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金融包摂を強化するAIの台頭〜インドネシアの事例〜

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インドネシアの金融包摂指数は、9年間でほぼ倍増しています. Image: Unsplash/Fikri Rasyid

Vincent Henry Iswaratioso
Co-Founder and Chief Executive Officer, DANA
  • インドネシアでは、インターネット普及率と金融包摂の増加に伴い、デジタル分野が著しい成長を遂げています。
  • AIは、不正検出とリスク評価を改善し、カスタマー体験のパーソナライゼーションを進めて、金融包摂を強化します。
  • AI主導の持続可能な成長には、フィンテック企業、規制当局、政策立案者の相互協力が必要です。

インドネシアは、デジタル変革において重要な局面を迎えています。17,504の島々に2億8,000万人以上の人々が暮らすインドネシアでは、1億8,000万台以上のスマートフォンが普及し、コネクティビティがかつてないほどに高まっています。

2024年にはインターネット普及率が79%に達し、国民がオンラインプラットフォームを急速に受け入れていることが反映されました。わずか10年前には、インドネシアの成人人口のほぼ半数が銀行口座を持たない状態でしたが、金融テクノロジーの急速な進歩により、金融包摂指数はほぼ84%にまで上昇。もし10年前にAIがこれほどまでに普及していたら、この変革はさらに加速していたかもしれません。

デジタル化の普及はグローバルな傾向ですが、インドネシアの軌跡は独特で、政府の支援政策、活気のあるフィンテック部門、急成長するデジタル経済によって形作られています。

過去10年間、これらの要因が集約されて金融包摂が加速し、2014年の49%から2023年には約83%にまで増加しました。この驚くべき飛躍は、インドネシアの銀行システムにスイス人口の7倍を追加するのに匹敵する規模です。

さらに、デジタル技術の採用も、2030年までに約2000億~3600億ドルに達すると予測されるインドネシアの商品総取引額の成長と相関しています。

これらのマイルストーンが、先進的で包摂的かつ持続可能な経済を構想するインドネシアの長期的な野望である「インドネシア・ビジョン2045」を支えています。

AIはこうした進歩の最も有望な推進要因のひとつです。金融サービスへの組み込みが増えるAIは、不正行為の検知の強化、リスク評価の合理化、顧客一人ひとりに合わせたカスタマーエクスペリエンスの提供に役立っています。AIを効果的に活用することで、インドネシアはサービスが行き届いていない地域社会に不可欠なサービスを拡大し、デジタル経済の基盤を強化できるでしょう。

しかし、AIの急速な台頭は、消費者保護を図りつつイノベーションを育むバランスの取れた規制環境の重要性を浮き彫りにしています。AIは膨大な量のデータに依存しているため、プライバシーやサイバーセキュリティ、アルゴリズムによる意思決定における潜在的な偏りに関する懸念が生じるのです。

AIによる金融包摂の強化

特に信頼と透明性が最も重要となる金融分野では、些細な過ちが前進を妨げる可能性があり、アカウンタビリティに関する疑問も浮上しています。AIの複雑性により、融資承認や投資推奨などの意思決定がどのように行われるのかが不明瞭になる可能性があるからです。

透明性のあるメカニズムがなければ、ユーザーが誤った情報や不完全な分析に惑わされるリスクがあり、サービスへのアクセスが難しい人々は依然として排除されたままになる可能性があります。

インドネシアのコード決済サービス企業、DANAでは、社員のアップスキリング(技能向上)を図り、AIを社内アプリケーションに統合することで、より包摂的かつキャッシュレスな社会の構築という同社のミッションを形にしています。

DANA engineer at work
作業中のDANAエンジニア Image: DANA

昨年、同社は「AI Everywhere(どこでもAI)」というイニシアチブを立ち上げ、事業と文化全体にAIをシームレスに織り込む取り組みを始めました。現在、同社の従業員の60%はエンジニアが占めており、詐欺の検知やリスク管理から、バーチャルアシスタントや金融ツールのパーソナライゼーションを通じたカスタマーサービスの改善に至るまで、さまざまな課題に取り組んでいます。

これらの分野でAIソリューションを改良し、展開することで、同社はユーザーデータの保護、詐欺の軽減、個々のニーズに合わせた商品の提供を目指しています。これにより、AIに対する信頼が高まり、幅広い普及が促進されるでしょう。

しかし、AIの潜在能力を最大限に引き出すには、一社内の取り組みだけでは不十分です。フィンテックのパイオニア、政策立案者、テクノロジープロバイダー、規制当局間の協力が不可欠なのです。このことから、インドネシアは、中央銀行主導の「インドネシア決済システムブループリント2025-2030」などのプログラムを通じて、有望な基盤を築いています。

この枠組みは、責任を持ってAIのイノベーションを取り入れ、安全で相互運用可能なデジタル金融システムを構築することを目指しています。国家レベルでは、同国のデジタル・コミュニケーション省が2023年に導入した政府のAI行動規範が、倫理的な課題への対応の緊急性を強調し、業界の慣行を社会の価値観と一致させることを要求しています。

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ユーザーデータの保護

並行して、インドネシアは勢いを増すデータ主導の時代に国民を守るための規制を策定し、個人データの保護を強化しています。これらの措置は、規制上の義務であるだけでなく、国民の信頼を構築する基盤となる柱でもあります。

AIが大量の機密情報を収集、処理するようになれば、サイバーセキュリティ侵害を防止し、AI主導のサービスに対する信頼を強化するための厳格なデータ管理が不可欠となります。

東南アジアにおけるフィンテック拡大を主導するインドネシアは、地域的な議論を形作る機会を提供しています。東南アジア諸国連合(ASEAN)の「デジタル経済枠組み協定」に関する議論の場などで、倫理的なAI導入を推進し、決済イノベーションと金融包摂におけるベストプラクティスを共有するためのプラットフォームを形成。

インドネシアの経験をこうした場に持ち込むことで、多様な文化や経済状況を踏まえた政策の検討につながると同時に、AI主導の成長は迅速かつ公平に実現できるのだと示すことができます。

しかし、課題は依然として残っています。多くの開発途上国は、イノベーションと消費者保護のバランス、データの主権、適応可能な規制枠組みの策定など、AIガバナンスの複雑性に直面しています。

インドネシアの文化的多様性、広大な地理的広がり、多様な所得水準は、新興市場が直面する一般的な課題を反映するものです。協調的かつ透明性のあるアプローチを主導することで、インドネシアは成長と説明責任の調和に向けた青写真を提示することができるでしょう。

インドネシアの歩みは、テクノロジーがいかに包摂的な成長に役立てられるかを示しています。

協調を通じた責任あるAI

AIの導入において優れたガバナンスと持続可能性を確保するには、政府機関、ビジネスリーダー、投資家、市民社会組織、消費者による幅広い連携が必要です。これには、継続的な政策の見直し、ステークホルダーの綿密な関与、AIの進化に伴う戦略の調整への意欲が含まれます。

AIをうまく管理することができれば、広範囲に散らばる島々に依然として存在する格差を縮小し、より公平な金融サービスを拡大し、機会を促進して、包摂的な経済発展を後押しすることが可能になるでしょう。

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