日本のグリーン建材分野における、イノベーションとレジリエンス強化

日本では政府の支援により、グリーン建材の開発が加速しています。 Image: REUTERS
- 日本における建築物のライフサイクル全体での炭素排出量は、国内の温室効果ガス排出量の約4割を占めると推定されています。
- 省エネルギー性能の高い建材は、脱炭素化に寄与するだけでなく、光熱費の削減や建物利用者の室内環境の快適性向上にもつながります。
- こうした中、政府による省エネ建築への支援が、この分野における建材の技術革新と開発の進展を後押ししています。
気候変動が進行する中、建築物に使用される建材は、脱炭素化とエネルギー効率向上の両面において重要な役割を担っています。
2026年に公表されたデータによると、日本における建築物のライフサイクルカーボン(資材製造、施工、運用、解体までを含む二酸化炭素排出量)は、国全体の温暖化ガス排出量の約4割を占めると推定されています。このため、建築物分野の脱炭素化は喫緊の課題となっています。加えて、省エネ性能の高い建材は、光熱費の削減や室内環境の快適性向上にも寄与し、利用者にとっても大きな価値をもたらします。
こうした背景のもと、日本ではグリーン建材分野におけるイノベーションが急速に進展しています。市場規模はすでに18億ドルに達しており、2026年から2034年にかけて年平均成長率11.83%で拡大し、48億ドル規模に成長すると予測されています。また、二酸化炭素排出削減に寄与する炭素固定型コンクリートや高性能遮熱塗料に加え、太陽光発電ガラスのように再生可能エネルギーを創出する先進建材の開発も進んでいます。
政策面でもこうした動きが加速しています。2025年4月からは、新築住宅などに対する省エネ基準への適合が義務化され、断熱性能や設備効率の確保が求められるようになりました。さらに政府は、新築および既存住宅の省エネ化に補助制度を拡充するとともに、グリーンイノベーション基金を通じ、研究開発から社会実装までを一体的に支援しています。
低炭素コンクリートの進展
コンクリート分野では、製造時の二酸化炭素排出削減や炭素固定、さらには機能性の向上を軸とした技術開発が進んでいます。2026年3月の地球環境大賞では、こうした取り組みの中から複数の革新的技術が評価されました。
日本ヒュームの低炭素型高機能コンクリート「e-CON」は、従来比でCO₂排出を約80%削減し、主成分の90%以上に副産物を活用しています。加えて、高い耐塩害性や耐酸性を備え、インフラ分野での活用が期待されています。花王による「リバウンド低減技術」は、吹付施工時の材料ロスを削減するもので、環境負荷と施工負担の双方を軽減します。
また、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)では、55の企業・大学・研究機関がコンソーシアム「CUCO(クーコ)」を創設。「増え続けるCO2をストップさせて、ゼロ以下に減らそう」を目標に、セメント低減型コンクリート、二酸化炭素を固定する、あるいは固定化したコンクリートの3つのコンクリート技術を中心に開発を進めています。
高性能な遮熱・断熱塗料
気温上昇への対応として、遮熱・断熱性能を備えた塗料の開発も進んでいます。関西ペイントは、遮熱と断熱を組み合わせた「アレスダイナミックECO断熱遮熱工法」を開発。遮熱塗料が赤外線を反射しきれずに熱を発しても、断熱効果のある塗料により室内の温度上昇を防ぐことができ、従来の工法に比べて表面温度を15℃、裏面温度を21.4℃低減し、建物の冷房負荷を大幅に抑制します。
建材によるエネルギー創出
建材は、エネルギー消費を抑えるだけでなく、エネルギーを創出する役割も担い始めています。特に、軽量化かつ柔軟な特性を持つペロブスカイト太陽電池は、設置場所の可能性を大きく広げ、建造物への実装が進んでいます。
「臨海副都心カーボンニュートラル戦略」を掲げる東京都では、企業と連携した実装検証を2025年8月に開始しました。都の湾岸地域に位置するテレコムセンタービルにフィルム型モジュールの次世代型ソーラーセルを活用した太陽光発電内窓を設置し、創エネ効果等の検証が進められています。
また、名古屋電機工業は2025年12月より、道路情報板および道路監視カメラにカルコパイライト太陽電池を活用する国内初の実証実験を開始しました。カルコパイライト太陽電池はペロブスカイト太陽電池と同様に軽量かつ薄型で柔軟性に優れ、将来的にはペロブスカイト太陽電池とのタンデム(積層)化による高効率化が期待されています。
レジリエンス強化に向けて
建材分野におけるグリーンソリューションの拡大は、気候変動が加速する中で、レジリエンスを高めるための実践的かつスケーラブルな手段です。こうした取り組みは、日本が参加するファースト・ムーバーズ・コアリションの理念とも一致しており、低炭素材料の需要創出と市場形成を通じて、さらなる変革を促すことが期待されています。
加えて、建材の脱炭素化は単なる環境対策にとどまらず、エネルギーコストの抑制や都市の快適性向上、防災性能の強化といった多面的な価値を生み出します。企業による技術革新と政府による制度設計が連動することで、こうしたソリューションの社会実装はさらに加速するでしょう。建築分野からの変革は、持続可能で強靭な社会の構築に向けた重要な鍵となります。
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