レジリエンス、平和、安全保障

AIが世界の危機対応に役立つ、5つの方法

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危機対応チームはウクライナ全土で活動しています。 Image: UNDP/Oleksandr

Devanand Ramiah
Director, Crisis Readiness, Response, and Recovery, Crisis Bureau, United Nations Development Programme (UNDP)
  • グローバルな危機に迅速かつ的を絞った対応を行うことで、人命を救い、コストを削減し、復旧時間を短縮して、地域社会がより早く日常を取り戻すことができます。
  • テクノロジーはあらゆる業務分野を変革しています。危機対応も例外ではありません。
  • 国連開発計画(UNDP)では、危機に影響を受けた人々へのより迅速かつスマートな支援を確保するために、これらのツールを活用しています。その方法について説明します。

私たちは激動の時代に生きています。世界中で発生する暴力的紛争の数は、第二次世界大戦以来最も多く、気候災害の頻度と激しさは増大しています。国際社会としてこれらの課題に対応する能力が、これまで以上に試されているのです。

危機に迅速かつ的を絞った対応を行うことで、人命を救い、コストを削減し、復旧時間を短縮して、地域社会がより早く日常を取り戻すことができます。適切なタイミングでの支援があれば、医療も受けられず、暴力の危険にさらされる難民キャンプでの生活を一日でも短縮することができるのです。危機は深刻です。

導入すべきは、AIとデジタル化です。テクノロジーはあらゆる業務分野を変革しており、危機対応も例外ではありません。国連開発計画(UNDP)では、危機に影響を受けた人々へのより迅速かつスマートな支援を確保するために、これらのツールを活用しています。

他のテクノロジーと同様に、AIツールやアプリケーションは市場に主導されており、企業のニーズによって形成されています。人道支援および開発セクターでは、こうした成果をもとに、AIを業務プロセスに活用して、より効果的なものにする方法を検証しています。このプロセスは、企業からのリソースや専門知識を得て加速することが可能です。

現在のUNDPにおけるAIの活用方法と、今後の危機対応に向けた展開は次のとおりです。

1. リアルタイムのデジタル影響評価

危機発生後には、被害と影響に関するタイムリーなデータが不可欠です。UNDP危機対応局(CB)は、被災地域、人口、インフラ、瓦礫の推定、土地利用に関する迅速な洞察を提供できる地理情報システム(GIS)ツールを開発。いずれも救助と復興活動の計画に欠かせない要素です。

AI搭載型デジタル迅速評価(RAPIDA)ツールは、地理情報システムツールを基盤とし、衛星画像、ソーシャルメディア、夜間照明データを活用して、危機発生後のリアルタイムの洞察を共有します。例えばアフガニスタンのヘラートで発生した地震では、対面での評価を行うための被災地域の絞り込みに同ツールが役立ちました。これにより、時間を節約すると同時に、アクセスが困難な遠隔地に関する貴重なデータを入手。建材や建物の寸法に関する情報を追加することで、損壊した家屋の数や瓦礫のトン数を推定することができました。

The UNDP crisis response team working in Afghanistan
アフガニスタンで活動するUNDPの危機対応チーム Image: UNDP

2. AIを活用した人員派遣

危機的状況においては、適切な人材を現地に派遣することも極めて重要です。UNDPの派遣プラットフォームは、EVA.ai社のテクノロジーを活用し、現地のニーズに適した人材を派遣できるよう設計されています。派遣にあたっては、専門知識、利用可能性、派遣先への近さ、言語、類似した任務の経験などを考慮。同プラットフォームは、最適な専門家を即座に特定し、関心と利用可能性を確認することができます。

これは、今年、登録された中から2,450人以上の専門家を派遣した同組織にとって重要なニーズです。これらの専門家は、シリア、ウクライナ、バルバドスなどの危機的状況を含む150以上のUNDP事務所を支援しました。登録者の充実を図るため、UNDPは最近、グローバルな規模で募集を行い、25,000件以上の応募を集めました。応募者にとっては、自動入力などのAIツールにより、応募にかかる時間がわずか2.5分に短縮されています。

3. 学習体験のカスタマイズ

組織として危機に備えるには、継続的なアップスキリング(技能向上)が求められます。UNDPの「クライシス・アカデミー」では、厳格な応募プロセスを経て選抜された中堅から上級スタッフである危機対応者を対象に、的を絞った研修と学習の機会を提供しています。

