すべての科目に気候変動を。学校教育が次世代の若者にできること
気候変動は世界中で非常に大きな影響を及ぼしています。 Image: Unsplash/Kenny Eliason
- 若者の半数以上が気候変動に関して日常的に不安を感じていることが、英国の大学の研究で明らかになりました。
- 国連は、将来的に子どもたちが地球温暖化に対処する力を身につけられるよう、2025年から学校での気候変動教育の義務化を呼びかけています。
- 多くの国がパリ協定のこの目標に署名しているにもかかわらず、現在、教育制度で気候変動学習を義務付けている国はごくわずかです。
世界中の人々が、気候変動の影響を日々目の当たりにし、実感しています。夏の猛暑、洪水、暴風雨の被害はますます常態化しており、手遅れになる前に足並みをそろえてグローバルな行動をとらなければ、将来の世代が事態の収拾に追われることになります。
学校カリキュラムに気候変動に関する科目を取り入れることで、若者が、地球温暖化に対してより実践的に、そして、心理的にも適切に対処できるようになると、多くの人が考えています。
昨年、グローバルに行われた調査で、気候変動への不安が若者の約半数の日常生活に影響を及ぼしていることが明らかになりました。10カ国1万人の若者を対象とする調査を基にバース大学が行った研究では、回答者の75%が「将来に不安を感じる」と答えています。
気候変動教育を求める声の高まり
国際機関は、正式なカリキュラムの一環として、学校が気候変動に関する教育を行うよう声をあげており、国連は、気候変動学習を2025年までに全ての学校教育に取り入れるべきだとしています。ユネスコが約50カ国の教育計画を分析する調査を行った結果、気候変動への言及がない国が半数以上に上ることが明らかなりました。生物多様性に言及している国にいたっては、わずか19%でした。
米国のシンクタンク、ブルッキングス研究所は、学校で環境への意識を高めることが消費者の行動に変化をもたらし、エネルギー消費や廃棄物の削減につながると主張。これは、2050年までにネットゼロを目指す上で、風力発電や太陽光発電などの再生可能エネルギーへの投資よりも大きなインパクトをもたらすとしています。
気候変動教育に着手している国
2015年のパリ協定への署名国は、気候変動教育の改善に合意したにも関わらず、実際に実行している国はごくわずかです。
イタリアでは2019年に法が成立し、学校での気候関連の学習を義務化した最初の国になりました。週1時間または年間33時間程度を気候変動問題に充てることが、全ての公立学校に義務付けられたのです。ロレンツォ・フィオラモンティ元教育相は、「教育をより迅速に推し進めなければ、2050年までに炭素排出量ネットゼロの目標を達成できる見込みはないでしょう」と述べています。
カンボジアでは、2020年に導入された高等学校向けの地球科学カリキュラムが新たに拡充され、気候変動問題が取り入れられました。学生たちは課題解決に向けたアプローチや技術を学ぶだけでなく、15のパイロット校が植林や気候変動対応型農業などのプロジェクトへの取り組みを進めています。
同様の動きは、他の国々でも見られます。2021年、アルゼンチン議会は総合的な環境教育の実施に関する法律を承認。同法により、学校は全ての学年の学生たちに環境教育を提供することが義務付けられました。この法が成立する以前は、環境問題はテクノロジーや社会科学などの科目で教えられていました。
英国では、小中学校で気候変動に関する内容がすでに扱われていますが、英国政府は「世界トップレベルの気候変動教育」を2023年までに実現することを約束しています。
遅々として進まない気候変動教育
世界の数百万人の教師を代表する組合、教育インターナショナルは、気候変動教育の実施というコミットメントを多くの国が無視していると、報告書で指摘しています。組合の調査によると、パリ協定の目標に対するコミットメントとして自国が決定する貢献(NDC)を新たに提出または更新した95カ国のうち、若者への教育に具体的な言及があるのはわずか24%です。また、国の気候戦略の一環として気候変動教育(CCE)の義務化を要求している国はありませんでした。
さらに、報告書の著者らは、特に先進国の取り組みが不十分であることを指摘しています。「最新のNDCを提出した炭素排出量上位20カ国、及び富裕国上位20カ国のうち、気候変動教育に言及した国はありませんでした。炭素排出量上位国のうち3カ国が、将来の世代のウェルビーイング(幸福)に言及しているだけです。国の気候戦略で気候変動教育を論じているのは、むしろ炭素排出量が下位の国々でした」。報告書では、気候関連の学習を教育制度に取り入れる具体的対策を講じている国として、カンボジア、ドミニカ共和国、コロンビア、アルゼンチンを挙げています。
気候変動教育への取り組みを求める若者たち
社会運動団体のティーチ・ザ・フューチャーの調査で、英国の教師の半数以上が、自身の担当教科で気候変動について意味や関連性を持って教えていないと考えていることが明らかになりました。BBCニュースに対し、英国の学校カリキュラムの大幅な改変を望むと語っている18歳の運動家、スカーレット・ウェストブルックさんは、議会に対し教育法改正法案を作成しました。学生により本案が作成されたのは史上初のこと。13歳のときから運動を続けているウェストブルックさんは、「教育制度は、気候危機を全ての科目の中心に据える必要があります」と話します。そうすることで、「将来の世代は、気候変動の影響へ高い意識を持ち、冷静に対処する準備をすることができるのです」。
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