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グリーンで競争力のあるEUに向けて、企業が優先すべき4つのこと

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欧州グリーンディールのためのCEOアクショングループは、ネット・ゼロ変革の最前線にいる50社以上のグローバル企業のコミュニティです。 Image: Getty Images/iStockphoto

Ester Baiget
President and Chief Executive Officer, Novonesis
Feike Sybesma
Chairman of the Supervisory Board, Royal Philips
Mirek Dušek
Managing Director, World Economic Forum
  • 欧州の政治情勢が変化する中、企業は持続可能なビジネス慣行の推進に焦点を絞る必要があります。
  • 欧州グリーンディールのためのCEOアクショングループ(CEO Action Group for the European Green Deal)は、明確な中間目標を掲げ、クリーン・イノベーションを推進することで、欧州のネット・ゼロ目標を支持しています。
  • 来るべきClean Industrial Deal(クリーン・インダストリアル・ディール)は、グリーン政策と産業政策を整合させることにより、欧州産業が国際競争力を維持することに加え、雇用を創出し、成長を確保できるようにしなければなりません。

最近の欧州選挙は、変化の兆しが見えてきたことを示しています。

欧州においては、気候変動による社会経済への影響に対する懸念がますます政治的な色彩を強めており、これらに関するメッセージは多くの欧州の有権者の共感を呼んでいます。欧州の各首都およびブリュッセルで新たな政治的立場と同盟関係が固まるにつれ、企業は、成長と雇用を促進しながら、環境と気候に関連した持続可能性を優先し、より競争力のある、レジリエントかつ包括的な経済への明確な道筋を支持することを表明しています。

より強く、将来性のあるEUへの道筋において、継続的な野心と現実主義を両立させる方向性を打ち出すためには、この瞬間を捉えることが極めて重要です。持続可能な成長を確保するには、未来への投資を欠かすことはできません。

欧州グリーンディールのためのCEOアクショングループ(The CEO Action Group for the European Green Deal)は、EUで100万人以上を雇用し、ネット・ゼロ変革の最前線に立つ50以上のグローバル企業のコミュニティです。私たちは、欧州におけるクリーンな産業エコシステムの繁栄を支援することに専念しています。会員である企業は、イノベーションと産業を後押しするため、毎年数十億ドルを研究開発に投入し、2023年には、世界全体で270億ユーロ以上をイノベーションに費やしています。

私たちはCEOアクショングループの共同議長として、EUが2020年に設立した欧州グリーンディールを、2050年までに気候変動を中立化するという野心的なコミットメントを反映したものであると捉えています。また、グリーンディールを、好況な事業とともにレジリエントな経済を構築するための重要かつ総合的な成長戦略であると考えています。2050年までにネット・ゼロの排出目標を達成することが、その成長への道筋なのです。

グリーンディールは、単なる、環境保護を目的とした一連の部門横断的な立法パッケージではありません。欧州全域におけるグリーン技術の革新、生産、採用を原動力とする、欧州の持続可能な成長の触媒としての役割も果たしています。グリーンディールは、EUを競争力、戦略的相互依存、持続的な経済繁栄に向けて位置づけているのです。

クリーンでグリーンなインダストリアルディール

特に、再生可能エネルギーから電気自動車、バイオソリューション、炭素回収技術に至るまで、重要な気候変動技術の革新が他の地域でも加速しているため、今後、EUには野心と現実主義を両立させるビジョンが必要です。このような状況において、フォン・デア・ライエン欧州委員会委員長が最近発表したClean Industrial Deal(クリーン・インダストリアル・ディール)は歓迎すべきものです。こうした動きは、マリオ・ドラギ氏による欧州の競争力に関する最近の報告書で強調された、技術革新と技能への重点的な取り組みを含むいくつかの優先事項によって、さらに強化されました。EUの成長戦略としてのグリーンディールの可能性を完全に実現するためには、クリーン・インダストリアル・ディールが、グリーン政策と産業政策を至急整合させなければなりません。将来の産業において、欧州が世界的な競争に打ち勝つための確固たる道筋をつけるという意味においての「産業」です。