オンデマンド型のオンラインコースやリアルタイムの対面式トレーニングに加えて、同アカデミーでは学習体験を向上させるためのテクノロジーの試験運用も実施。最近ニューヨークで開催されたクイック・レスポンス・トレーニングでは、拡張現実(AR)テクノロジーを活用して臨場感あふれる危機シミュレーションを行い、参加者は危機による被害や影響を仮想的に評価することができました。同様に、このツールは、派遣前のブリーフィング、現地の概要、安全や医療に関する要件など、主要なリソースをまとめた仮想の「バックパック」を準備するためにも使用できます。これには、危機対応スタッフが任務のために現地に飛ぶ前に必要なすべてのものが含まれています。

今後は、AI 搭載のモジュールで学習をさらにカスタマイズし、学習者のニーズや専門性に合わせたパーソナライズされたトレーニングを提供することを目指しています。

4. 危機対応ミッションをデジタルで支援

経験豊富な危機対応者は、時間との戦いの中でプログラムの文書をまとめる際に、適切な情報を探し出すことの難しさを知っています。業界を問わず、リソースの動員、プロジェクト文書の作成、ドナーとのコミュニケーションなど、重要な業務は、デジタルアシスタントの助けを借りることで、より効率的に行うことができます。ここで重要なのは、「デジタルアシスタント」を正確かつ適切に訓練することです。

そのために、私たちはすべてのリソースとツールを結集し、シリアトルコ、その他の国々における危機対応活動から得た新たな指針や文書を含め、危機対応ハブを作成しました。主要文書をホストするだけでなく、AIチャットボットが搭載されており、情報への迅速なアクセスを支援します。また、プロジェクト文書や対応戦略の作成をサポートするコパイロット機能も用意。コパイロットは、より多くの情報を与えることで、継続的な改良が可能です。ただし、ツールの改良はすべて内部で行われているため、業界標準に達するまでには時間がかかる可能性があります。

5. 先を見越した危機管理

同組織は早期警報システムにも投資しており、危機管理を事後対応から先手を打つ対応へと移行させています。「危機リスク・ダッシュボード」は、過去のデータとほぼリアルタイムのデータをリスク予測と組み合わせ、各国の事務所がリスクを監視、分析、視覚化するための集中プラットフォーム。このダッシュボードは、AIを活用してデータのクレンジング、分析、要約を行います。

また、リスクが拡大する前に予測し、ホットスポットを特定。特定の状況やプログラムのニーズに合わせて調整することもできます。スリランカでは、同ダッシュボードを利用してヘイトスピーチ、宗教的暴力、マクロ経済課題の監視を行っており、エクアドルでは、避難民や移住者の追跡に利用されています。

私たちは、これを行動のためのプラットフォームに変え、危機の重大なリスクが、リソースや人員の配置を含む必要な企業対応を自動的に引き起こすことができるようにしたいと考えています。AIの進歩とより質の高いデータへのアクセスにより、同ダッシュボードは国連システムにとって重要な早期警戒ソリューションとなるでしょう。

安全と探求のバランス

UNDPやその他の組織にとって、こうしたテクノロジーを取り入れることは、危機対応の取り組みをより効率的にする可能性につながります。リアルタイムの評価から個々人に合わせた学習、そして危機ミッションにおけるデジタルアシスタントまで、AIはレジリエントな世界の構築におけるコパイロットになることができるのです。

しかしまた、すべての新しいテクノロジーにはリスクが伴うことも認識しています。現在、AIの利用に関するグローバルな基準はありません。私たちは、倫理的な利用を確保し、プライバシーを保護するためのガードレールを確立する必要があります。偏り、品質保証、データ不足といった課題に対処しなければなりません。最終的には、人間の監視が依然として不可欠です。

テクノロジーの可能性は計り知れません。最も必要としている人々を支援する上でリスクがないよう、こうしたツールを安全かつ効果的に活用する時が来ているのです。

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1. リアルタイムのデジタル影響評価2. AIを活用した人員派遣3. 学習体験のカスタマイズ4. 危機対応ミッションをデジタルで支援5. 先を見越した危機管理安全と探求のバランス
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