未利用の自然資源を、低炭素ソリューションに

日本では竹が豊富にある一方、資源として十分に活用されていません。今、この状況を変えようとする新しい取り組みが始まっています。 Image: Unsplash/AndrésDallimonti
- 竹は、日用品や建築資材として日本で古くから幅広く利用されてきました。
- 竹林が早いペースで増え続ける一方、国産竹の利用は減少しています。
- 近年、政府や自治体、企業などが、より持続可能な社会の実現を支える素材として竹の可能性に注目しています。
かつて日用品や建築資材として身近に使われていた竹が、持続可能な社会を支える素材として新たな可能性を見せています。
成長が早く、丈夫で加工しやすい竹は、日本で古くから日用雑貨や建築、造園用資材、食材など、幅広い用途に使われてきました。竹林は貴重な資源を供給する場所であると同時に、里山の景観の一部としても親しまれていました。しかし、プラスチックを含む新たな素材の普及や住宅様式の変化、安価なタケノコの輸入増加などに伴い、国産竹の利用は減少しています。
一方、竹林の面積は拡大しています。林野庁の調査によると、竹林の面積は1986年の14.7万ヘクタールから、2022年には17.5万ヘクタールに増加しました。これは、ニューヨーク市の陸地面積の2倍以上に相当します。
その要因の一つと考えられているのが、竹林を管理してきた人々の高齢化や地方の過疎化などによる、放置される竹林の増加です。竹は成長が早く、適切な管理が行われないと、地下茎を伸ばして周辺の土地へと広がっていきます。長野県で行われた竹林面積の調査では、集落に人が住んでいた1977年から無居住化した2014年にかけて、竹林の面積が0.26ヘクタールから3.52ヘクタールへと13.54倍に拡大していたことが確認されています。
竹林は有用な素材を供給する一方、適切に管理されず放置されると、土砂災害のリスクを高め、生物多様性を脅かすなど、さまざまな環境課題をもたらします。こうした背景から、日本では竹の新たな活用方法を開発することで、持続可能な素材の利用と竹林の適切な管理を両立させようとする取り組みが広がっています。
表面温度を下げる竹の舗装材
温暖化が世界的に深刻化する中、注目を集めているのが竹を使った舗装材です。
福岡県にある日本乾溜工業が開発した「かぐやロード」は、竹の繊維に加え、酸化マグネシウムや真砂土・山砂、火山灰から作る保水材など、天然素材100%で構成された舗装材です。一般的なアスファルトの表面温度が真夏には60℃近くまで上昇することがある一方、この舗装材は表面温度を約15℃低く抑えられることが実験で示されています。
竹の繊維は、防草土のひび割れ抑制の結束材として活用されており、この舗装材の使用により、除草剤および除草作業の削減にもつながります。また、自然素材で作られているため、埋戻材や盛土材、裏込材として再利用することも可能です。
各地域の放置竹林から伐採した竹材を活用し、道路だけでなく、規制によりアスファルトを使用できない文化施設などでも、地域の素材を生かした活用が進んでいます。路面温度の上昇を抑えられることや循環型の製品であることから海外でも注目を集めており、日本乾溜工業は、2027年に製造量を倍増させる計画を掲げています。
脱炭素に貢献する家畜飼料
宮崎県の大和フロンティアは、放置竹林の伐採を無償で行い、伐採した竹から家畜用飼料や田畑用肥料となる「笹サイレージ」を製造しています。
粉砕した竹に糖蜜を混ぜて作る「笹サイレージ」は、乳酸菌を豊富に含み、牛や豚の腸内環境や土壌環境を整えます。これにより、乳量や肉量、野菜や米の収量が増加し、肉質の向上などが報告されています。家畜飼育では、従来の飼料の一部を笹サイレージに置き換えることで消化吸収が改善され、より少ない飼料で飼育できるようになったとの報告もあります。
日本の畜産における飼料の自給率は約20%で、大半を輸入に依存しています。従来の飼料の一部を笹サイレージで代替することで、竹林の適切な管理に加え、飼料コストの削減や輸入に伴うカーボンフットプリントの削減にも貢献することができます。
こうした取り組みを背景に、大和フロンティアは宮崎を中心に15の市町と包括連携協定を結び、地域と連携しながら事業を展開しています。
自治体も竹の活用を支援
放置竹林を抱える全国の自治体でも、地域の課題となっている竹の活用を促進する取り組みが進められています。
高知県では2026年に、竹の多様な活用法や取組事例を紹介するセミナーを開催。大分県では、竹林を適正な本数に整備するための伐竹や、簡易作業路の開設にかかる費用を助成しています。また、神戸市では大学や市民団体と連携し、竹を活用した除草効果の実証実験を進めています。
こうした事例は、自治体、企業、大学、市民団体などが連携することで、地域の課題となっている竹を有用な資源へと転換できる可能性を示しています。。
未利用の自然資源を持続可能なソリューションへ
世界経済フォーラムの白書によると、ビジネスリーダーの90%以上が、長期的な成功のためには、マテリアル分野における国際協力が極めて重要であると認識しています。
日本の竹をめぐる取り組みは、未利用となった自然資源を新たな価値へと転換することで、環境課題への対応と地域経済の活性化、イノベーションを同時に進められる可能性を示すものです。自然資源を単に「管理すべきもの」と捉えるのではなく、循環可能な資源として新たな市場を生み出すことが重要です。
竹の活用をめぐる日本の事例を一つのモデルとして共有することで、自然環境の保全と低炭素な産業の発展、そしてレジリエントな地域社会の実現に向けた取り組みを、日本から世界へと広げていくことができるでしょう。
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