ウェルビーイングとメンタルヘルス

職場のウェルビーイングを競争優位の証へ変える、5つの選択

5つのカラフルなリングのイメージ。リーダーたちは、戦略的に選択し、職場におけるウェルビーイングを競争上の優位性へと転換することができます。

リーダーたちは、戦略的に選択し、職場におけるウェルビーイングを競争上の優位性へと転換することができます。 Image: Unsplash/boliviaintelligent

Jacqueline Brassey
Director of Healthy Workforces and Director of Research Science, McKinsey Health Institute
Jahanara Rahemtulla
Lead, Health and Healthcare, World Economic Forum
本稿は、以下センター (部門)の一部です。 ヘルス、ヘルスケア
  • 競争力を維持するには、戦略と持続可能な人的パフォーマンスの両方が不可欠です。
  • AIの急速な進展、人口動態の変化、バーンアウトの増加という状況の中、職場におけるウェルビーイング(幸福)が経済を左右する重要な変数として浮上。ただし、競争上の優位性としては評価されないままとなっています。
  • 活気ある職場は、意図的な行動を通じて生まれます。リーダーたちは、ウェルビーイングを競争上の優位性へと転換するために、5つの戦略的選択を行うことができます。

従業員のウェルビーイング(幸福)の向上は、年間最大11.7兆ドルもの経済的価値を左右する、未開拓の大きな経済的機会です。一方、多くの組織は、ウェルビーイングを測定可能なビジネス成果へと結び付けられずにいます。

成功している組織の特徴を理解するため、世界経済フォーラムはマッキンゼー・ヘルス・インスティテュートの協力を得て、高い業績を上げる組織のリーダーたちに、持続可能かつ活気ある職場を生み出す方法についてインタビューを行いました。

高い業績と従業員のウェルビーイングは二者択一であるという誤解が根強くありますが、エビデンスはそうではないことを示しています。オックスフォード大学の研究によると、従業員のウェルビーイングと財務実績の間に、直接的な相関があることが示されているからです。

つまり、高い業績と従業員のウェルビーイングを両立させられるか、そのどちらも得られない結果に終わるかになる可能性があるのです。スタンダードチャータード銀行の最高戦略・人材責任者であるタヌジ・カピラシュラミ氏は、次のように述べています。「高い業績がウェルビーイングの面から持続不可能になることも、低い業績でウェルビーイングが高くなることもあり得ます。いずれも全体像を十分に示すものではありません」。

解決策は、人材を通じて業績を上げることにあります。常に優れた業績を上げている組織は、成果が「仕事の設計方法」「人材への支援体制」「業績の評価方法」を通じて生み出されることを理解しているのです。

従業員が活き活きと働けば、業績は向上します。業績が向上すれば、ウェルビーイングへの投資は強化されます。この好循環が、ウェルビーイングを競争優位性へと変えるのです。

マッキンゼー・アンド・カンパニーのグローバル・コリーグ・ケア・チームのリーダーであるグレッチェン・シャイドラー氏は、次のように述べています。「満足度、目的意識、つながり、ウェルビーイングのレベルが最も高いチームが、クライアントから最も高い評価を得ています」。

ウェルビーイングを競争優位性に変える5つの選択

優れたリーダーたちへのインタビューを通じて、ウェルビーイングを競争優位性に変えるために役立つ次の5つの選択が明らかになりました。

1. ウェルビーイングを業績と同様に管理する

人材を通じて成果を上げる組織は、財務や業務のパフォーマンスと同様に、ウェルビーイングの指標に対しても厳格な基準を適用しています。「ウェルビーイングを真剣に考えるなら、それを測定し、追跡し、組織のリーダーに対する期待に組み込まなければなりません」と、カピラシュラミ氏は述べています。

指標は医療費にとどまらず、離職率、病欠、エンゲージメント、生産性といったビジネス成果まで含めるべきであり、それによって重点的な投資が可能になります。「至る所に資金をばら撒くようなことはしたくありません」と同氏。「最大の効果が見込める分野に、的を絞った対策を講じる必要があります」。

これには新しいシステムは必要ありません。多くの組織では、業績評価時に、チームのウェルビーイングや職場環境への貢献度を含め、関連データをすでに収集しています。

「すべての従業員が、同僚やリーダーの行動について、彼らが健全な環境を作り出しているかどうかを含め、フィードバックを提供することができます」とシャイドラー氏は説明します。

2.「働き方」そのものを健全にする

ウェルビーイングを提供するのは、単独のプログラムではあり得ません。成功している組織は、ウェルビーイングを仕事の進め方に組み込み、職務設計、ワークフロー、チームの規範作りに取り組んでいます。これには、業務の現実に基づいた一連の取り組みが必要です。

「私たちが築きたいのは、ウェルビーイングの『規律』です」とカピラシュラミ氏は述べています。「規律」とは、一貫性、優先順位付け、勤務スケジュール、育児や介護、分散型チーム、業務量といった制約との整合性を意味します。

例えば、同銀行の柔軟な働き方のアプローチでは、社員とそのマネージャーが、どこで、いつ、どのように働くかを合意できるようになっています。このように、柔軟性を業務の規範に組み込むことにより、ウェルビーイングは業績の一部となるでしょう。

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3. 安全を業績に組み込む

業績が持続可能であるかどうかは、従業員が身体的、心理的に安全だと感じるかどうかで決まります。現場において、身体的な安全とは、危険の最小化とスマートなワークフロー設計から始まります。

例えば、米国の電力・ガス持株会社、サザン・カンパニーではデジタルツインを活用し、物理的な空間を遠隔から評価。これにより、チームはメンテナンスや安全上のリスクをより正確かつ効率的に特定することができます。

