EUとインドが締結を目指すFTAについて、知っておくべきこと

Uはインドにとって最大の貿易相手であり、インドの総貿易額の12.2%を占めています。 Image: REUTERS/Altaf Hussain
- インドとEUは、FTAを年内に締結することを目指しています。
- 長年にわたる協議は難航しており、農業、医薬品、自動車などの分野が障害となっています。
- 「EUとインドは、今世紀を象徴するパートナーシップの一つとなる可能性を秘めている」と、欧州委員会委員長のウァズラ・フォン・デア・ライエン氏は述べています。
インドとEUは、年内に自由貿易協定(FTA)を締結することを目指しています。
欧州委員会委員長のウァズラ・フォン・デア・ライエン氏は、このFTAについて「この種の協定としては世界最大規模」になると述べています。さらに、この協定の締結は、数年にわたる交渉の終わりを意味します。
インドとEUの双方が、世界中で進行する分断、保護主義、貿易関税の影響を制限しようとする中、最終的な調整が行われています。この協定は、地政学的緊張の高まりによる経済的リスクを緩和するのに役立つでしょう。
2月末にインドを訪問した際、フォン・デル・ライエン委員長は「勢力圏と孤立主義の世界では、両者ともに損をすることになります。そして、両者ともに、協力と協調の世界から利益を得ることができるのです」と演説しました。
フォン・デル・ライエン委員長は、インドのナレンドラ・モディ首相とニューデリーで会談し、協定について議論しました。モディ首相は、「信頼と民主的価値観の共有」を核に、「インドとEUのパートナーシップを高め、加速させる」ための決定が下されたと述べています。
インドとEUの貿易はどのようなものか
EUはインドの最大の貿易相手です。2023年の物品貿易は1,240億ユーロであり、インドの総貿易の12.2%を占めています。EUとインド間のサービス貿易は2023年に約600億ユーロに達し、2020年のほぼ倍の水準となりました。そのうち3分の1はデジタルサービスでした。
米国と中国はそれぞれ、インドの総貿易の10.8%と10.5%を占めています。一方、インドはEUの9番目に大きな貿易相手国であり、EUの貿易の2.2%を占めています。
インドとEU間の貿易は過去10年間で約90%増加しましたが、FTAを巡る交渉は、特に農業、自動車、製薬分野で両国間の大きな相違により、長年停滞してきました。
協定に含まれる内容とは
フォン・デア・ライエン委員長は、インドでの演説で、貿易協定の恩恵を受ける主要分野として半導体、クリーンテクノロジー、人工知能を挙げました。
一方、合意に達するには、車やアルコール、医薬品、繊維に至るまで、両者が大きな譲歩を求めているため、複雑な交渉となるでしょう。
EUはインドに対し、車、ワイン、ウイスキーに対する100%以上の関税の引き下げを要求しています。一方、インドは、医薬品、繊維、アパレルなどの主要輸出品に対する市場アクセスの拡大と関税の引き下げを望んでいます。
インドはまた、鉄鋼、アルミニウム、セメントに対する国境炭素税など、環境に関連するEUのいくつかの規則に異議を唱えています。
さらに、インドは自国のITセクターを支援するため、熟練専門職が一時的な労働者としてEUにアクセスしやすくすることを求めています。また、EUからの農産物が大規模な補助金を受けていることにより、自国の農家を苦しめることを懸念しています。
フォン・デア・ライエン委員長は演説で、「EUとインドは、この世紀を象徴するパートナーシップの一つとなる可能性を秘めています。だからこそ、これが今後数年、数十年にわたり、欧州における外交政策の礎となるのです」と述べています。
2008年の貿易影響評価は、FTAが、短期的にも長期的にも「EUとインドの両方にとって、実質的な所得効果をもたらす」と予測。短期的には双方において実質的な所得増加が30億ユーロから44億ユーロになると見込まれています。