雇用主が人材とスキルをより効果的に活用する3つの方法
組織は、スキルと人材不足に悩まされていますが、この状況は今後ますます深刻化するでしょう。 Image: Getty Images/iStockphoto
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働き方の未来
- 仕事の未来レポート2023によると、調査対象国の95%で、スキルギャップおよび人材を惹きつけることができないことが、企業の変革への主な障壁となっています。
- 人材へのアクセスを向上させる可能性が最も高いビジネス慣行として、賃金の引き上げ、昇進機会の向上、スキルアップの促進が挙げられています。
- 雇用主のスキルへのアクセスを向上させる鍵となるのは、人材プールの多様化、スキルベース採用の導入、育児ニーズへの配慮など、新たな視点に目を向けることです。
組織は、スキルや優れた能力を持つ人材の不足に悩まされており、この状況は今後ますます深刻化すると見られています。「仕事の未来レポート2023(The Future of Jobs Report 2023)」によると、調査対象国の95%において、スキルギャップおよび人材を惹きつけることができないことが、企業の変革への主な障壁となっています。
金利が上昇し、経済を取り巻く環境が不安定な現在の状況において、規制の課題や投資資本の不足などの課題よりも、スキルと人材に関する課題の方が大きな懸念だとする企業が、約50%も多いことが明らかになりました。
スキルと人材に関する懸念は、他の研究でも指摘されています。マンパワーグループの調査によると、世界の人材不足が17年ぶりの高水準を記録し、採用難が深刻化しています。41カ国の雇用主の4分の3以上が、空きポストを埋めることに苦労しています。従業員のエンゲージメントとモチベーションを向上させるためのビジネスソリューションを提供するカナダの企業、アチーバーズによる調査でも労働力不足の懸念が指摘されており、世界中の人事リーダーの3分の2が人手不足の悪化を訴えています。
雇用主は、現在難しい状況に置かれていますが、見えている課題は氷山の一角に過ぎないかもしれません。国連労働期間(ILO)のデータによると、高中所得国および高所得国では、2030年までに、生産年齢人口の割合が2%減少すると推定されています。これは、7,500万人の労働力を失うことに相当し、フランスの人口を上回る数です。こうした人口動態の変化は、労働需給のマクロ経済的な変動よりも影響が大きく、長期にわたります。
高中所得国および高所得国における労働力不足が続く中、雇用主は、人材にアクセスする新たな方法を見出す必要があります。仕事の未来レポートの調査で、800を超える雇用主を対象に、人材へのアクセスを向上させる可能性が最も高いビジネス慣行と公共政策について尋ねたところ、多くの雇用主が、賃金の引き上げ、昇進機会の向上、スキルアップの促進という3つの慣行を特定しました。しかし、あまり挙げられなかったいくつかの慣行にも目を向けることが重要で、企業の最も差し迫ったニーズに対応するための、見落とされがちな機会の特定に役立つかもしれません。
ここでは、雇用主が必要とするスキルや人材へのアクセスを改善する方法として、見落とされがちな3つのビジネス慣行を紹介します。
人材プールを多様化させる
多様な人材を活用することが、今後5年間で人材供給を増やす有望な方法だと考えている雇用主はわずか10人に1人です。ダイバーシティとインクルージョンへ焦点を当てる傾向が高まる中、雇用主は、すでに多様な人材から利益を得ていると考えている可能性があります。しかし、データはさらなる潜在的な機会を示唆しています。
HRテック企業のカルチャー・アンプが、人事リーダーを対象に行った調査によると、80%以上が、DEI(ダイバーシティ、エクイティ、インクルージョン)に関する取り組みが組織にとって有益であると考えている一方で、こうした取り組みをサポートするために十分なリソースがあると回答したのはわずか34%でした。同業他社と比較して、性別の多様性を持つ企業は15%、民族の多様性がある企業は35%、成功する可能性が高いことがわかりました。