心理的安全性、つまり恐れずに意見を述べ、懸念を提起し、助けを求めることができる能力も、同様に重要です。

「リーダーたちは、心理的安全性について語ることにより、それを生み出すのではありません。真摯な問いを投げかけ、その回答に注意深く耳を傾けることが、心理的安全性を実現するのです」と、ハーバード大学の研究者、エイミー・エドモンドソン氏は述べています。「リーダーたちが他者の視点からの意見を求める時は、声を上げることよりも沈黙する方が難しくなるようにしています」。

異論を奨励できない組織は、現状維持に凝り固まってしまいます。従業員が不安を感じると、エネルギーは自己防衛へ向かいます。一方、安全を感じれば、業績が向上し、学習が進み、率直な発言が増加するのです。

「私たちには皆、個人的な悩みがあります」と、サザン・カンパニーの会長兼CEOであるクリス・ウォマック氏は語ります。「人々が支えられていると感じられる環境を作ることが不可欠です」。

心理的安全性とは、挑戦を避けることではありません。あらゆるレベルのリーダーたちには、適応力と共感的なリーダーシップスキルが求められます。「リーダーたちに対しては、部下の健康状態の悪化の兆候に気付き、対話の場を設け、適切な支援につなげるよう指導しています」と、シャイドラー氏は述べています。

安全は「ソフト」な課題ではなく、業績を支える基盤そのものです。「私たちは、トレーニング、学習、プラットフォームといった支援体制を整え、従業員が必要な時に、必要な方法で助けを得られると感じられるようにしています」とカピラシュラミ氏は述べています。

安全は、偶然に任せるのではなく、システムに組み込まれていなければなりません。

4. 率先して規律を示し、設計によって強化する

リーダーたちの行動は、その言葉と同じくらい重要です。「私たちは、リーダーたちに模範として求める行動について、明確な期待を定めています」とカピラシュラミ氏は述べています。

リーダーたちが模範として健全な行動を示す時、つまり集中と回復のバランスを取り、弱さをさらけ出し、利用可能な支援を活用する時に、組織全体に規範が形成されるのです。

マッキンゼー・アンド・カンパニーのグローバル・マネージング・パートナー、ボブ・スターンフェルズ氏は、リーダーとは「その職業の頂点」に立つエリートアスリートのような存在であると指摘します。「最高のメンタルパフォーマンスが求められ、適応力とレジリエンスは不可欠です」。

ロールモデルになるだけでは不十分です。リーダーたちは、意図的な設計を通じて規範を強化し、空間、ワークフロー、インセンティブを形成し、ウェルビーイングを高める選択が個人の意志力に依存するのではなく、実践可能であり、支援され、報われるようにしなければなりません。

5. AIをウェルビーイングのパートナーとして位置付ける

AIが働き方を再構築する中、リーダーはテクノロジーがプレッシャーを強めるのか、それとも軽減するのかを判断しなければなりません。慎重に導入されれば、AIは事務的な負担を軽減し、意思決定を効率化し、より有意義な仕事のための時間を生み出し、ウェルビーイングを直接的に支えることができるでしょう。

リーダーたちは、AIの完全な効果がまだ完全には明らかになっていない段階でも、AIを導入し、その影響を従業員に伝える必要があります。AIを業績とウェルビーイングを向上させるためのパートナーとして位置付けることにより、従業員は「テクノロジーに置き換えられる」のではなく「テクノロジーによって能力が引き出される」と感じ、AIの受け入れが促進されます。ウォマック氏が言うように、「AIは脅威ではなく、私たちがより良くなるための助けとなる存在」です。

自律性、業務負荷、自己効力感といった従業員の健康を左右する要因とAIの導入を整合させることにより、組織は生産性を向上させると同時に、ウェルビーイングを強化することができるでしょう。これには、長期的な業績向上を牽引する「脳の資本」、つまり脳の健康と脳に関するスキルの組み合わせという、両方への投資が必要です。

クリス・ウォマック氏、グレッチェン・シュナイダー氏、タヌジ・カピラシュラミ氏の顔写真とプロフィール
(左から)クリス・ウォマック氏、グレッチェン・シュナイダー氏、タヌジ・カピラシュラミ氏。 Image: McKinsey Health Institute

ウェルビーイングはスローガンではなく、リーダーシップから生まれる

リーダーたちが従業員のウェルビーイングに取り組む動機は様々かもしれません。ただし、そのことが行動を遅らせる理由になってはなりません。重要な点は、ウェルビーイングを成果や報酬と結び付けることです。「リーダーたちの動機が目的であれ、成果であれ、インセンティブであれ、ウェルビーイングを業績や報酬と結び付けることが、行動と責任感を促すのです」とカピラシュラミ氏は述べています。

ウォマック氏は「従業員が私たちの最大の資産であるならば、それは給与や福利厚生だけでなく、私たちが築く企業風土の中にも示さなければなりません」と説明します。

活気ある職場は、測定基準、規律ある業務設計、安全、ロールモデル、そして責任あるテクノロジーの選択を積極的に行うことによって築かれます。ウェルビーイングが、業績の定義、達成、維持の方法に組み込まれる時に、人と業績の両方が繁栄するでしょう。

本寄稿文に協力をいただいた、アレックス・ヴォート、エイミー・エドモンドソン、アンディ・ムース、バーバラ・ジェフリー、ダニエル・ディステファノ、ダルシニ・マハデヴィア、エリザベス・ニューマン、エリカ・コー、ルーシー・ペレス、ソフィー・メルケルバッハの各氏に感謝の意を表します。

また、クリス・ウォマック、グレッチェン・シャイドラー、タヌジ・カピラシュラミの各氏にも深く感謝いたします。

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