2026年の「トリプルCOP」が、ビジネスにもたらす意味とは

2026年11月、トルコのアンタルヤで国連気候変動枠組条約第31回締約国会議(COP31)が開催されます。8月にはモンゴルで国連砂漠化対処条約第17回締約国会議(COP17)が、10月にはアルメニアで生物多様性条約第17回締約国会議(COP17)が開催され、COP 31は2026年という「トリプルCOP」の年を締めくくる会議となります。 Image: Unsplash/AntRozetsky
- 気候変動、生物多様性、砂漠化という3つのリオ条約はそれぞれ2年ごとに締約国会議(COP)を開催しており、開催年は「トリプルCOP」年と呼ばれます。
- 2年に一度という開催スケジュールは、各国政府、企業、市民社会団体などに、この相互に関連する3つの課題間の相乗効果を最大限に活用する機会をもたらします。
- 2026年の目標は、政策シグナル、投資経路、市場インセンティブといった主要分野において、官民連携をさらに強化することです。
現在の経済・社会環境は、地政学的分断、財政のひっ迫、生活コストの上昇、サプライチェーンの混乱など、複雑さを増すグローバルな状況に直面しています。同時に、気候変動、生物多様性の喪失、土地の劣化が、食料供給、水資源、インフラ、医療費、労働生産性に対して、相互に影響を及ぼしながら負の影響を与えています。その結果、経済成長、財政状況、開発成果が弱体化する事態が生じています。
企業にとっても、これらの影響は現実的な問題です。資産価値の低下、原材料費や保険料の上昇、熱波による従業員の健康と生産性の低下などが発生し、最終的に収益性と成長見通しに影響が波及。また、これらの相互に関連する課題は、特に脆弱な立場にある人々にとってより深刻であり、結果として格差の拡大と国内外の不安定性リスクの増大を招いています。このような状況下で、強力なエルニーニョの発生が予想されています。
経済的損失を具体的な数字で示すと、土地の劣化、砂漠化、干ばつによるグローバル経済コストは年間約8,780億ドルと推定。中でも、干ばつによる損失額は年間最大7.5%の割合で増加する見込みです。今世紀に入ってから、気候変動に関連する災害による被害額は3.6兆ドルに達しており、年間5,770億ドル相当の農作物生産が花粉媒介者の減少リスクにさらされています。また、世界の放牧地は最大50%が劣化しており、これはグローバルな食料供給量の6分の1と、膨大な量の炭素貯蔵資源を危険にさらすことになります。
地政学的分断の拡大、気候変動による衝撃、生物多様性の喪失、土地の劣化といった世界的な傾向に直面する中で、これまで以上に国際的な連携が求められています。各国政府、企業、地域社会が単独で取り組むよりも、協力して取り組む方がこれらの脅威をより効果的に管理できるためです。まさにこのような理由から、国連が主導する協力体制は揺るぎない姿勢を保ち、確かな進展を遂げています。
2026年は「トリプルCOP」の年
気候変動、生物多様性、砂漠化に関するリオ条約は30年以上前に制定され、世界の繁栄を支える自然システムに関する国際協力の中核的な枠組みとして、今も機能し続けています。この条約では、同じ年に各条約の締約国会議(COP)が開催される、「トリプルCOP」と呼ばれる特別な年が設けられています。
2026年のトリプルCOPは、8月にモンゴルで開催された国連砂漠化対処条約(UNCCD)第17回締約国会議(COP17)で始まり、10月にアルメニアで開催される生物多様性条約(CBD)第17回締約国会議(COP17)、そして11月にトルコで開催される国連気候変動枠組条約(UNFCCC)第31回締約国会議(COP31)で幕を閉じます。
この2年に一度の同時開催は、3つの条約の相乗効果を最大限に活用する絶好の機会となっています。
今年、新たにリオ条約の議長国を務める国々は、これらの相乗効果を最優先課題として明確に位置付けています。これは各多国間プロセス内だけでなく、地方自治体、企業、投資家、シンクタンク、慈善団体、市民社会などの非締約主体との連携においても同様です。なぜなら、各国政府はリオ条約の正式な締約国として約束事項の交渉や枠組みの構築を行う主体ではあっても、COPの成果の実施と実現は、企業、投資家、革新者を含む社会のあらゆるセクターにおいて行われるものだからです。
今年開催される3つのCOPすべてにおいて、公式のビジネス関連フォーラムが設置されています。具体的には、UNCCD COP17における「Business4Landフォーラム」(8月24日)、CBD COP17における「ビジネスフォーラム」(10月25日)、UNFCCC COP31における「ビジネス&投資サミット」(11月12、13日)です。さらに、これらのテーマ別優先事項に織り込まれた形で、企業との連携目標も設定されています。
特に今年は、政策シグナル、投資経路、市場インセンティブといった重要分野において、官民連携を拡大、深化させる機会と必要性が高まっています。
グリーン経済の可能性
企業はこれらの変革における共同設計者として、テクノロジーの普及、資本の動員、サプライチェーンの適応、雇用とスキルの創出、不可欠な製品とサービスの提供を担っています。その一つとして、世界のグリーン経済規模は年間5兆ドルを突破しており、2030年までに7兆ドルを超える見込みであり、グリーン分野の収益は従来の収益に比べて2倍の速度で成長しています。
グリーン市場からの収益が総収益の大部分を占める企業は、評価価値のプレミアムを獲得しており、自然保護と気候変動対策の両方に統合的に取り組むソリューションを積極的に活用しています。主な事例は、次のとおりです。
