消費者とサプライヤーの間の信頼は、オフラインに比べ、オンラインで大きな問題に発展しがちです。オンラインでは、物理的なやりとりや、消費者が小売業者またはサプライヤーの職業的スキルを試す機会に触れる限界があります。24ヵ国のインターネットユーザー2万4,000人を対象としたある調査では、オンラインで買い物をしないと回答した人が22%に上り、うち49%が信頼できないことをその理由に挙げました。

オンラインにおける信頼構築は、消費者とサプライヤーが異なる国に住む場合に一段と複雑になるというのも、意外なことではありません。消費者は、自国での買い物と同様の安心を得る事ができるか、不安に感じている可能性があります。クレジットカードの情報は安全に処理されるのか、不良品を返品できるのか。また、消費者が国外から買い物をしていると認識すらしていない場合もあります。

サプライヤーの観点からすると、国境を越えた信頼感が低い状況は、輸出を利用したビジネスチャンスに影響する可能性があります。グローバルなブランド力のない小規模事業者には、特に言えます。消費者の信頼を巡るルールの不明瞭さは、コンプライアンスを巡る
曖昧さの原因にもなり、各国間で異なるアプローチが採用されるという非効率的な状況を生みかねません。

イメージ: 消費動向スコアボード/消費者センター

最新の白書、オンラインにおける消費者保護とeコマースに対するグローバル・ガバナンスの考察によれば、政策立案者はeコマースにおける信頼向上のために、以下の5つの方法をとることができます。

1.オンラインにおける消費者保護の適切なルールをつくる

国連貿易開発会議(UNCTAD)のサイバー法トラッカーによると、消費者保護に関する法的枠組みは大部分の国で整備されているものの、オンライン活動にも適用するための更新を行った国は、52%に過ぎません。その他の国では、法が起草段階にあるか、そうした法がある/ないは、情報が入手できない状況です。

2.個人情報の保護に重点を置く

個人情報を保護するルールは、オンラインにおける消費者保護の手段の一部であると、多くのステークホルダーが考えています。企業対消費者(B2C)取引における情報については、特にこれが当てはまります。UNCTADによると、個人情報の保護に関するルールがある国は58%、ルールがない国が21%で、残りについては情報がありませんでした。

こうした措置がオンラインにおける信頼向上に寄与していることは、調査によって裏付けられています。KPMGがオンラインを利用する50ヵ国、1万8,000人の消費者を対象に行った調査では、企業への信頼を向上させる可能性が高い要素として、個人情報の利用方法を消費者が管理できることと回答した人が41%に上りました。なかでも、北米、欧州、南アフリカでこの傾向がみられました。

3. ルールの多様さに対処する

オンライン上の消費者保護に関するルールでは、購入前から購入後に至るB2C関係のあらゆる側面が対象になり得ます。政策立案者が対応すべき問題は、情報の非対称性、不公平な商慣行、スパムメール、契約条件、決済の安全性、責任と返品など、さまざまです。国によってアプローチが異なる場合があり、業界の自主規制や基準によって優先事項も異なります。

技術的な変化によっても、新たに問題が提起されています。例えば、第三者的販売者の虚偽行為に対し、オンラインマーケットプレイスが消費者に責任を負うべきか、という問題があります。契約を結ぼうとしている相手について顧客に情報を提供するよう、オンラインマーケットプレイスに求めている国もありますが、常にこれが該当するとは限りません。

4. eコマースを巡る国際協調を強化する

過去20年の間にeコマースの重要性は一段と高まりました。その市場規模を25兆3,000億ドルとする試算もあり、市場は拡大し続けています。とはいえ、事業をグローバルに広げ、他国の消費者と繋がることは、オンライン小売業者にとり、なお難しいことです。国境を越えたeコマース活動は、2015年時点で、オンラインにおけるB2C総売上高のわずか7%を占めるに過ぎません。

これには、ロジスティクスから決済に及ぶさまざまな要因が影響しているとみられます。国外からの買い物は安全性に劣り、問題が起きても救済措置がないとの印象が影響していることは、間違いありません。よって、供給に応じた需要を喚起するには、国家間の摩擦の緩和と並行して、国際的な政策協調を強化し、システム全体でオンラインにおける信頼を高める必要があります。

5. eコマースに関わる国際議論に参加する

経済協力開発機構(OECD)およびUNCTADの関係国は、オンラインにおける消費者保護のルールについて、各国のアプローチの調整に取り組んでいます。いわゆる「ソフトロー」は、この調整を適切に進めるための正しい手段ではありますが、変化をほとんど予測できないため、規制が不十分な状況に消費者が抱いている不信感には、何ら影響を及ぼさない可能性があります。

特恵貿易協定(PTA)では、基準の強化と透明性あるアプローチの確保を目指したものが増えています。そのようなPTAでは、オンライン上の消費者保護を担う組織同士の協力を促進するものもあれば、個人情報保護の法律化を定めるものもあります。

2019年1月には、世界貿易の90%を担う76ヵ国が、eコマースの貿易関連の側面について協議に着手することを確約しました。この協議の範囲を正確に述べることは時期尚早ですが、準備段階では、オンラインにおける消費者保護の問題も提案されています。実質的な内容は曖昧な部分が多いものの、グローバルな貿易のルールを策定する方向に協議が進み、最低限の法的枠組みの構築と、規制づくりの土台となる原則の一本化が促される可能性があります。

その結果は、どのようなものであれ、ハイペースで進む技術変化に耐える長期的に有効なものであることが重要です。そのためには、例えば、ブロックチェーン技術に基づく「スマートコントラクト」を巡る動向に、ガバナンスの整合と調整を図ることが課題になるかもしれません。協議の結果は、グローバルなデジタルエコノミーの文脈においても同様に重要になるでしょう。