金融と通貨システム

中小企業の「ミッシングミドル」を解消する、新たなデジタル資金調達

タブレットを片手に、商品をチェックする女性。ASEANの企業は大半が中小企業であり、その多くが資金調達ギャップに直面しています。

ASEANの企業は大半が中小企業であり、その多くが資金調達ギャップに直面しています。 Image: Getty Images

Shuyin Tang
Chief Executive Officer and Co-Founder, Beacon Fund
Subhashini (Shuba) Chandran
Senior Vice-President, Asia-Pacific, Europe, Middle East and Africa, Mastercard Center for Inclusive Growth
  • 中小企業はグローバル経済の基盤であり、全企業の90%を占めています。
  • 東南アジア諸国連合(ASEANの企業の大半は中小企業で構成されており、その多くが成長能力を制限する資金調達ギャップに直面しています。
  • 分断された取り組みから連携した資本をもたらすコアリションに移行することで、ASEAN全域における包摂的な成長の実現が可能となるでしょう。

中小企業は成長と雇用創出を牽引し、全企業の90%、グローバルな雇用の半数以上を占めています。一方、中小企業の中には「ミッシングミドル(中間層の空白)」と呼ばれるセグメントが存在します。マイクロファイナンスには規模が大きすぎ、商業銀行にとっては規模が小さくリスクが高い、または非公式であるために、金融システムの隙間に落ち込んでしまう企業群です。

ASEAN地域では、こうした企業が全体の大半を占めており、今後もその数は増加し続けるでしょう。これらの企業は小規模なチームで運営され、担保や書類が不足していることが多く、いずれの金融商品にもアクセスできない状況にあります。その結果、持続的な資金調達ギャップが生じ、成長能力が制限されているのです。

中小企業の多様性がこの課題をさらに複雑にしています。例えば、フィリピンのマニラでオンライン販売を行う、デジタルファーストのファッションブランドは、セール前に在庫を増やすための短期運転資金を必要とするかもしれません。一方で、ベトナムの幼稚園チェーンは、新たな施設の建設資金として中期融資を必要とするかもしれません。

画一的なアプローチではこうした違いに対応できないため、取り組むべき課題は明確です。中小企業の現状に即した資金調達経路を設計し、すでに成果を示している手法を拡大する必要があるのです。

アクセス向上のためのデジタル包摂とフィンテックのイノベーション

デジタル技術の普及により、中小企業が迅速かつ低コストで融資を受けられる新たな道が開かれました。

フィンテック、エンベデッド・ファイナンス、デジタルウォレットがアクセスのパラダイムを変革しています。これらは書類や担保ではなく、取引や配送などのリアルタイムデータを活用し、信用力を評価します。これにより、多くの小規模企業で借入のコストと摩擦が軽減されています。

例えば、ブルネイの小売業者がPOSアプリで日々の売上データに基づき運転資金ローンを審査される様子、あるいはマニラのオンライン販売業者がECプラットフォームから直接請求書ファイナンスを利用できる様子を想像してみてください。これらのツールは、中小企業が重視する融資プロセスのスピード、予測可能性、透明性を高めます。

マスターカードのインクルーシブ成長センター(Mastercard Center for Inclusive Growth)によるグローバルな中小企業支援イニシアチブ、「Strive」プログラムは、デジタルツールと金融ツールを活用して中小企業の成長とレジリエンスの構築を支援。これらのツールが効果を発揮する方法と場所に関する実践的な知見を提供しています。

同イニシアチブは、インドネシアとベトナムにおいて、特に女性経営者や非正規セクターを含む、十分なサービスを受けていない中小企業へのエンベデッド・ファイナンスの拡大を支援しています。一方で、この経験から得られた重要な教訓が一つあります。それは、デジタルアクセスだけでは不十分だということです。多くの中小企業は、金融アクセスを長期的な活用とレジリエンスに変えるために、財務管理のトレーニングも必要としているからです。

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依然として残るデジタル金融の格差

もう一つの重要な気付きは、デジタル金融は完全な解決策ではないということです。デジタルに対応する用意の整った中小企業には有効ですが、今までデジタルツールを使用したことのない、接続環境が限られた、正式なシステムへの信頼度が低い企業にはあまり効果がありません。

製造業、教育、医療など、伝統的な産業分野にあるASEAN地域の多くの中小企業は、依然としてオフラインで事業を展開しています。こうした企業は、長期的な実績、信頼ある契約、物理的な資産を有していたとしても、フィンテックの導入に必要な継続的データストリームに欠けている場合が多いのです。

