ハイブリッドワークによる柔軟な働き方の定着
リモートワークは、新型コロナウイルスによるパンデミックを契機に急速に普及しました。現在では完全リモートからハイブリッド型へと移行する動きが見られるものの、柔軟な働き方として一定度定着しています。2025年の調査では、「リモートワークをまったく実施していない/実施予定はない」日本企業は22.6%にとどまり、「全社員の50~80%程度がリモートワークを実施している」企業(32.3%)が最多となりました。また、2025年に実施された別の調査によると、労働者の82.2%がテレワークを「続けたい」と回答しており、柔軟な働き方に対する支持は依然として高いことが示されています。
働き方のアップデートが導く、日本の未来
時代の変化とともに、仕事に求められるスキルや働き方は大きく変わりつつあります。世界経済フォーラムの「仕事の未来レポート2025」は、2025年からの5年間で既存のスキルの39%が変化もしくは時代にそぐわなくなると予測しており、リスキリングの重要性は今後さらに高まるでしょう。同時に、ライフ・ワーク・バランスや柔軟な働き方への期待も一層高まっています。
日本における働き方の変化に関し、世界経済フォーラムのニューエコノミー・ソサエティ部門インサイト・リードのサム・グレーリングは、以下のように評しています。「事業モデルが変化する中、日本の雇用主は、既存の人材を活かしながら変革を進める姿勢を強めています。当フォーラムの分析によると、日本の企業は人口動態の変化を強く意識しており、人員削減より従業員のスキルアップや職務間の円滑な移行を通じ、労働力を再配置することを優先する傾向が見られます」。
サバティカル制度支援や、週休3日制度、ハイブリッドワーク普及は、こうした変化への具体的な対応策です。これらの取り組みが広がることで、個人のウェルビーイングと生産性が高まり、よりレジリエンスのある経済と社会の構築につながることが期待されます。
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