- アグロフォレストリー(森林農業)は土地の生産性を最大化し、農地転換を抑制しつつ、農家や農業関連企業の収益源を多様化します。
- バッテリーリサイクルは鉱物資源の採掘圧力を軽減すると同時に、貴重な材料を回収することによりエネルギー転換を支援します。
- 産業用水管理システムを導入すれば、リサイクルと再利用を通じて淡水の消費量と処理量を削減することが可能です。
- 世界中で6,000万人の雇用を創出している自然を基盤としたソリューションは、2030年までにさらに3,200万人分の雇用を創出する可能性があります。
- パリ協定第6条に基づく炭素市場では、検証済みの緩和効果に向けて民間資金を誘導する動きが始まっています。
- 持続可能な放牧地管理と再生事業は、食料・繊維・畜産物のバリューチェーンを強化すると同時に、水資源の確保、生物多様性の保全、気候変動への耐性向上、長期的な生産性の向上に貢献します。
- 耐性品種の種子からより効率的な水管理手法に至るまで、干ばつ耐性を食料システムに組み込むことは、頻発化、深刻化する干ばつから収量、農家の収入、地域社会の生計手段、食料サプライチェーンを保護する上で有効です。
他方で、自然破壊型の投資は、依然としてネイチャーポジティブ投資の30倍に達しています。2023年において、企業はネイチャーネガティブな活動に4.9兆ドルを投資している一方、自然に基づくソリューションにはわずか230億ドルしか投じられていません。
「トリプルCOP」は、流れを変える重要なチャンスです。
閣僚レベルから経営陣レベルまでの政策統合
こうした状況の中、今後の方向性がより明確になりつつあります。各国は産業戦略や規制枠組みに環境配慮を組み込む動きを促進。カリ基金や干ばつレジリエンス投資ファシリティ(Drought Resilience Investment Facility)といった革新的な仕組みが、気候変動、生物多様性、干ばつ耐性に関する新たな金融時代を切り開いています。また、経済全体を対象としたアプローチが政策立案のあらゆる側面に浸透し、気候変動、生物多様性、土地に関する課題が包括的に扱われるようになってきています。
G7首脳が最近認めたように、干ばつや土地劣化は平和と安全に対するリスクの増大要因であり、環境の悪化が経済の安定や市場環境、企業の事業環境に大きな影響を及ぼしているという認識が広がっています。
これに伴い、各国政府の中には、もはや気候、土地、生物多様性に関する対策を個別の課題として扱うのではなく、エネルギー、健康、インフラ、雇用、金融など、複数の閣僚分野を横断する形で取り組む例も出ています。そういった国の政府は、人々が日常生活の中で気候変動対策の遅れによる影響を実感していることを理解しています。また、ビジネスリーダーたちから、クリーンエネルギーへの移行、循環型経済の推進、自然資本の価値評価といったグローバルな経済転換がもたらす膨大なビジネスチャンスについての意見も収集しています。
ただし、各国政府はより一貫性のある直接的な形で、意欲的な企業から、提供可能な多大なメリットと、回避可能かつ回避すべき重大なコストについて、より頻繁に意見を聞く必要があります。政策の一貫性の欠如、投資判断を導くシグナルの不明確さ、そして意識のギャップが依然として存在するため、多くの機会が未活用のまま放置されているか、有効な対策が講じられていないのが現状だからです。
同様に、気候変動、生物多様性、土地に関する課題が企業業績にますます大きな影響を及ぼす中、最も成功している企業では、これらの課題を単なるサステナビリティ担当役員の責任範囲とせず、あらゆる事業分野における中核的な経営課題として捉え、業績評価指標を報酬体系や説明責任と明確に連動させる取り組みが進められています。このような動きは先進企業ですでに定着しつつあり、より多くの企業がこの実践方法を採用するべきであるという主張は説得力を持っています。
2026年は「トリプルCOP」の年であり、企業にとっては学び、関与し、取り組みを連携させ、目標から行動へと移行するグローバルな動きの一翼を担う絶好の機会となるでしょう。
モンゴルのウランバートルでは、企業は民間主導のプラットフォーム「Business4Land(ビジネス・フォー・ランド)」を通じて、土地の再生、健全な土壌への投資、干ばつ耐性強化を事業運営やバリューチェーンに統合することができます。これにより、2030年までに15億ヘクタールの劣化した土地を回復させるという目標の達成に貢献することが可能です。また、アルメニアのエレバンでは、企業を含むすべてのステークホルダーが関与することを目標に、2030年を期限とする地球規模の生物多様性枠組みの実施を加速させることを目指すと同時に、2050年を目標とする地球規模の目標達成に向け、自然と調和した世界というビジョンの実現を図っています。トルコのアンタルヤでは、締約国が推進する適応策、資金調達、農業分野の課題が、野心的な目標を具体的な行動に移す新たな機会となるでしょう。
分断と混乱の時代において、気候、自然、土地に関する取り組みを、レジリエンス、競争力、繁栄に向けた共通の課題へと発展させることが可能です。ただし、それには各国政府や企業が2026年を単なる合意交渉の年にするだけでなく、その実現に必要な市場環境の整備、政策の枠組みの構築、制度設計、パートナーシップを共に創り上げる機会として活用することが不可欠です。
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