オーストラリアの自由貿易協定からグリーンテック補助措置まで。世界貿易について知っておくべき6つのこと
この月刊ラウンドアップでは、世界貿易に関する最新のニュースや最新情報をお届けします。 Image: Cameron Venti/Unsplash
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- この月刊ラウンドアップでは、世界貿易に関する最新のニュースや最新情報をお届けします。
- トップストーリー:世界の物品貿易の成長率鈍化の見込み、グリーンテクノロジー補助措置をめぐる米・EU間の緊張、WTOがグリーン貿易を支持、オーストラリアが自由貿易協定を可決。
1.世界貿易機構、物品貿易が今後数ヶ月で鈍化する見通しを示す
世界貿易機関(WTO)が発表した最新の物品貿易バロメーターは、景気悪化のため2022年末から2023年にかけて世界貿易の成長が鈍化するとしています。輸出受注高、航空貨物、電子部品のトレンドが低迷していますが、いずれも企業マインドの冷え込みと世界的な輸入需要の落ち込みが原因とされます。
バロメーターは、最近のトレンドに対する物品貿易量の情報をリアルタイムで提供するもので、今回は96.2となっています。100以下の数値はトレンドを下回る成長率、100以上の数値はトレンドを上回る成長率を示します。
トレンドの主な例外は、自動車関連製品の指数で、米国における自動車販売台数の増加や円安に伴う日本からの輸出増加により、103.8となりました。
「WTOが10月5日に発表した世界貿易見通しでは、ウクライナ侵攻、エネルギー価格の高騰、主要国による金融引き締めなどが要因となり、2022年の物品貿易量の増加が3.5%、2023年の増加が1.0%にとどまると予測しており、物品貿易バロメーターの下降はこれと合致する」と同機関は述べています。
一方、マッキンゼーが新たに発表したレポートでは、さまざまな種類の貿易が急速に成長しているとしています。サービス貿易、留学関連の貿易、そして知的財産のフローは、2010年から19年にかけて、モノのフローの2倍のぺースで成長しました。これらのフローの将来的な推移は、特にデータのフローなどで急展開している政策情勢にも左右されます。
2.米国のグリーンテクノロジー優遇措置で、米・EUの貿易摩擦が発生
北米でグリーンテクノロジーを採用して製造された製品に税控除などの優遇措置を供与するという米国の計画をめぐり、米国と欧州の間で緊張が高まる中、バイデン米大統領は緊張緩和に向けて尽力しています。
この事態をめぐって、米国・EU間の貿易摩擦の可能性が指摘されています。米国のインフレ抑制法(IRA)の下で提供される優遇策によって、企業が不利益を被ると欧州諸国は懸念しています。また提案された優遇措置の多くがWTOのルールに違反している疑いがあるとも主張しています。
EUの国家補助規制では、EU域内の国が工場の設立を希望する企業に対して同規模の税制優遇措置を提供することが禁じられています。欧州連合(EU)のフォンデアライエン欧州委員長は、欧州は米国の補助金措置に対抗するため、国家補助規制を修正すべきと述べています。
バイデン大統領は、フランスのマクロン大統領に対し、インフレ抑制法にはに「不備」があると認めつつ、同盟国が納得できるような「微調整は可能だ」と述べています。EU諸国は早期の解決を求めており、課題の解決に向けて米国とEUは合同ハイレベルタスクフォースを立ち上げました。
12月5日開催の米EU貿易技術評議会で、双方はグリーン・サプライチェーンでは対立ではなく協力していく必要があるとして、米・EU貿易に関する新たなイニシアチブを立ち上げました。グリーンで持続可能な未来を推進し、米・EU間の貿易・投資拡大に向けた行動を模索するのが目的。脱炭素化やサーキュラー・エコノミーを優先させる予定です。
3.WTO、グリーン貿易を支持
素排出量を大幅に削減する最も現実的な方法は、低炭素技術の進歩であるとしています。同報告書が提言しているのは、炭素集約型産業に比べて高くなりがちな低炭素型産業の関税などの障壁を削減することです。また、輸出品目の多様性が低い国ほど総じて気候変動に対して脆弱である傾向があるとしています。
世界経済フォーラムの「クライメート・トレード・ゼロ」イニシアチブでは、25のテクノロジーの一覧と、貿易の持続可能性を高めるために政策立案者が優先すべきテクノロジーや関連サービスについての情報を提供しています。
WTO加盟国70カ国以上が参加した、12月の貿易と環境持続可能性に関する議論では、貿易の持続可能性を促進する新たな対策を2023年に実施することが決定しました。議論の中心となったのは、貿易と気候変動対策、環境物品・サービスの貿易促進、貿易とサーキュラー・エコノミー、補助措置の4分野です。今回は特例として非政府のステークホルダーも議論に参加し、課題や機会について情報提供しています。
