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金融と通貨システム

バーレーン経済開発委員会が示す、高資産層の資産が湾岸経済に流入する理由

湾岸協力理事会(GCC)諸国は、プライベートアセットのさらなる流入を促進する方針を打ち出しています。

湾岸協力理事会(GCC)諸国は、プライベートアセットのさらなる流入を促進する方針を打ち出しています。 Image: Zalfa Imani/Unsplash

Dalal Buhejji
Executive Director, Business Development, Financial Services, Bahrain Economic Development Board
本稿は、以下センター (部門)の一部です。 金融、通貨システム
  • 英国のロンドンや米国ニューヨークのウォール街といった伝統的な金融センターが、コスト上昇や複雑な規制に直面する中、湾岸協力理事会(GCC)諸国は21世紀型の新たなファミリーオフィス向けモデルを構築しています。
  • 同地域の規制体系と税制は、プライベートアセット保有者のニーズに合致するよう設計されています。
  • 機動的な規制、コスト効率性、金融安定性、豊かな暮らしを、慎重さを重んじる文化と組み合わせることで、GCC諸国は、グローバルな競争力と高い基準、規制遵守、イノベーションのすべてを兼ね備えた魅力的なモデルを提示しようとしています。

世界のプライベートアセット分布図が変化しています。各国で規制の見直しが行われ、ファミリー資産に対する新たなルールが導入され、資産管理や租税優遇措置に関する基準は多様化。さらに、一部の地域で実施された税制改革により、高所得層の人々は居住地の見直しを迫られています。

こうした状況を背景に、湾岸協力理事会 (GCC)諸国が高資産層の魅力的な選択肢として台頭しています。イノベーションと起業家精神を支援する進化する規制枠組みと、強固なインフラ整備の相乗効果により、富裕層がこの地で生活し、働き、金融資産や事業資産を管理しやすくなっているのです。実際、2024年にアラブ首長国連邦(UAE)へ推定6,700人の純資産上位層が新たに流入。これは世界のどの国よりも多い数字です。このことは、GCC地域の各都市が世界の富の新たな中心地として台頭しつつあるという、大きなトレンドを反映しています。

超富裕層は、一族の資産管理とビジネスの繁栄を目的とした「ファミリーオフィス」を設立します。GCCは、このファミリーオフィスにとって理想的なハブとなる5つの柱に支えられた、大きな経済変革の中にあるのです。

1. 先進的な規制枠組み

ファミリーオフィスは、迅速に対応できる規制環境を備えた法域で繁栄します。強固な法的枠組みと、進化する投資ニーズに適応する柔軟性を兼ね備えた体制が理想的でしょう。GCC地域全体で、各国はこの期待に応えるための大胆な施策を講じています。

バーレーンでは、中央銀行(CBB)が新たなライセンス制度を導入し、ファミリーオフィスの業務範囲を拡大。これにより、信託やプライベートエクイティを含む、より多様な資産の管理が可能になっています。地域唯一の統合金融監督機関であるCBBは、同国で活動する金融機関の事業活動と、それらが提供する金融サービスの運営を監督しています。同国はまた、単一ファミリーオフィスとマルチファミリーオフィス設立に向けた規制枠組みを確立し、多様な運営モデルに明確な指針を提供。バーレーン信託法は、私設信託、商業・投資信託、慈善・特別目的信託という3つの主要カテゴリーにおいて、資産保護と相続計画のための透明性が高く柔軟な法的枠組みを提供しています。さらに現在、エコシステムをさらに強化し、企業が成長するために必要な体制を整えるために改正案が検討されています。

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2024年、バーレーンは「IMD世界競争力ランキング」で世界21位にランクイン。12の指標で世界1位、75の指標で世界トップ10に入りました。また、同国の首都マナーマは、6年連続で世界の金融魅力度に関するランキングで首位を維持しています。

同様に、UAEは、ドバイ国際金融センターとアブダビ・グローバル・マーケットを通じて専門ライセンス制度を導入し、資産保有者が投資管理、相続計画、慈善活動を単一の法的枠組みの下で統合できるようにしています。2024年には、ドバイ国際金融センターに200以上の新たなファミリーオフィスが参入。総数は800に達しています。

サウジアラビアもまた、経済構造改革の一環として、ファミリーオフィスを誘致するための規制環境を整備しています。金融セクター開発プログラムを通じて、同国はファミリーオフィスによる資本市場やオルタナティブ投資へのアクセスを拡大。より柔軟な選択肢を提供すると同時に、国家経済における中心的な役割を担うことが可能な体制を整えています。

2. 費用対効果に優れた税制環境

GCC諸国は、ビジネス環境の整備、規制の簡素化、投資家向けの明確な税制政策を特徴としており、伝統的な金融センターに代わる魅力的な選択肢を提供しています。中には個人所得税が非課税となる国もあり、法人税率も低く設定。さらに、他の地域と比べて大幅に低い運営コストでビジネスを展開可能な環境が整っています。これにより、ファミリーオフィスが湾岸地域で資産を管理、運用することが、より容易かつ費用対効果の高い選択肢となっているのです。

バーレーンは一貫して、湾岸地域で最も費用対効果に優れた立地として評価されています。個人所得税が非課税であるなど、地域で最も競争力のある税制を有しており、これが国際的な投資家やファミリーオフィスからの人気の主な要因となっています。税制面だけでなく、同国は金融サービスを含む複数の分野で、地域最低水準の運営コストを実現。例えば、金融サービス分野では地域の競合国と比べて最大48%もコスト効率が高いという特徴があります。

