食料と水

安全な水の確保に立ち上がる、マルチステークホルダーの力

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本寄稿文は、世界銀行ブログ記事の和訳です。

2030水資源グループ(WRG)はバングラデシュで、官民連携を通じて公的資金から4億5,000万ドル、民間投資から1億ドルの資金調達を支援し、下水処理サービスの拡大に努めています。 Image: Pexels.

Gim Huay Neo
Managing Director, Asia Strategy and Centre for Energy and Materials, World Economic Forum
Saroj Kumar Jha
Global Senior Director, World Bank
Michael Webster
Program Manager, 2030 Water Resources Group
  • 気候変動やその他の環境要因によって、グローバル規模での安全な水の確保が一層の危機に瀕しています。
  • 2030水資源グループは、この課題に取り組むために設立されたマルチステークホルダー・コアリションです。
  • 同グループは、食料システムにおける水のレジリエンス強化、都市における水供給の確保、水再利用の拡大の3つに重点的に取り組んでいます。

今後10年間で最も深刻なグローバルリスクは環境に関わるものであり、そのすべてが水と密接に関連しています。世界経済フォーラムの『グローバルリスク報告書2025』によると、懸念事項の上位を占めるのは「異常気象」「生物多様性の喪失」「地球システムの危機的変化」「天然資源不足」です。このことは、生態系を保護し、資源を確保し、レジリエンスを構築するための長期的な戦略の必要性を浮き彫りにしています。

しかし、これらのリスクは単独で存在しているわけではありません。最も差し迫った短期的リスクの一つである「誤報と偽情報」は、ガバナンスに対する信頼を損ない、共通の危機への対応を複雑化します。水管理も例外ではありません。水の確保は、水不足や水質汚染、インフラだけでなく、ガバナンスや協力体制にも関わってくるからです。課題は、水へのアクセスを確保することだけでなく、利用者、供給者、規制当局の取り組みを調整し、効果的に管理することにあります。

セクター横断的な協力体制を形作るプラットフォーム

2030水資源グループ(WRG)は、マルチステークホルダーによる協力体制が信頼を構築し、優先事項を調整し、水の安全保障に関するコミットメントを行動に移すことができるという好例です。2008年に世界経済フォーラムによりスイスのダボスで設立され、現在は世界銀行に拠点を置くWRGは、各国政府、企業、市民社会の力を結集し、スケーラブルな水ソリューションの開発を推進。構造化されたマルチステークホルダー・プラットフォームを通じて、13か国にわたる1,000を超えるパートナーと連携し、意思決定者が共有ソリューションを開発するための中立的な場を創出しています。

同グループのパートナーシップは、インドのガンジス川流域自治体による下水処理のための初の官民連携、モンゴルにおける汚染管理と水再利用のための新たな法的枠組み、東アフリカにおける灌漑融資制度など、画期的な取り組みを支えてきました。10年以上の経験を有する同グループは、食料システムにおける水のレジリエンス強化、都市における水供給の確保、水再利用の拡大という、コラボレーションによって影響を加速できる3つの分野に重点的に取り組んでいます。

農業における水リスクの低減

農業は世界の淡水の70%を消費しており、食料システムは気候変動や資源ひっ迫の影響を大きく受けています。不安定な降雨、生育期の変化、気温の上昇は、農場の生産性と食料供給網を混乱させ、食料不安と市場の不安定性を高めます。

しかし、持続可能な農業慣行への移行にあるのは、技術や資金調達の課題だけではありません。政策改革、市場インセンティブ、企業の関与が必要なのです。

農業で生産される食料1トンあたりの水使用量が世界平均の2~3倍多いインドのウッタル・プラデーシュ(UP)州では、WRGが技術支援プログラム「UP PRAGATIアクセラレーター」を通じて、水効率の高い稲作の規模拡大を支援。水稲直播栽培、マイクロ灌漑、水分と酸素を交互に供給する間断灌漑技術が拡大され、水の使用量とメタン排出量を最大65%削減しています。

3億5,000万ドルの世銀融資プロジェクトがこの移行を支援しており、カーボンクレジットや市場インセンティブを通じた民間投資も行われています。これらのアプローチは、現在、米作が依然として主要な水消費産業であり、メタン排出源でもある南アジアおよび東アジア全域で、WRGの「低メタン米拡大イニシアチブ」を通じて拡大されています。

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都市における水供給の確保

世界の都市の3分の1は高まる水ストレスというリスクにさらされていますが、ガバナンスの欠如、資金調達上の制約、非協調的な計画立案が、長期的な水の安全保障を妨げる要因となっています。都市は水の確保にとどまらず、危機的状況の拡大を防ぐための積極的な対策を講じる必要があります。

南アフリカのケープタウンやハウテン州、コロンビアのボゴタなどの都市では、WRGが支援するプラットフォームが都市計画と投資戦略の統合を支援しています。各国政府、公益事業、企業、市民社会を結びつけるこれらのプラットフォームは、都市による水源の多様化、効率性の向上、ガバナンスの強化を支援。個別対応ではなく集団行動を促進することで、都市における水の供給停止や経済的ショックが深刻な危機へと発展する前に、その影響を和らげる役割を果たします。

水再利用の拡大

水質汚染は、年間180万人の死者4,250億ドルの事業価値をリスクにさらすことにつながっています。しかし、淡水資源に対する圧力が高まっているにもかかわらず、再利用には工業および家庭用水の取水量のわずか8%しか処理されていません。廃水処理の拡大には資金調達以上に、明確な規制、効果的な投資インセンティブ、強力な官民連携が必要なのです。

WRGはバングラデシュで、官民連携を通じて公的資金から4億5,000万ドル、民間投資から1億ドルの資金調達を支援して下水処理サービスの拡大に努めており、汚染の低減と水質改善を通じて最大2,000万人に利益をもたらしています。こうした取り組みは、責任の共有を促進することで公的資金への依存を軽減し、組織的な協力体制が大規模な環境および公衆衛生の改善を推進できることを示しています。

同グループは、グローバルレベルで業界や政策立案者と協力し、水再利用を長期的な水の安全保障の主要戦略とするための投資ロードマップおよび規制枠組みの策定を進めています。

パートナーシップを通じた喫緊のアクション

『グローバルリスク報告書2025』は、環境、経済、社会的な課題が深刻化する世界を浮き彫りにしています。しかし、問いかけるべきは解決策の有無ではなく、それをいかに迅速かつ効果的に拡大できるかということです。官民連携は、大規模な水の安全保障を可能にするために欠けているピースです。もはや、選択の余地などありません。今こそ、官民連携の力が必要なのです。

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