日本の都市がグローバルな課題でリーダーシップを発揮できる、3つの分野とは
日本の都市は、世界中の都市に対して貴重な洞察と解決策を提供することができます。 Image: Unsplash/Jaison Lin
- 都市部は、世界的な課題とその解決策の焦点となりつつあります。
- 日本の都市は、持続可能で包摂的かつ強靭な都市環境を構築する可能性があります。
- 日本の都市が世界的なリーダーシップを発揮する方法を提示します。
都市がグローバルな課題や機会の中心となることが増えつつある現代において、日本の都市には独自の役割があります。レジリエンス、アクセシビリティ、イノベーションへの取り組みの豊かな歴史を持つ日本の都市は、グローバルな舞台でリーダーシップを発揮するのに適した立場にあります。このリーダーシップは、技術的な進歩だけでなく、包摂的かつレジリエンスの高い、持続可能な都市環境の創造にも関わるものです。ここでは、日本の都市がリーダーシップを発揮できる3つの主要分野、「レジリエンス」「アクセシビリティ」「イノベーション」について探ります。
レジリエンスの高い都市システムの構築
地理的位置を考えると、日本は地震、津波、台風などの自然災害の危険に常に晒されています。この脆弱性に対応するには、世界中の他の都市にとってのモデルとなり得るレジリエンスの文化が必要になります。2023年に高松市で開催されたG7香川・高松都市大臣会合では、気候変動による自然災害の頻度と強度の増加が取り上げられ、会合後のコミュニケでは、都市がこうした事象に耐え、回復するための強固なシステムを開発する必要性が強調されました。
日本の都市は、長年にわたり災害への備えと対応の最前線に立ってきました。例えば、2011年の東日本大震災で壊滅的な被害を受けた仙台市は、「防災環境都市・仙台」を目指すことを宣言。同市はその実現に向けて、都市開発、地域社会における防災活動の支援となる人材育成、経験と教訓を含む情報共有の3つの要素に重点的に取り組んでいます。
2015年3月には、第3回国連防災世界会議が仙台で開催されました。そこで採択された「仙台防災枠組2015-2030」は、災害リスクの軽減とレジリエンスの強化を目的とした世界的な青写真です。この枠組みでは、災害リスクの理解、災害リスクガバナンスの強化、レジリエンスのための災害リスク軽減への投資、効果的な災害対応への備えの向上と復旧・復興過程における「より良い復興(Build Back Better)」という、4つの優先分野が概説されています。
アクセシビリティが創出する包摂的な都市環境
アクセシビリティも、日本の取り組みが世界をリードする分野です。アクセシビリティの概念には、物理的なインフラを超えた、社会的・経済的なインクルージョンが含まれます。高齢化が進む日本では、高齢者や障がい者を含むすべての住民にとって都市がより利用しやすくなければなりません。
その中で福岡市は、認知機能が低下しても住み慣れた地域で安心して暮らせるよう、認知症に優しいまちづくりに先駆的に取り組んでいます。福岡市の「認知症フレンドリーシティ・プロジェクト」は、行政、医療、民間企業、大学、市民が一体となって認知症に優しいまちをデザインするもの。このプロジェクトには、患者が地域で生き生きと暮らし続けるための戦略、プログラム、インフラが含まれています。
日本の都市は、アクセシビリティに関する経験やベストプラクティスをグローバルなコミュニティと共有することができます。これには、アクセシビリティの高いインフラの設計と実装、社会的インクルージョンを促進する政策、アクセシビリティを向上させるテクノロジーの利用などが含まれます。これにより、世界におけるより包摂的な都市環境の創出に貢献することが可能となります。
都市ソリューションの最先端を開くイノベーション
イノベーションは、常に日本社会の特徴でした。ロボットからAI、モノのインターネット(IoT)に至るまで、日本は常に技術革新の最先端に位置しています。2019年の世界経済フォーラム年次総会における演説で、日本の安倍晋三首相は、AI、IoT、ロボット工学を活用し、都市生活の新たな現実を創造するデータ主導型社会である「ソサエティ5.0」という概念を強調しました。
この「ソサエティ5.0」のビジョンは、東京や神戸などの都市で実現されています。世界経済フォーラムが開催した「アーバン・トランスフォメーション・サミット(Urban Transformation Summit)」では、東京都が都市イノベーションの取組を発表しました。
一方、神戸は都市の生物多様性に対する重点的な取り組みを行っています。緑地の拡充、都市農業の推進、地域生態系の保護を目的としたプロジェクトを実施。こうした取り組みは、環境の持続可能性を向上させるだけでなく、住民の生活の質を向上させることにもつながります。
日本の都市は、自らの経験を共有し、他の都市と協力しながら最先端のソリューションを開発・実施することで、都市イノベーションの分野をリードすることができます。これには、都市の課題に対処するためのテクノロジーの利用、持続可能な慣行の推進、住民のウェルビーイング(幸福)を向上させるスマートシティの創出などが含まれます。
日本のリーダーシップ
世界が都市化、気候変動、ソーシャル・インクルージョンといった課題に取り組む中、日本の都市には世界的な舞台でリーダーシップを発揮するチャンスがあります。レジリエンス、アクセシビリティ、イノベーションに重点的に取り組むことで、日本の都市は世界中の都市が採用できる貴重な洞察やソリューションを提供することができるでしょう。東京、神戸、そしてその他の日本の都市の経験は、都市が前向きな変化を推進し、すべての人にとって持続可能かつ包摂的、レジリエンスの高い未来を創造できる可能性を証明しています。