EUは、特にクリーンかつ革新的な技術の研究開発におけるパイオニアであり、優れた企業の発祥の地となってきました。優れた企業がEUで生まれる一方、その多くは成長期になるとEUを去ってしまいます。今こそ、この流れを変える必要があります。その際に考慮すべき重要な視点をまとめました。

1. 目的に合った規制

EUの産業が競争上の優位性を獲得し、生産性を高め、成長することを同時に可能にする規制が必要です。これには、透明性の高いリスク共有手段の開発による欧州の投資家のリスク選好度を高める措置、および再生可能エネルギー、農業、食品などの分野における持続可能なソリューションの承認プロセスを合理化する措置を含む、イノベーションに適した規制の導入が含まれます。さらに、エネルギー効率の向上と食品廃棄物の削減に対するインセンティブも同時に与えなければなりません。

提案されている、報告負担の25%削減は一歩前進と言えるものの、ここで首尾一貫した進展を確保することが重要です。許認可プロセスを含め、EUを拠点とする企業にとって、市場アクセスの迅速化は不可欠です。加盟国間における規制の競争条件の公平化が、単一市場の連結と深化に貢献し、EU全域で企業規模をさらに拡大しやすくすることにつながります。

2. 金融支援の効率性

EUの財政支援制度は、EU域内の投資にインセンティブを与えるべきです。公平な競争条件を整備するために、安全性を損なうことなく、時代遅れの技術より未来志向の技術を優遇すべきです。EUは、排出量に基づく基準と連動させ、経済効率の最も高い場所に未来型産業を立地させるための協調的な資金援助アプローチを必要としています。これはまた、重要な原材料の利用を拡大するために、リサイクル工場などの地域全体の持続可能なインフラを促進することにもつながります。

3. 技術革新の可能性の強化

EUは、炭素回収、発酵、風力エネルギー、持続可能な液体燃料といった、特に注目に値する分野における、革新的でクリーンな技術のブレークスルーとスケールアップ能力を積極的に育成すべきです。ネット・ゼロと持続可能なイノベーションの最前線にいるイノベーターおよび企業との継続的な対話が鍵となるでしょう。欧州が全体として正しい方向に進むよう、官民間のフィードバックを強化するツールとして、Clean Industrial Dialogues(クリーン・インダストリアル・ダイアログ)を利用するモデルを継続すべきです。

4. 技能開発

欧州の気候変動対策の中核をなすのは、依然として人材です。明日の産業が拡大し、国民が脱炭素化を支持し続けるためには、変化する労働市場のニーズに合致した良質な雇用をEU内に十分に確保しなければなりません。また、グリーンへの移行とさらなる繁栄との結びつきを強化し、特に欧州の脆弱な家庭が日常生活においてグリーンへの移行におけるインセンティブを得られるようにしなければならないのです。欧州委員会が近く発表する「Union of Skills(技能同盟)」がこの目標に貢献できることを期待しています。

私たちは共同議長として、またCEOアクショングループの仲間として、グリーンな競争力と全ての人々のさらなる繁栄に向けて欧州を前進させ続けるために、官民および専門家コミュニティーと協力する用意があります。グリーンへの移行へのコミットメントを維持し、イノベーションを受け入れ、規制環境を改善し、金融市場の厚みと弾力性を高めることにより、持続可能な成長のための条件を整え、EUの全市民に恩恵をもたらす未来を切り開くことができるのです。産業グリーンディールは、地球を守りながら経済的に繁栄するEUを構築するのに役立つでしょう。

欧州グリーンディールのためのCEOアクショングループへの参加に関する詳細の問い合わせ先はこちら europeangreendeal@weforum.org

フェイケ・シーベスマ氏とエスター・バイゲット氏は現在、欧州グリーンディールのためのCEOアクショングループの共同議長を務めています。

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クリーンでグリーンなインダストリアルディール1. 目的に合った規制2. 金融支援の効率性3. 技術革新の可能性の強化4. 技能開発

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