気候変動対策

アースデイ発祥の地が、気候イノベーション・ハブとなった理由とは

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アースデイ発祥の地であるサンフランシスコは、今再び、世界的イノベーションの最前線に立っています。 Image: Leo Korman on Unsplash

Jeff Merritt
Head of Centre for Urban Transformation; Member of the Executive Committee, World Economic Forum
  • アースデイ、国連、そしてデジタル革命の発祥地であるサンフランシスコは、ネイチャーポジティブかつ気候レジリエンスのある未来の都市として、今また世界的イノベーションの最前線に立っています。
  • 地域のニーズと新たなビジネス機会を結びつける「ローカル・トゥ・グローバル(ローカルからグローバルへ)」のアプローチにより、同市は世界中で適応・導入可能な、繁栄と幸福を共有するための新たなモデルを育んでいます。
  • 世界各地のイノベーション・エコシステムが、気候行動と都市変革を取り入れ、より包摂的かつ責任ある経済成長モデルの推進を目指しています。

サンフランシスコは長年にわたり、気候変動対策の分野で先駆的な役割を果たしてきました。「アースデイ」という概念はこの地で生まれ、同市はコンポストの義務化から大胆な排出量削減に至るまで、さまざまな取り組みの最前線に立ってきました。

実際、サンフランシスコは1990年から2020年にかけ、人口が21%増加する中、気候行動計画を軸に、排出量を48%削減することに成功しています。

現在、同市はその勢いをさらに加速させ、地域に根ざしたイノベーション、自然を重視した都市計画、そして責任ある技術開発を活用した新たな取り組みを展開。これらの取り組みは、気候変動対策、地域の生物多様性の回復、そして包摂的な経済成長を目指す世界の他の都市にとって、貴重な教訓を提供しています。

教訓1:自然を活用した気候変動対策には、強力なガバナンスと投資が不可欠

95%が開発済みであるにもかかわらず、絶滅の危機に瀕する生物が多い地域である「生物多様性ホットスポット」の中に位置するサンフランシスコは、セクター間の連携を通じて自然遺産の回復に取り組むことを約束しています。街路樹を3万本植樹すると約束する同市の「1t.org」誓約は、この取り組みのほんの始まりにすぎません。

世界経済フォーラムによる、サンフランシスコのネイチャーポジティブな取り組みに関する新たなインサイトレポートでは、分断されたガバナンス体制や時代遅れのインセンティブなど、都市が直面する共通の課題を浮き彫りにしました。さらに、そうした障壁を乗り越えるために同市が活用している協調的な取り組みや政策アプローチを示しています。

注目すべき事例としては、以下が挙げられます。

  • India Basin Park Restoration(インディア・ベイシン・公園再生プロジェクト)は、かつての工業用造船所を、ウォーターフロントのコミュニティ拠点へと再生しています。これは、この種の開発計画として初めて、浄化が必要な土地(ブラウンフィールド)の改善と生息地の回復を優先し、経済的な機会創出とサービスが行き届いていない地域の生活向上するために実施されたものです。
  • ヤーバ・ブエナ島の再開発では、開発業者に自然環境の再生を義務付ける新たなルールを設定。官民のパートナーシップがインフラ投資と生態系の再生をいかに両立できるかを示しています。
  • サンフランシスコは現在、正式な生物多様性戦略の策定と、各機関間でのデータ連携の強化に取り組んでおり、これにより知見の共有や意思決定への活用が可能になります。こうした取り組みは、複雑な行政体制を持つ都市にとって再現可能なモデルとなり得ます。

サンフランシスコは、政策、イノベーション、そしてコミュニティが融合したときに何が可能になるのかを示すモデルとなっています。

教訓2:イノベーションは、責任を担い、誰もが利用でき、人間中心でなければならない

急速に進む技術革新の中で、すべてのイノベーションが持続可能な影響や利益の共有をもたらすとは限りません。世界経済フォーラムの「Global Innovation and Impact Council(グローバル・イノベーション&インパクト・カウンシル)」が発表した新たな「責任あるイノベーションのための枠組み」は、新興技術が社会的・環境的に前向きな成果を最大限に引き出すための手引きとなります。