そこでは、関係性に基づく従来型の融資が依然として重要な役割を果たしています。ベトナム初の民間債務ファンド、ビーコン・ファンドは、この課題を日常的に目の当たりにしていました。同ファンドのポートフォリオ企業には実績と信頼性のある契約を有する中小企業が多く含まれますが、デジタル取引履歴が乏しいため、フィンテック企業からは見過ごされがちです。

また、これらの企業の資金需要は、フィンテック貸付業者が通常提供する小口融資額を上回る傾向にあります。その結果、事業基盤とデジタルモデルが前提とする入力データとの間に、常にギャップが生じているのです。

補完的役割としてのプライベートクレジット

プライベートクレジットは、このギャップを埋めることで、ASEAN地域の「ミッシングミドル」を支援することができます。デジタル融資とは異なり、プライベートクレジットは、返済スケジュールをキャッシュフローに合わせ、借り手の業界固有のニーズに適応させるなど、カスタマイズされた構造を可能にします。また、与信審査はその企業に対する深い理解に基づいており、データフィードや入力情報を補完します。

ただし、ASEAN地域では、プライベートクレジットはまだ発展途上段階にあります。大規模なプライベート・クレジット・ファンドは、地域ファンドもグローバルなファンドも中小企業を規模が小さすぎてリスクが高く、労力に見合う収益が得られないと見なしています。また、借り手側では、多くの事業主がプライベートクレジットという選択肢の存在すら認識していません。彼らにとって融資を受けることは、依然として銀行に行くことと同義なのです。

ビーコン・ファンドは、こうした双方の認識に挑んでいます。ポートフォリオに含まれる再生可能エネルギー企業の一例があります。その企業は、国営電力会社との長期契約に基づく予測可能なキャッシュフローという堅調な基盤を有しながらも、適切な資金調達に苦労していました。

プライベートクレジットがその架け橋となり、その企業は資金調達に成功。このような事例は、健全な中小企業でさえ従来の枠組みでは取り残される可能性があり、代替金融が重要である理由を示しています。こうした事例は、投資家に対してこの分野の潜在力を示すと同時に、事業主がプライベートクレジットを信頼できる選択肢として認識する一助となるでしょう。

包括的な資金調達エコシステムの構築

解決策は、単一の有効なモデルを選択することではなく、「ミッシングミドル」が直面する多様な課題に対応できるシステムを構築することにあります。ASEAN地域の中小企業は多様であり、その資金調達ソリューションも同様に多様でなければなりません。

デジタルツール、伝統的な金融、プライベートクレジットのような新興モデルを融合した効果的なシステムが求められています。それぞれが成長の異なる段階にある中小企業のニーズに応え、各モデルが最も強みを発揮する分野で機能するシステムです。

これには単なるイノベーション以上のものが必要です。銀行、フィンテック企業、ファンド、開発金融機関(DFI)、政策立案者、業界団体、地域商工会議所、能力構築非営利団体などのエコシステム構築主体間の連携が必要なのです。各主体はパズルのピースを一つずつ握っていますが、共通の目標、枠組み、データ基準、インセンティブを共有しない限り、システムは断片化したまま、十分な力を発揮できません。

また、進捗の定義も見直す必要があります。進捗とは、単に融資総額を増やすことではありません。適切な資本を、適切な条件で、適切なタイミングで、適切な事業に結び付けること。そして、中小企業が必要とする資金を、必要な時と場所で提供することです。

ASEAN地域の政策立案者や指導者たちは、その基盤づくりを始めています。フィリピンでは、中小企業向けの信用保証プログラムを導入しました。シンガポールとタイでは、ペイナウ(PayNow)プロンプトペイ(PromptPay)など、即時決済システムへの投資を進めています。また、DFIは銀行、投資家、現地仲介機関と連携したブレンデッド・ファイナンス・モデルを試験的に導入し、リスク分担手法の検証を進めています。

これらは前向きな一歩ではありますが、依然として分断された状態にあります。各施策間の連携が強化されない限り、その効果は限定的なものにとどまるでしょう。

今後の課題は、これらの取り組みを統合的に連携させるコアリションを構築することです。官民連携、エコシステムネットワーク、セクター横断的連携などを通じて、デジタルとアナログ、公と民間、主流と代替といった資本の連続体を横断する点と点を結ぶことが可能です。

中小企業が必要としているのは競合するモデルではなく、つながり合ったシステムです。その可能性は明らかです。縦割りの分断された取り組みから脱却し、補完的かつ連携した資本をもたらすコアリションへと移行すること。これにより「ミッシングミドル」の潜在力を解き放ち、ASEAN全域における包摂的成長を推進することができるのです。

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