世界経済フォーラムによる報告書「ビジネスにおける人種・民族の公平性を優先する:共通の枠組みの構築(Prioritizing Racial and Ethnic Equity in Business: Towards a Common Framework)」では、人種と民族の不平等が企業と国の双方にもたらす経済的なインパクトについて詳しく述べられています。同様に、「グローバル・ジェンダーギャップ・レポート2023(Global Gender Gap Report 2023)」で示されているように、確固たるジェンダー戦略は、優秀な人材を惹きつけ、長期的な経済パフォーマンス、レジリエンス(強靭性)、生存力を確保するためにますます重要視されています。
DEIの目標を超えて人材プールを多様化させるためには、新しい場所に目を向けることも必要になるでしょう。アチーバーズは、人材プールの39%が、積極的に求職活動をしていない人材で占められていると言います。同様に、特定の職務や分野での経験などの職務要件を柔軟にすることで、より幅広い候補者層を開拓することができるでしょう。これは、リンクトイン上で、最も需要の高い職務の採用において効果的であることが実証されており、最も需要の高い10の仕事のうち6つは異なる職種の人材が採用されています。
スキルベース採用の導入
多くの人材を確保するための最も効果的な手法のひとつに、学位の要件を撤廃したスキルベース採用を挙げる雇用主は、わずか6%に過ぎません。しかし、リンクトインのデータは、このアプローチの価値を実証しています。2022年に、リンクトインのプラットフォームでスキル優先のアプローチを採用した企業は40%。これらの雇用主は、このアプローチを適用していない同業他社の雇用主と比較し、有能な求職者を見つけることができる確率が60%も高かったことが明らかになりました。
スキル優先のアプローチは、雇用主により強固な人材パイプラインを提供し、求職者には、さらなる機会を創出します。これは、世界経済フォーラムの報告書「スキル優先の実現(Putting Skills First)」で取り上げられた、雇用主と求職者をスキルベースでマッチングさせるマンパワーグループのプラットフォーム「ジョブ・エクスチェンジ(Jobs Exchange)」の事例が実証しています。このイニシアチブは、アクセンチュアやファイザーなどの協力パートナーとともに、スキル優先のアプローチを用いて難民の求職者の雇用市場へのアクセスも促進しています。ジョブ・エクスチェンジでは、自己申告スキルと、AIによって特定された求職者自身が認識していない隠れたスキルの両方を使い、マッチする可能性のあるさまざまな仕事を特定します。これにより、わずか1年余りで10万件以上の求人が掲載され、数千人の難民がマッチングに成功しています。
保育へのアクセス向上
雇用主の80%が、DEIプログラムの焦点を女性に当てることを期待している一方で、わずか14%しか、保育の利用可能性を高める公共政策が人材の利用可能性を高めると考えていません。これに対し、仕事の未来レポートの調査対象組織で、働く親のために保育のサポートを提供することは人材の確保につながると考えているのはわずか3%でした。
デル・ボッカや経済政策研究センター(The Centre for Economic Policy Research, CEPR)によるいくつかの研究で示されているように、保育サービスが手頃な価格で利用しやすくなることは、特に、母親の労働参加を高めるのに有効です。これにより、雇用主はより多くの人材プールにアクセスできるようになり、個人のウェルビーイング(幸福)は向上、経済全体も活性化すると、世界経済フォーラムのグローバル・ジェンダーギャップ・レポート2023は強調しています。欧州委員会の最新の報告書は、3歳未満の子どもの保育利用率を60%に引き上げると、一部の欧州諸国の母親の労働参加率を7%~61%上昇させることができると試算しています。もし、高中所得国や高所得国で、3歳未満の子どもの保育利用率に平均的な増加が見られた場合、カナダの人口に匹敵する3,500万人の労働力が増加することになります。
生産年齢人口が減少するにつれて、高中所得国および高所得国の雇用主は、一層スキル不足に悩まされ、有能な人材の獲得もさらに困難になるでしょう。
雇用主は、人材と仕事をマッチングさせる新たな方法を模索する必要があります。人材プールの多様化、スキルベース採用の導入、育児ニーズへの配慮など、新たな視点に目を向けることは、雇用主が抱えるスキルと人材の課題を打破する鍵となるでしょう。
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