サンフランシスコは、この新たなアプローチの先駆者として注目されています。例えば、ウェイモ社は、同市の「guidelines for emerging mobility (新興モビリティのためのガイドライン)」を活用し、自社の自動運転車が安全性、持続可能性、公平性といった都市全体の目標を確実に支援するよう取り組んできました。

100%再生可能エネルギーの利用を通じて排出削減に貢献するだけでなく、ウェイモ社は交通アクセスの格差是正にも貢献。調査によると、地域の利用者の36%が、公共交通機関への接続のために同社のアプリ「Waymo One」を利用しています。

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教訓3:地域に根ざしたイノベーションは、システム全体の変革を加速させる

2年目を迎えた「Yes San Francisco(イエス・サンフランシスコ)」は、気候変動に即した経済再活性化の強力かつ新たなモデルとして台頭。シティバンク、デロイト、セールスフォース、サンフランシスコ商工会議所が協力して開発したこのイニシアチブは、現在では50以上の組織からなるコアリションへと拡大しています。

イエス・サンフランシスコを通じ、世界経済フォーラムは2つの「トップ・イノベーター」コホートを支援し、多くのイノベーターがモビリティ、電化、サーキュラーエコノミー、適応型インフラの分野でソリューションの試験導入を始めています。
ChargeWheel、Re-Nuble、Kit Switchなどの地元発のイノベーターは、雇用を創出しながら排出量を削減する技術を展開し、他都市でも応用可能なコンセプトの実証を進行中です。

同モデルは、2030年までに50都市で1,000のイノベーターを支援することを目指す新たな「Yes/Cities」イニシアティブを通じ、今や世界規模で展開されつつあります。

グローバルリーダーが学べること

サンフランシスコの取り組みは、都市が持続可能なソリューションとローカルからグローバルに向けた進歩のための実験場となり得ることを示しています。イノベーション・エコシステムを地域の気候行動計画と結びつけ、責任あるガバナンスの実践を活用することで、都市は緩和、適応、生物多様性、公平性といった複数の側面において、システム全体の進展を加速させることが可能です。

以下の3つの横断的な教訓が明らかになっています。

  • 強固なガバナンスとセクター横断型の連携が不可欠。都市の各部門、データシステム、ソリューション提供者が足並みをそろえなければ、自然に配慮した、技術活用型イノベーションのスケールアップは困難になるでしょう。
  • 繁栄の共有には、公平なアクセスが重要。意義ある成果を得るためには、気候戦略が支援の行き届いていない人々を優先し、緑地、エネルギー、デジタルツールへの公平なアクセスを確保する必要があります。
  • グローバルな枠組みが、進展を加速させる鍵になります。 世界経済フォーラムによる「framework for responsible innovation(責任あるイノベーションの枠組み」」や「guidelines for nature-positive cities(ネイチャーポジティブな都市のためのガイドライン)」などのツールは、都市が地域のニーズに応じて柔軟に適用できる設計図を提供します。

世界中の都市が独自の持続可能性アジェンダを推進する中、サンフランシスコは、政策、イノベーション、コミュニティが融合すると何が可能になるかを示すモデルを提供しています。地球規模の崩壊に直面する今、世界に必要なのは、単に「よりグリーンな都市」ではなく、「よりスマートかつ公平で、再生力に富んだ都市」なのです。

関連トピック:
気候変動対策自然と生物多様性
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教訓1:自然を活用した気候変動対策には、強力なガバナンスと投資が不可欠教訓2:イノベーションは、責任を担い、誰もが利用でき、人間中心でなければならない教訓3:地域に根ざしたイノベーションは、システム全体の変革を加速させるグローバルリーダーが学べること

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