一方、UAEでは2023年より、同国の通貨でAED 375,000(約102,000米ドル)を超える利益を有する企業に対して、9%の法人税率を導入。これは、グローバルに競争力のある数字です。カタールとクウェートもまた、同様に競争力のある税制を提示しています。例えば、カタールでは一律10%の法人税率を採用し、二重課税防止協定を80件以上締結しています。

3. 金融規模と戦略的イノベーションの融合

GCC地域の金融センターが際立つ要因は、何でしょうか。その重要な強みの一つは、成熟し、確立された金融システムと、イノベーション主導型のアプローチを巧みに融合させている点にあります。世界中のファミリーオフィスが資産管理の最適な場所を模索する中、この組み合わせは非常に魅力的な選択肢です。

バーレーンだけでも、GCC地域最多となる350社以上の金融機関が拠点を設置。また、高度な規制環境の下で活動する専門的な人材が豊富に揃っているのも特徴です。そのため、グローバル企業は、主要な事業拠点を同国に設置することを選択しています。PwC中東地域の地域サービスセンターや、KPMGの「ローコード・センター・オブ・エクセレンス」など多くのコンサルティング企業が、同国を拠点に地域内外のクライアントにサービスを提供しています。

地域全体に目を向けると、UAEはその強固な金融インフラで有名であり、2024年には運用資産額がAED 1.2兆(約3,267億米ドル)を超えています。また、アブダビ政府系ファンド(アブダビ投資庁(ADIA)やムバダラなど)は、グローバルな資本の流れを牽引しており、この地域でファミリーオフィスを支援するための高度なスキルを備えた投資プロフェッショナルを育成してきました。一方、サウジアラビアのタダウルは、中東最大の証券取引所として台頭。時価総額は2.5兆ドルを超える規模に成長しています。ファミリーオフィスにとって、この証券取引所は地域の成長機会に直接アクセスできる手段であると同時に、グローバルな基準に沿ったガバナンス、透明性、規制対応を維持している点が特徴です。

4. プライバシー保護とセキュリティ

ファミリーオフィスにとって最も重要なのは機密保持と慎重な対応であり、湾岸地域はこの両方を実現しています。同地域のデータ保護に関する強固な法的枠組みと信頼性の高いサイバーセキュリティインフラにより、デジタル世界においても資産を安全に管理することが可能です。

例えば、バーレーンの「個人データ保護法」(PDPL)は、個人データの収集、処理、移転に関する明確な義務を定めています。ファミリーオフィスにとって特に重要な規定として、国境を越えたデータ移転の制限や、データ主体の同意取得を義務付ける条項が挙げられるためです。

また、PDPLを補完する同国の「クラウド法」は、地域で初めて導入された画期的制度であり、これにより外国企業は同国にデータを保管すると同時に、本国の法律に基づく管轄権を保持することが可能になります。

一方、2022年に施行されたUAEの「連邦データ保護法」は、ファミリーオフィスにも有益な個人のプライバシー保護措置を含む、同様の安全策を提供。同時に、国際的なマネーロンダリング防止枠組みにも準拠しています。

こうした法的保護基盤を基盤として、この地域ではサイバーセキュリティへの投資が積極的に行われています。2025年、サウジアラビアはIMD世界競争力センターの「サイバーセキュリティランキング」で、引き続き世界首位となりました。これは、同国の国家サイバーセキュリティ庁の強固な体制と、デジタルレジリエンスに向けた包括的戦略の成果を示しています。一方、バーレーンの国家安全保障戦略には、金融機関を対象とした具体的な保護措置と、包括的なインシデント対応プロトコルが含まれています。

5. 居住、立地、ライフスタイル

この地域の各国は、グローバルな人材と長期的な投資を呼び込み、維持するための取り組みを強化しています。その一例である「ゴールデンビザ」制度は、単なる投資スキームから、グローバルな人材と長期資本を呼び込むための総合的なライフスタイル戦略へと、進化を遂げています。

UAEの「ゴールデンビザ」プログラムは2021年以降、起業家、科学者、文化指導者など25万人以上の受益者を獲得しています。また、バーレーンが2022年に開始した「ゴールデン・レジデンシー・プログラム」は、不動産投資家、退職者、起業家、高度なスキルを持つ人材を対象に、永住権を付与するものです。この制度においては、家族の帯同許可や指定地域での不動産所有権などの特典があります。居住資格は無期限かつ更新可能であり、自由な渡航権に加え、医療や教育などの政府サービスへの無制限アクセスも保証。申請手続きは迅速かつ効率的で、従業員、不動産所有者、退職者の場合は5営業日、人材カテゴリーの申請者でも最大10営業日で完了します。他の居住資格を保有していることは、本プログラムの申請資格に影響しません。

GCC地域はまた、国際的な家族向けの世界水準のインフラも提供しています。UAEには100校以上の英国式カリキュラムの学校が存在し、バーレーンやカタールなどの国々も優れた国際教育の選択肢を提供。教育環境と並行して、この地域の先進的な医療システムは、米国クリーブランド・クリニックジョンズ・ホプキンスなどの機関との連携によりさらに強化され、国際的に認められた医療水準を実現しています。

機動的な規制、コスト効率性、金融安定性、豊かな暮らしを、慎重さを重んじる文化と組み合わせることで、マナーマ、ドバイ、アブダビなどの金融センターは、グローバルな競争力と高い基準、規制遵守、イノベーションのすべてを兼ね備えた魅力的なモデルを提示しています。

世界の富は今、動き始めています。GCC地域には、それを歓迎する準備が整っています。

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