気候変動対策

スポーツが、私たちをサステナブルな行動に導く理由

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スポーツは、その影響に目を向けつつ、グローバルな持続可能性を推進していかなければなりません。 Image: REUTERS/Zohra Bensemra

Louise Thomas
Co-founder and Chief Executive Officer, Air Aware Labs
Will Hicks
Co-Founder and Chief Scientific Officer, Air Aware Labs
  • スポーツは、そのグローバルな影響力を活かして持続可能性を推進し、人々を団結させ、行動を鼓舞します。
  • データに基づく洞察は、パフォーマンスと持続可能性を最適化し、スポーツとイノベーションを結び付けます。
  • アスリートに影響を与える大気の質が、環境の健全性と個人の幸福や行動を結び付けます。

痛み、情熱、パフォーマンス。スポーツは国境を越えて私たちを結び付け、集団での努力を称え、困難に直面した際のレジリエンスを教えてくれます。しかし、スポーツはより持続可能なアクションを取るよう、私たちを鼓舞することができるでしょうか。

気候変動は試合終了まであとわずかの「ロスタイム」の段階にあり、温暖化する地球は私たちがスポーツをする本来のあり方を脅かしています。極端なケースでは、スノースポーツを完全に消滅させてしまう恐れもあるのです。スポーツは環境への影響を考慮しなければならない一方で、その団結力を通じて、グローバルな持続可能性を強化することもできます。

グローバル規模のアクションと協力

ソーシャルメディアで多くのフォロワーを持つスポーツ選手は、グローバルにリーダーシップを発揮して、持続可能性を提唱する上で類を見ない立場にあります。実際、ソーシャルメディアで最も多くのフォロワーを持つのはサッカー選手のクリスティアーノ・ロナウド氏。フォロワー数は10億人を超えています。

現在、すでに多くの著名なアスリートが、自らの影響力を活用して、思想的なリーダーシップを発揮。マラソンランナーのエリウド・キプチョゲ選手のように、クリーンエアの取り組みを推進するなど、行動を伴うことで、その言葉は最も大きな影響力を持ちます。

また、テニス選手の大坂なおみ氏は、環境に配慮したブランドとのコラボレーションを通じて、持続可能なファッションへの意識を高めています。F1ドライバーのルイス・ハミルトン氏は、再生エネルギー技術やカーボンオフセットの取り組みに積極的に投資しています。

さらに、変化と環境保全を提唱する新進の若手プロスポーツ選手、例えばサッカーチーム、アーセナルの若手ゴールキーパー、アレクセイ・ロハス氏のような選手の台頭も、非常に興味深いものです。

個人の行動よりも、集団の努力の方がより効果的である場合もあります。最も成功しているスポーツチームが、必ずしも最も才能ある選手で構成されているわけではありません。チームは、協力、多様性、コミュニケーションによって成長しています。

実際、チームやクラブ、主要なイベントが掲げる、ゼロ・ウェイスト(廃棄物ゼロ)の目標やカーボンニュートラルなトーナメントといったささやかな取り組みは、ファンに持続可能な習慣を促し、競技場をはるかに超えた範囲にまでその影響力を拡大することができます。この小さな、時には思いがけない行動が大きな効果をもたらし、ファンを巻き込んで大きな変化を生み出し、意識を高め、具体的な行動へと変えていくのです。

官民連携は、大小さまざまな規模でこうした持続可能性に向けた取り組みを推進する上で特に効果的です。2024年のパリオリンピック・パラリンピック競技大会(パリ五輪)は、革新的な新興企業や伝統的な企業と協力し、「史上最も環境に配慮した大会」に持続可能性を組み込みました。

その取り組みには、100%地元で調達した再生可能エネルギーの使用や、二酸化炭素換算で140万トン以上の排出の吸収または回避などが含まれています。

水素の役割

データは、現代のスポーツにとっても生命線です。古代ギリシャ人がオリンピックの勝者を称えて以来、スポーツはスポーツは著しい成果を出すことがすべてでした。ただし、当時は数字ではなく名前に焦点が当てられていました。

今日、スポーツがAIや分析を取り入れてパフォーマンス、生理学的反応、環境要因を数値化するようになったため、データはほぼあらゆる競技パフォーマンスの側面を裏付けるものとなっています。

