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不可能を可能に―今こそ求められる超伝導の力

ドイツの電力会社RWEの超電導ケーブル。超伝導技術は、エネルギー転換を実現するために必要なシステム全体の刷新に不可欠です。

超伝導技術は、エネルギー転換を実現するために必要なシステム全体の刷新に不可欠です。 Image: Reuters/Ina Fassbender

John Dutton
Head, UpLink; Member of the Executive Committee, World Economic Forum
Eleni Kemene
Lead, Materials Systems, World Economic Forum
本稿は、以下センター (部門)の一部です。 エネルギー、マテリアル
  • 超伝導技術は、エネルギー転換を実現するために必要なシステム全体の刷新に不可欠です。
  • 送電時のエネルギー損失を実質ゼロに削減し、再生可能エネルギー拡大に必要なインフラを促進し、フロンティアエネルギー源を支えます。
  • 企業のリーダーたちは、画期的な超伝導ソリューションを拡大するために必要なエコシステムを推進する必要があります。

エネルギー転換とは、単なる燃料転換ではなく、経済成長と国家エネルギー安全保障を支えるシステムの再設計です。

エンドユーザーの電化やデータセンターとAIの需要増により、電力需要が急激に増大。電力システムは再生可能エネルギーの割合を拡大しつつありますが、その電力を運ぶインフラでは依然として損失が発生しています。

送電網、モーター、冷却システム、産業プロセスにおけるあらゆる非効率性が、資本、二酸化炭素排出量、レジリエンスといったコストを伴います。漸進的な改善では、必要とされる変革のペースに対応できなくなっているのです。

そのため、かつて「非現実的」と見なされ、研究機関に限定されていたテクノロジーが、急速に注目を浴びつつあります。それは、超伝導です。かつてニッチと見なされていた超伝導体が、より効率的で耐障害性が高く、高性能なシステムを実現する重要な基盤技術として台頭しているのです。エネルギー損失を劇的に低減し、電力密度、効率、システム設計の面で大幅な向上が図られた結果、電力ネットワーク、産業、デジタルインフラ全体において、エネルギー安全保障の強化、システム効率の改善、排出量削減の加速に貢献する可能性があります。

近年の研究が示す通り、イノベーションは過去10年間で予測排出量を40%削減。超伝導体は今後10年間における主要な加速要因となり得るでしょう。

超伝導体とは

超伝導体は、「特定の温度以下で電気抵抗がゼロになる材料」です。したがって、電流はエネルギーや熱損失なしに無限に流れ続けることができます。

超伝導配線、システム、材料の開発に注力するスタートアップ企業が増加する中、企業、国際機関(IO)、政府のプログラムもこの分野への支援を強化しています。

注目すべき理由とは、何でしょうか。また、企業セクターはどのように関与すべきでしょうか。経済の脱炭素化に不可欠である3つの理由を以下に示します。

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1. 抵抗ゼロとは、エネルギー損失の低減、完全削減を意味する

従来、電力網の導体には銅やアルミニウムが使用されてきました。これらは産業革命を支えましたが、その特性上、送電時に世界の電力の5~10%が熱として失われています超伝導体はこの損失を劇的に削減可能であり、システムレベルでの大幅なコスト削減と炭素排出量削減につながります。

国際エネルギー機関(IEA)が強調するように、送電損失を1%削減するごとに、年間数百万トンの二酸化炭素削減効果があります。大規模な電力会社や送電網事業者にとって、これは発電所の削減、燃料消費量の低減、長期的なインフラと維持管理コストの削減を意味します。

2. 超伝導体の超高密度、高出力特性は、システムレベルの効率向上と再生可能エネルギーの統合を実現する

また、超伝導体は、同径の銅ケーブルと比較して最大約100倍の電力を伝送可能であり、再生可能エネルギーを都市や地域社会へ供給する、よりコンパクトで効率的なケーブルの実現を可能にします。また、輸送分野においては、小型軽量のモーターや発電機の実現にも貢献します。

再生可能エネルギー分野にとって、これは重要な飛躍的変化です。通常はピークが発生しやすく、地理的に分散した電力フローを特徴とする風力および太陽光発電が、損失を最小限に抑えながらギガワット単位の電力を長距離伝送できるため、変動性の平準化に役立つからです。

