仕事と働き方の未来

データが示す、Z世代が仕事に求める成長と挑戦の条件

新たなデータが、Z世代がグローバルな労働市場に参入する際に直面する課題を明らかにしました。

新たなデータが、Z世代がグローバルな労働市場に参入する際に直面する課題を明らかにしました。 Image: REUTERS/Gonzalo Fuentes

Sander van't Noordende
CEO, Randstad
本稿は、以下センター (部門)の一部です。 ニューエコノミーとソサエティ
  • 新卒雇用市場の現状と過去の世代と比較したZ世代の行動が、新たなデータで明らかになりました。
  • 2024年1月以降、初級職の求人数は29パーセントポイント減少しています。
  • Z世代は転職の頻度は高いものの、高い意欲に満ちています。

初めての就職は、今も昔も困難な挑戦です。これに加え、1990年代後半から2010年代前半までに生まれ、この旅路を歩み始めたばかりのZ世代は、キャリアのスタートが大きな変革期に合致。職位への競争激化、技術革新、不透明な成長経路といった課題に直面しています。

ランドスタッド社の最新調査(11,250名の人材調査と1億2,600万件のグローバルな求人分析に基づく)によると、人材不足が深刻化する一方で、業界を問わず初級職の求人数は着実に減少しています。

この複雑な職場環境は根本的な矛盾を生み出しています。Z世代は意欲も能力も備えていながら、自らの立ち位置を確立できずにいるのです。

データは、決意と方向性の喪失を併せ持つ世代の姿を描き出しています。雇用主が若年労働者を惹きつけ、定着させるためには、キャリアパスの再構築が必要となるでしょう。

初級職の求人数は深刻な減少傾向にあります。
初級職の求人数は深刻な減少傾向にあります。 Image: Randstad

自信の欠如と初級職機会の減少

Z世代の人材が直面する課題の中心は、求人数の減少にあります。分析によると2024年1月以降、グローバルな初級職の求人数は29パーセントポイント減少しました。

当然ながら、競争は激化。これにより、Z世代の人材は長期的な目標に合わない機会を受け入れる傾向が見られます。実際に、約半数が現在の職務は理想のキャリアと一致しないと回答しています。

また、Z世代は、キャリアの同じ段階にある年長世代と比較して、離職が早い傾向にあります。キャリア初期5年間の平均在職期間はわずか1.1年であり、1980年代前半から1996年頃までに生まれたミレニアル世代(1.8年)、 1960年代中盤から1980年代前半までに生まれたX世代(2.8年)、1940年代中盤から1960年代中盤までに生まれたベビーブーマー世代(2.9年)と、同段階での平均を大きく下回っています。

また、Z世代の約5人に2人は、自身の教育(あるいはその不足)が理想の職務達成の障壁となっていると感じています。この数値はミレニアル世代(39%)、X世代(34%)、ベビーブーマー世代(27%)と比べて著しく高いものです。

同様に、40%が自身の個人的背景(人口統計学的特性や家庭環境など)が理想のキャリアを追求する妨げになっていると述べています。これは、ベビーブーマー世代(24%)のほぼ2倍です。

教育面での懸念から、社会経済的背景、家族の責任に至るまで、個人レベルでは制御不能な障壁があると感じるZ世代がこれほど多く存在することは、懸念すべき兆候です。こうした制約は、キャリアの重要な段階で意欲を低下させるリスクがあるからです。

Z世代の男性は、職場でAIトレーニングを受けた経験がある割合が高くなっています。
Z世代の男性は、職場でAIトレーニングを受けた経験がある割合が高くなっています。 Image: Randstad

AIに対する期待と懸念

新たなテクノロジー、特にAIに関して、Z世代は高い能力と強い楽観性を持って労働市場に参入しています。

Z世代の半数以上(55%)が、すでに職場で問題解決にAIを活用していると回答。これはグローバル平均を大きく上回り、全世代中で最も高い数値です。同じ質問で回答された、昨年の48%から大幅に増加しました。

心強いことに、およそ5人に3人がAIの可能性に期待を寄せており、ミレニアル世代(60%)にはわずかに及ばないものの、X世代(52%)やベビーブーマー世代(46%)を上回っています。

雇用主は、このAI活用意欲と楽観的な姿勢を活用し、Z世代をAIによって強化することができるでしょう。ただし、まずはすべての従業員が職場でこの技術を学び、活用する公平な機会を得られるよう保証する必要があります。職場でAIトレーニングを受けた経験があるZ世代の男性は46%であるのに対し、女性は38%に留まっています。

AIの将来性や世代のデジタルリテラシーにはおおむね期待を示す一方で、Z世代の自己不信は技術面にも及んでいます。AIが自身の仕事に与える影響を懸念する層では、Z世代が最も大きな割合(46%)を占めているのです。

雇用主は、この微妙なニュアンスを理解し、Z世代がAIに幻滅しないよう、従業員と緊密に連携する必要があります。

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長期的なキャリア計画を持ちながらも離職は早い

不安を抱いてはいるものの、Z世代の人材は依然として未来志向かつ希望を持っています。転職を判断する際、5人に2人は常に長期的なキャリア目標を考慮しており、大局的な視点を有していることを示しています。この野心は多くの企業が有望な人材に求める資質ですが、若年層従業員には成功への明確な道筋を示す必要があるでしょう。給与に次いで、転職理由として最も多く挙げられたのは「キャリアアップ機会の不足」でした。

組織がより懸念すべきは、Z世代の過半数(54%)が積極的に転職活動中であると回答し、現在の職務を長期的に継続する予定のZ世代はわずか11%に留まる点です。将来を見据え、新たな機会を求める彼らの姿勢を踏まえて、雇用主はキャリアパスの再定義を進め、Z世代の従業員が進歩を実感できる環境を整える必要があります。

彼らの向上心を支えるために、以下の4つのステップを考慮するとよいでしょう。

1. キャリアパスにおける明確な目標設定

Z世代は前進している実感を得たいと考えています。明確な進歩の指標と定期的な具体的な報酬を提供するキャリアパスを整備することで、組織が自分の将来に向けて成長できる場であることを確信させることができます。

2. 育成初期への投資

雇用主は、初級職や初期キャリア開発プログラムへの投資を強化する必要があります。今、人材を育成することが、企業が将来にわたって成功し続けるための基盤となるでしょう。

3. 学習戦略の近代化

デジタルネイティブ世代であるZ世代は、職場での学習体験が学校や日常生活で慣れ親しんだ手法を反映したものであることを期待しています。雇用主はAIツールの活用を含む、実践的かつデジタルファーストのスキル習得機会を提供すべきです。

4. 自信を高める企業風土の醸成

データは、Z世代の若者が強い自己不信を抱いていることを示しています。自信を高め、若い人材が不利な状況を克服できる文化を築くことで、未来に直面する準備が整った労働力を育成することができるでしょう。

最終的に、Z世代はこのデータで自らの青写真を示してくれました。彼らは野心的であり、学ぶ意欲に溢れ、AIのような新技術を受け入れる意思があります。一方で、彼らが必要としているのは単なる給与以上のものです。目的意識と同時に、明確な将来像が必要なのです。

Z世代の潜在能力を引き出すためには、向上心に機会が伴い、目的意識が進歩を牽引する環境を構築しなければなりません。リーダーたちには、率先して行動する責任があります。キャリア開発のアプローチを近代化し、自信を育む文化を創出することで、この新たな世代の人材を惹きつけるだけでなく、彼らがイノベーターとなり、組織が繁栄するために必要な将来のリーダーたちの供給源となるよう、支援することができるでしょう。

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