スポーツがデータを取り入れる方法は、他の業界が模倣すべきモデルであり、エビデンスに基づく意思決定が効率性と持続可能性を推進できることを示しています。

データは、スポーツへの取り組み方を大きく変えました。データは推測を排除し、トレーニングを最適化し、戦略を洗練させ、アスリートを限界まで追い込み、生来の才能を測定可能な成果へと変えてきました。

例えば、AI主導の分析を導入したパリ五輪では、エコスタジアムのエネルギー消費を最適化するだけでなく、動的な公共交通機関のスケジュールを決定し、何百万人もの来場者を収容しながら大会の二酸化炭素排出量を削減しました。

「スポーツと持続可能性の成功には、革新者とイノベーション、そして集団行動が必要です」。

また、AI主導の分析は、大会に参加した選手やコーチにパフォーマンス指標に関する洞察をもたらし、トレーニングプログラムや戦略の微調整にも役立ちました。

インテルの3Dアスリート追跡テクノロジーはその好例です。このプロジェクトは、アスリートの身体の21箇所をモニターして生体力学データを分析し、コーチに身体の動きに関する詳細な情報を提供しました。

大気質の見落とし

しかし、スポーツと持続可能性の最も重要な共通点のひとつであり、これまでほとんど見過ごされてきたのが、大気質データです。

大気汚染は毎年800万人以上が早世する原因となっていますが、その大気汚染が運動能力に与える影響は、無視されることの多いものです。

汚染によるスモッグはスポーツイベントの中止につながります。しかし、個人競技であれ団体競技であれ、質の悪い空気にほんの少しさらされただけでも、アスリートの健康パフォーマンスには悪影響が即座に現れます。

汚染された環境でトレーニングを行うアスリートは回復に時間がかかります。また、持久力の低下(マラソンのタイムが1.4%低下)や呼吸器系、循環器系の不調にも悩まされるでしょう。エア・アウェア・ラボが主催したエリートアスリートによるパネルディスカッションでは、パリ五輪のメダリストたちが、ロンドンでトレーニング中に大気汚染による懸念や苦痛を直接的に経験したことを語りました。

スポーツ界における大気質に関する重要な啓発キャンペーンには、世界陸上競技連盟の「ランニング・フォー・クリーン・エア」イニシアチブなどがあります。企業では、アウトドアウェアのパタゴニアが毎年「ランニング・アップ・フォー・エアー:空気のために走る」キャンペーンを実施しています。

これらは大気質と個人のつながりを生み出し、責任感を醸成し、二酸化炭素排出や気候変動といったより広範な持続可能性の課題に取り組むための入り口となります。

しかし、目に見えない大気汚染の具体的な脅威は、スポーツ活動による大気汚染への暴露を関連付けるデータがなければ見逃されてしまうでしょう。エア・アウェア・ラボは、大気質データを運動指標に直接関連付けることでこの課題に対処すると同時に、アスリートに対して、周囲の環境がパフォーマンスや回復にどのように影響するかを理解する手助けをしています。

例えばランナーは、ランニングやサイクリングのルートを変える、あるいは運動の時間を変えることで有害粒子への暴露が50%減り、パフォーマンスや健康状態が改善し、回復時間が短縮できることを知るでしょう。

このパーソナライズされたデータは、エリートアスリートにすぐに役立つだけでなく、一般の人々にも環境に関する概念を自身の健康と結び付け、有意義な行動変容を促すことができます。

ビジョンの共有

スポーツの成功と持続可能性を実現するには、革新者とイノベーション、そして選手、ファン、コミュニティ、チーム、企業、各国政府による共通の目標に向けた集団行動が必要です。

よりクリーンなスポーツイベントの支援、データ主導の革新の推進、日々のサステナブルな選択など、あらゆる行動が重要です。力を合わせれば、今日の切迫した状況を明日の遺産に変えることができます。ゲームはまだ終わっていないことを証明し、世界的な復活を果たす時は今です。

アスリートが限界に挑むように、私たちはスポーツの持つグローバルな影響力を活用し、より健康で持続可能かつ勝利に満ちた地球を実現するための決意を鼓舞し、強化しなければならないのです。

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