4.オーストラリアが自由貿易協定を可決、英国もFTAを模索
オーストラリア議会は、インドおよびイギリスとの自由貿易協定(FTA)を可決しました。AP通信によると、英国とのFTAにより、羊肉、牛肉、乳製品、砂糖、ワインなど、オーストラリア製品の輸出の99%以上について関税が撤廃されます。インドとのFTAでは、肉、羊毛、綿、水産物、ナッツ、アボカドなどオーストラリアからの輸出品の90%について関税が削減されます。また、オーストラリアは10月にシンガポールとグリーン経済協定を締結しています。
EU離脱後の英国は、単独の貿易国としての地位を確立すべく、インドを含む数カ国と新たな貿易協定について協議しています。
米国との自由貿易協定は、EU離脱を果たした英国の最大の見返りの一つとして注目を集めていましたが、バイデン米政権がすべての自由貿易交渉を凍結させたことから、早期に合意を得る見込みはなくなりました。
5.2023年、海上輸送業界は荒波に直面か
CNBCによると、コンテナ不足は急速に解消され、モノに対する消費者需要の冷え込みにより、海上輸送業は現在コンテナ余剰に直面しています。
国連貿易開発会議(UNCTAD)が発表した「海上輸送レビュー2022」は、2023年に世界の海上輸送のペースが低下する見込みを示しています。海上輸送は世界の貿易輸送量の80%以上を占めていますが、ロイター通信によると、世界の大手投資銀行は、世界経済の成長が2023年にさらに鈍化すると予想しています。
UNCTAD報告書は、「ウクライナ侵攻、パンデミック(世界的大流行)の長期化、継続するサプライチェーンの制約、中国の経済低迷とゼロコロナ政策に加えて、インフレ圧力と生活費高騰によって、海上輸送と物流の回復が脅かされている」と伝えています。
景気低迷により、少なくとも海上輸送セクターの二酸化炭素排出量を抑制する効果はあるといえますが、UNCTADでは、2020-21年の増加率は4.7%で逆境ともいえる方向に向かっているとしています。そのため、同セクターは、最も費用対効果の高い燃料を使用し、スマートなデジタルシステムとの統合が可能な新世代の船舶を開発するよう物流企業に求めていますが、そのような船舶の割合は低水準であるとUNCTADは指摘しています。「2021年の世界の商業用船舶の増加率は3%未満であり、これは2005年以来2番目に低い増加率である」としています。
6.包装に関するEUの新規則、電子商取引に適用か
包装と包装廃棄物に関するEU法改正案を受け、EU域内の電子商取引業者は、商品出荷時に包装の空きスペースを最小化しなければならなくなると欧州のポータルサイトEuractivは報じています。
改正案では、包装内の空きスペースを最大40%に制限するとしています。世界的な物流企業DHLは、「二重壁、偽底や製品量を多く見せかけるその他の手段」は禁止されると指摘しています。
EUは、2040年までに各加盟国の包装廃棄物を2018年比で15%削減したいと考えています。これにより、EU全体で37%の廃棄物削減につながります。また、プラスチック包装の生産におけるリサイクル原料率の義務化や、電子商取引の配送を含め、再利用可能または詰め替え可能な包装の促進が検討されています。
包装はバージン材料の主な利用目的の一つであり、EUで使用されるプラスチックの40%、紙の50%が包装で使用されていると欧州委員会は述べています。
アジェンダで貿易についてもっと読む
- WTOの3つの主要なチャートは、貿易によって気候変動対策とクリーンエネルギーへの移行を加速させる方法を示しています。気候変動対策に必要とされる低炭素技術の利用を阻害しているのが貿易障壁であるとしています。
- 中国の直近のデータ輸出規制によって、国際的なデータの流れに大きな障害が生じる可能性があり、企業が中国国内でまたは中国を相手にしたビジネスを回避する危険性があります。世界経済フォーラムのデジタル・トレード・プロジェクト・リード、ヤン・シャオが、デジタル・アジア・ハブの運営委員であるドニー・ドンと共に、新しいルールについてブログで解説しています。
- 世界経済フォーラムのサステナブル・トレード・スペシャリスト、スーミャジト・カーは、貿易協定によって責任あるプラスチックの流れとサーキュラリティ(循環性)を支援することができれば、貿易はプラスチック汚染の解決に貢献することができると述べています。ウルグアイでのサミットでは、2024年の実現を目指して、プラスチック汚染に関する法的拘束力のある国際条約の策定について議論されます。70以上のWTO加盟国が、プラスチック汚染条約のプロセスを補完する貿易政策の役割について議論を進めています。
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