福岡市が実現する、認知症フレンドリーなまちづくり

A disabled parking bay, illustrating the need for accessible cities

都市は、すべての人にとってアクセシブルでなければなりません。 Image: Photo by Jakub Pabis on Unsplash

Takashima Soichiro
Nona Yehia
Chief Executive Officer and Co-Founder, Vertical Harvest
本稿は、以下センター (部門)の一部です。 アーバントランスフォーメーション
  • アクセシブルな都市づくりにおいては、コミュニティの弱者、特に高齢者や障がい者のために、より意図的にインクルーシブなインフラを設計・構築することが重要です。
  • 福岡市や米国の様々な事例は、パブリックセクターと企業の両方が、すべての市民のための都市の場所や空間づくりを推進できることを示しています。
  • アクセシビリティを優先させることで、個人だけでなく、より広範なコミュニティにも恩恵がもたらされます。また、アクセシビリティに先行投資することで、よりコストのかかる介護・医療介入を減らすことができます。

都市の市民にとっての「アクセシビリティ」は、生活費などの経済的な視点から評価されるのが一般的です。もちろん経済的な側面は重要ですが、都市におけるアクセシビリティはそれだけにとどまりません。よりインクルーシブな都市づくりのために、パブリックセクターと企業は様々なアプローチを取ることができます。

アクセシブルな都市の実現には、世界人口の12%以上を占める高齢者や、6人に1人を占める障がい者など、脆弱な立場にある人々のために、よりインクルーシブなインフラを今以上に意図的に設計・構築する必要があります。

パブリックセクターと企業の両方が、すべての市民のための都市の場所や空間づくりに実質的な進歩をもたらすことができます。高齢者をよりよくサポートするために福岡市を再設計した日本の事例や、障がい者に雇用機会を提供するため社会起業家がイノベーションを起こした米国の事例など、多様なストーリーが、地域やセクターにかかわらず、よりアクセシブルでインクルーシブな都市に向けた取り組みが実践可能であることを示しています。

認知症に優しい都市デザイン

世界でも有数の少子高齢社会である日本では、2025年までに、65歳以上の高齢者の5人に1人が認知症になると予想されています。こうした中、福岡市は、認知機能が低下しても住み慣れた地域で安心して暮らせるよう、認知症に優しいまちづくりに先駆的に取り組んでいます。

福岡市の「認知症フレンドリーシティ・プロジェクト」は、行政、医療・介護機関、企業、大学、市民が一体となり、認知症に優しいまちをデザインするものです。このプロジェクトには、認知症の人が地域で生き生きと暮らし続けるための戦略、プログラム、インフラが含まれています。フランスの「ユマニチュードⓇ(HumanitudeⓇ)」という手法を用いて、住民に認知症の人とのコミュニケーションやケア方法を教えるクラスを開講し、すでに8,375人が180のセミナーを受講。国境を越えてこのメソッドを共有するため、福岡市は「国境なきユマニチュード憲章」という憲章に調印しました。

市が策定した「認知症の人にもやさしいデザインの手引き」は50以上の施設で採用され、屋外空間でも、認知症の人が安全に市内を移動できるようサインの導入などを進めています。また、認知症と共存しながら学び、働くことを支援する拠点施設「福岡市認知症フレンドリーセンター」を市が開設しました。「認知症の人にもやさしいデザイン」を全面導入しており、スコットランドのスターリング大学認知症サービス開発センターからゴールド認証を授与されました。市が設立した「オレンジ人材バンク」は、認知症の138人を14のパートナー企業に紹介し、自分らしく活躍し、より長く生き生きと暮らせるようサポートしています。

屋内農業企業による雇用

米国のバーティカル・ハーベスト社は、私たち皆が必要とする食料を通じて、私たち皆が望む未来を築こうとしています。同社は、障がい者のコミュニティなど、就業機会が少ない人々向けにカスタマイズされた雇用形態を中心に、ビジネスモデルを設計すると同時に、都市型農場食料システムにおいて、アクセシビリティと手頃な価格を優先しています。

同社の「グロウ・ウェル・モデル(Grow Well Model)」は、歴史的に雇用から排除されてきた人々を採用・訓練し、雇用を維持することで、急成長している環境制御型農業分野におけるグリーン・ジョブへの障がい者のアクセスを可能にすることを目指すものです。役割分担は各従業員に合わせてカスタマイズされ、金融リテラシー、健康管理の調整、交通・移動の機会、利用しやすい住居の確保など、包括的なサービスに投資し、従業員の40%にあたる障がいを持つスタッフを経済的に安定して雇用できるようにしています。

同社の「顧客としてのコミュニティ」というアプローチは、新鮮な農産物を小売店やレストランだけでなく、学校、病院、老人ホーム、矯正施設、大学キャンパスなど、コミュニティの重要な施設にも大量に供給することで、都市の食料システムにおけるアクセシビリティと価格にプラスの影響を与えています。屋内栽培により、年間を通じた大量の農産物の安定供給を実現し、寄付と助成金のパートナーシップを通じて食料へのアクセスが困難な低所得者をサポートしています。

コミュニティにとって、食品と雇用の両面でインクルージョンを推進することは極めて重要であり、顧客の強いロイヤリティと愛情(NPSスコアで94以上をマーク)から恩恵を受けるブランド構築に役立っています。同社とコミュニティのステークホルダーは次のようにして成果を上げています。

  • グローバルな変化をローカルに構築 - 地元農家を全国ネットワークへと拡大。
  • 人々の食事と充足 - 健康的な食べ物と意義ある仕事を育てることが、特に経済的に恵まれないコミュニティで人々の生活を変える鍵となります。
  • より健康的な未来の基礎 - 栄養価の高い自然食品は、より健康な未来を構築する重要な要素です。

パブリックセクターと企業の両方が不可欠

これらの事例は、アクセシビリティを優先することで、脆弱な立場にある人々のためのスペースが都市に生まれ、維持されることを示しています。そしてその空間が、社会的・経済的なインクルージョンと手頃な価格につながるのです。アクセシブルになれば、市民はつながりを保つことができます。これは、個人の生活の質、自立性、そして地域に対する誇りにもつながります。また、アクセシビリティに先行投資することで、よりコストのかかる介護介入を減らすことができ、たとえ状況が変化しても、誰もが自宅や近隣に受け入れられているという安心感を提供することができます。

パブリックセクターと企業の両方が、解決策を創出することができます。私たちのストーリーは、アクセシビリティを促進するための次のような重要な洞察を提供しています。

  • 分野横断的に取り組む - 都市の各主要システム(経済、交通、ヘルスケア、教育、道案内など)を、誰のために、何のために、どのように改善すれば、よりインクルーシブになるかを模索する。
  • 異なる資本源を組み合わせる方法を見つける - 官民から資本を調達し、つなぎ合わせ、インセンティブを調整して、よりインクルーシブでアクセシブルなアウトカムを創出する。
  • コミュニティと協働する - コミュニティの参画と「傾聴と学習」の取り組みを実施し、都市に特有の機会や優先すべき課題を深く理解する。
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