データと協働で災害リスクを再構築する日本

日本は地震をはじめとする自然災害の影響を受けやすく、防災と災害対応の分野で世界をリードする存在となっています。 Image: REUTERS/Kim Kyung-Hoon
- 日本は、災害へのレジリエンス強化と老朽化するインフラへの対応のため、2026年から2030年までの5年間で約1,340億ドルを投資します。
- 2026年11月には、防災を一元的に統括する防災庁が発足し、日本の災害対応は、災害発生後の対応中心から、長期的な備えを重視する体制へと移行します。
- AIやデジタル技術の活用、そして官民連携の深化により、日本の災害の検知、対応、復旧のあり方は大きく変わりつつあります。
2026年4月20日、三陸沖を震源とするマグニチュード7.7の地震が発生し、青森県をはじめ東北地域を中心に強い揺れが観測され、津波警報も発令されました。約700キロメートル離れた東京でも揺れが感じられるなど、この地震は広域に影響を及ぼしました。さらに一週間後には、北海道でマグニチュード6.5の地震も発生し、日本が常に地震リスクにさらされている現実を改めて浮き彫りにしました。
地震や台風、洪水など、自然災害の多い日本では、過去の経験と課題を踏まえ、災害対策の見直しと改善を重ねてきました。2026年は、東日本大震災から15年、熊本地震から10年、能登半島地震から2年という大きな節目の年であり、防災制度の進展が加速しています。
防災庁の発足
日本政府における防災分野の進展の一つが、2026年11月に発足予定の防災庁です。防災庁は、防災の司令塔として、平時の備えから応急対応、復旧・復興に至るまでを一体的に統括します。これまで日本では災害対応に追われる中で、事前準備に十分なリソースを割くことが難しい状況がありました。
防災庁はこの課題を踏まえ、
1. 中長期的視点に基づく戦略立案
2. 事前防災の推進
3. 発災時から復旧までの統合的対応
の3つを柱に、「人命と人権を最優先とする防災立国」の実現を目指します。
同庁が効果的な自然災害への備えと発生後の対応の迅速化を進めることにより、被害を最小限にとどめることが期待されています。
インフラの予防的強化
平時における社会的インフラの点検および整備は、災害による被害を最小限に抑えることにつながります。
政府は「第1次国土強靱化実施中期計画」において、2026~2030年度の5年間で約20兆円超を投じ、防災・減災とインフラ老朽化対策を進めます。約半分の10.6兆円を上下水道などライフラインの強靱化に充て、予防保全型メンテナンスを推進。さらに、防災インフラ整備に約5.8兆円、官民連携強化と地域防災力向上に各約1.8兆円、新技術活用に約0.3兆円を配分し、総合的なレジリエンス強化を図ります。
生活に不可欠なインフラの整備を正常時から進めることで、災害が起きても人々の暮らしへの影響を最低限に抑えることを目指しています。
防災のデジタル化
デジタル庁は企業と連携し、防災DXを推進しています。その一例が、災害時における情報共有の高度化です。被害把握、意思決定、行動を支える情報を、国・自治体・関係機関がデジタルで連携することで、より迅速で的確な対応が可能になります。
その一例として、「防災DX官民共創協議会」と連携し、多角的な支援を進めています。住民一人ひとりが災害時に適切な支援を受けるためのデータ連携促進、自治体が必要な防災アプリ・サービスを円滑に調達できるよう、「防災DXサービスマップ」「防災DXサービスカタログ」をウェブサイトで公開。さらに、デジタル技術を用いた災害対応の高度化に関する実証事業の実施や災害派遣デジタル支援チームの設置なども進めています。
内閣府では、防災×テクノロジー官民連携プラットフォーム(防テクPF)を設置、運営し、災害対応における地方公共団体等のニーズと企業等が持つ先進技術のマッチングや、効果的な活用事例の全国展開等を実施。防テクPFは、約3,000の登録団体が活用する登録無料のマッチングサイトの開設や、実際に交流する場として公共団体と企業、および企業間のマッチングセミナーを開催し、社会全体のレジリエンス力強化に向けた取組を進めています。
企業による防災テクノロジーの開発
企業による防災テクノロジーの開発も進展しています。災害分野におけるAIの活用例には、広域における河川の氾濫予測や被害推定、火災検知、SNSリアルタイム分析、避難支援、防災チャットボットなどがあます。
その一例であるSNS即時分析「Spectee Pro」は、SNS投稿のテキストと画像をAIがリアルタイムで分析し、被災状況を迅速に自治体・企業に提供します。これにより、従来は困難だったスピードで全体像を把握し、迅速な意思決定に繋げることが可能になります。
防災対策をアップデートし、レジリエンスを強化
これらの取り組みは、日本の防災が従来の個別対応から、より統合的でデータ駆動型のアプローチへと進化していることを示しています。防災庁の設置による司令塔機能の強化、インフラの予防的強靱化、そしてデジタル技術の活用が相互に連携し、平時から災害対応・復旧までを一体的に支える体制が整いつつあります。
さらに、企業によるAIなどの先端技術の開発や、官民連携の深化により、災害時の意思決定の迅速化と精度向上が期待されています。こうした動きは、日本が持続可能でレジリエントな社会の実現に向けて、新たな防災モデルを構築しつつあることを示すとともに、将来の災害リスクに対応する上での重要な転換点となり得ます。
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Shaun Adam and Satvinder Singh
2026年5月19日





