経済成長

画期的なデジタル経済協定に向けた、ASEANの大きな一歩

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2025年10月24日、マレーシアのクアラルンプールで開催された第47回ASEAN首脳会議を前に、ASEANのロゴマークの横で記念写真を撮る人々。

ASEANデジタル経済枠組み協定(DEFA)はASEANの多様なデジタル環境の橋渡しを目指します。 Image: REUTERS/Chalinee Thirasupa

Spencer Feingold
Digital Editor, World Economic Forum LLC
Anne-Katrin Pfister
Project Lead, Asia-Pacific Digital Trade, Monitoring and Evaluation, World Economic Forum
  • 東南アジア諸国は、デジタル経済ガバナンスに関する世界初の地域協定を確固たるものにする新たな一歩を踏み出しました。
  • 2026年に締結予定の「東南アジア諸国連合(ASEAN)デジタル経済枠組み協定(DEFA)」は、2030年までに2兆ドル規模に達する可能性のあるデジタル経済の強化を目指しています。
  • 世界経済フォーラムの「ASEANデジタル経済協定リーダーシップ」プロジェクトは、DEFA交渉プロセス開始の当初から支援を行っています。

東南アジア諸国は、世界初の包括的な地域デジタル経済協定に向けた交渉で重要な節目に達し、約6億8,000万人の市場を支えるデジタル統合の基盤を整えました。

東南アジア諸国連合(ASEAN)は、2025年10月にマレーシアのクアラルンプールで開催された首脳会合において、デジタル経済枠組み協定(DEFA)交渉に関する「実質的な合意」に達したことを発表。このことは、14回の交渉ラウンドを含む2年以上の協議を経て、ASEANが大きな一歩を踏み出したことを意味します。

ASEANのDEFAは、デジタル経済のガバナンスに特化した、地域横断的な法的拘束力のある世界初の協定となる見込みです。広範な貿易協定に組み込まれたデジタル条項とは異なり、同協定はデジタル貿易ルールの調和、信頼性の高い越境データ流通の実現、ASEAN域内におけるペーパーレス取引、電子商取引、サイバーセキュリティ、デジタル決済のための一貫した規制確立を目的とした専門の枠組みである点で際立っています。

2兆ドル規模のデジタル未来

ASEANのデジタル経済が急速に成長を続ける中、経済的利害関係は極めて重要です。現在約3,000億ドルと評価される同経済圏は、2030年までに1兆ドルに達すると見込まれており、DEFAの発効によりこの数字が2兆ドルへと倍増する可能性があります。

2024年に900億ドルの評価額で地域デジタル経済を牽引するインドネシアは、2030年までにデジタル経済が3倍の3,600億ドルに拡大。そのうち電子商取引が1,500億ドルを占めると報じられています。

また、2023年のASEANにおけるベンチャーキャピタル取引の71%がデジタル経済関連であり、これはグローバル平均よりも11%高い値です。一方、同地域における通信、データ処理、ホスティングサービス分野への年間投資額は、過去10年間で2015年の7億7,700万ドルから2024年には44億ドルへと、約6倍に増加しています。

分断から統合へ

DEFAは、地域の多様なデジタル環境を統合し、経済圏を結束させてデジタル金融とインフラを共同で推進することを目指しています。

ASEANのカオ・キムホン事務総長は、5月のフォーラム・ストーリーズ寄稿文で次のように述べています。「共通のデジタル規則と基準が欠如した場合、多様性が分断を生むリスクがあります。この包括的なアプローチは、規制の差分を縮小し、取引コストを削減してASEANとそのパートナーに利益をもたらす、シームレスで相互運用可能なデジタルエコシステムを構築します」。

2025年10月24日、マレーシアのクアラルンプールにて、第47回ASEAN首脳会議を前に、ASEANのロゴマーク付近に集まる人々
Image: REUTERS/Chalinee Thirasupa

同協定はインクルージョンを核とし、各国政府、ビジネスリーダー、学術研究者、中小零細企業(MSME)との広範な協議を含む対話を通じて策定。MSMEがASEAN企業の少なくとも97%を占め、雇用の85%を担う点を考慮すると、この参加型アプローチは極めて重要だと当局は述べています。

デジタル規制の簡素化と電子商取引へのアクセス改善により、同協定はMSMEが国境を越えて拡大し、地域のバリューチェーンに統合され、グローバルに競争できるようにすることを目指します。また、女性起業家、地方のイノベーター、若者が主導するスタートアップのための道筋を創出し、技能開発、人材の流動性、デジタルリテラシーを支援する規定も設けられました。

公式声明は、次のように述べています。「本協定の条項は、デジタル化の恩恵をすべての人々が享受できるものにすると同時に、連携の深化と競争力強化に向かうASEANの共同の取り組みを体現するものです。本協定を通じて、ASEANは域内における越境デジタル統合と相互運用性というメリットを十二分に活用することができるでしょう」。

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デジタル時代のモデル

世界経済フォーラムは、「 ASEANデジタル経済協定リーダーシップ ( ASEAN Digital Economy Agreement Leadership (DEAL))」プロジェクトを通じ、同協定の交渉プロセス開始当初から支援を行ってきました。

同プロジェクトでは、電子商取引とデジタル貿易に関する実質的な約束事項を含む数十のデジタル経済協定と自由貿易協定を、条項ごとに一元的に閲覧することのできる、オンライン保管庫を構築。このプラットフォームで、同協定がASEAN諸国にとってどのような意義を持つかを詳細に解説し、詳細な法的マッピングや比較分析を可能にすることで、交渉担当者による証拠に基づいた意思決定を支援しています。

さらに、複数のビジネス対話やステークホルダー協議を主催し、同協定が政策立案者の優先事項だけでなく、地域経済成長を牽引する企業や消費者の視点を確実に反映したものとなるように支援。また、ASEANのデジタル経済に関する年次企業調査を通じて、ASEAN加盟国の交渉担当者向けに、デジタル経済に関連した主要なトピックや動向に関する知見と一次データを提供しています。

ASEANは声明の中で、DEFAが2026年末までに署名される見込みであると述べ、同協定の「真の恩恵は、完全な締結、適時の署名、そして効果的な実施によってのみ実現される」としています。

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