システムレベルでは、IEAの報告書『Electricity Grids and Secure Energy Transitions(電力系統と安全なエネルギー転換)』が指摘するように、ネットゼロ達成には今後10年間で電力系統を約20%速いペースで拡大する必要があります。このように、超伝導技術は中長期的にコスト削減に貢献する可能性を秘めています。

3. 超伝導素材は、フロンティアエネルギー源と技術の開発に不可欠である

超伝導体は、核融合・水素・超高密度エネルギー利用を実現する基盤技術であり、次のように現代のAI経済の基盤となっています。

  • 超伝導磁石がなければ、磁気閉じ込め方式の核融合システムの多くは持続可能な核融合条件を達成できません。超伝導体は、極限温度下でプラズマを閉じ込めるために必要な高磁場を生成するために不可欠です。
  • 超伝導モーターと冷凍システムは、効率的な極低温冷却に依存する水素液化および応用における主要な効率化要因です。
  • 電力密度と冷却需要による制約が深刻化するAIデータセンターは、超伝導電力配電と極低温電子機器(現在活発に開発が進められている分野)を通じてエネルギー使用量を削減することのできる可能性があります。この超伝導技術に関するイノベーション領域は、世界経済フォーラムのエネルギー、マテリアル部門において推進されています。また、マイクロソフトの研究が示すように、効率向上、発熱低減、総合的なエネルギーコスト削減により、データセンターの電力インフラを変革する可能性を秘めています。

同フォーラムにおける初期段階のイノベーション推進機関、UpLink(アップリンク)では、画期的なソリューションの拡大に必要なエコシステムの統合を推進。先見性のある企業リーダーたちがコアリションを構築して超伝導ソリューションに対する企業の需要を示し、同時に資金提供者やIO/政府の支援機関と連携することにより、これらの技術がネットゼロ社会の実現に向けて大きな役割を果たせるよう支援します。

超伝導推進における企業需要を牽引し得る主体は誰でしょうか。特に影響力を持つのは、データセンターへ多額の投資を行い、超伝導ケーブルの恩恵を受けるテクノロジー企業群です。具体的にはマイクロソフト、グーグル、メタ、AWSなどが挙げられます。

電力会社や送電網運営者も、高温超伝導ケーブルの統合と送電網近代化に注力しており、これが再生可能エネルギー革命の起爆剤となることが期待されます。この分野を注視しているその他のセクターには、港湾、空港、水素、鉄鋼、医療、そして成長中の核融合産業が含まれます。各セクターは超伝導技術がもたらす効率向上を模索しています。

現在、各国政府、企業、投資セクターから注目を集める3つのスタートアップがあります。

MIT、ヒューストン大学、オックスフォード大学、チューリッヒ工科大学など、数多くの主要学術機関が超伝導体の研究を新たな段階へ進める中、今後10年間で予測される排出量削減目標の達成を支援するため、これらの材料が育成されるよう、企業リーダーシップ、政府資金、民間資本、そして一般の認識が鍵となります。欧州原子核研究機構(CERN)での最近の出来事が示したように、超伝導技術を開発の転換点を越え、社会的潜在能力を最大限に引き出すためには、すべてのステークホルダーによる協調的な行動と加速された連携が不可欠です。

企業リーダーたちに求められること

超伝導技術を可能性から実用化へ導く上で、企業のリーダーたちには決定的な役割が求められます。その第一歩は、超伝導システムの将来像を定義する競争前のコンソーシアムに参加し、明確な需要を示すことです。具体的には、効率向上が最も重要な都市部グリッドやデータセンターキャンパスなど、スペース制約のある環境や高付加価値環境におけるパイロット事業や実証プロジェクトへの共同出資が挙げられます。さらに、超伝導技術を開発するスタートアップ企業への小規模ながら戦略的なベンチャー投資や企業投資を通じた、リスク分担への意欲も求められます。

最後に、技術の成熟に伴い強靭なサプライチェーンを構築するためには、イノベーション基金、資本提供者、公益事業体、スタートアップ、産業導入企業といったエコシステムを連携させることが進捗の鍵となります。もはや課題は超伝導技術が機能するか否かではなく、産業界が主導権を握り、技術的実現可能性を協調的な行動へと転換する準備が整っているかどうかにあるのです。

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