公正、多様性、包摂性

障がい者が使いやすい商品を、企業が設計すべき理由とは

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アクセシビリティを考慮した商品のデザインは、幅広い観客へのアピールにつながります。 Image: Unsplash/Artificial Photography

Uma Girkar
  • アクセシブルデザインに投資することにより、世界で10億人以上の人々にリーチし、高い収益が見込める重要な市場を解き放つことができます。
  • アクセシビリティ機能は使いやすさを向上し、高齢者や一時的な障がいを持つ消費者を含む幅広い層への訴求につながります。
  • アクセシブルな製品は、ブランドの評判を高め、忠実な顧客を獲得し、包摂性に関する法的基準の遵守を保証します。

今日、世界では包摂的かつ社会的意識が高まり、企業はアクセシビリティの重要性を認識しています。世界保健機関(WHO)によると、世界人口の15%に相当する10億人以上の人々が、何らかの障がいを抱えて生活しています。

これらの人々は、米国で4,900億ドル世界全体では8兆ドル近い額の所得を消費に費やすことができ、市場の重要な一部を構成しています。

一方、これほど大きな経済力があるにもかかわらず、多くの消費者向けパッケージ商品は障がい者にとって利用しにくい状態が続いています。これは、企業にとって課題であると同時にチャンスでもあります。

消費者向けパッケージ商品のデジタルアクセシビリティに関しては、文字サイズを大きくし、パッケージのカラーコントラストを改善するなど、前進が見られます。一方、製品の物理的なアクセシビリティの向上には、まだ長い道のりがあると言えるでしょう。

収益を上げるソリューション

パッケージング・コーポレーション・オブ・アメリカの調査によると、消費者の42%が開けやすい包装を好むことがわかりました。製品を物理的によりアクセシブル、つまり利用しやすくすることに投資する企業は、サービスが十分に行き届いていない市場を開拓し、収益を高めることができるのです。

アクセンチュアが実施した2020年の調査は、製品のアクセシビリティを向上させた企業は収益が28%増加すると報告。この大幅な増収は、新規顧客の獲得と既存顧客の満足度向上に起因しています。

消費者向けパッケージ商品のアクセシビリティ向上は、新しい市場を開拓するだけでなく、製品の魅力を高めることにもつながります。企業がアクセシビリティを念頭に置いて設計することにより、より多くの消費者層に恩恵をもたらすソリューションを開発することができるからです。

例えば、開けやすいパッケージは、当初は障がい者のためにデザインされましたが、高齢の消費者や関節炎患者、従来のパッケージで苦労している人にも対応可能です。インクルーシブデザインの広範な適用性を裏付ける調査結果も出ています。

Centre for Inclusive Design(センター・フォー・インクルーシブ・デザイン)によると、アクセシビリティを考慮して設計された製品は、そうでない製品に比べ、4倍の消費者に届く可能性があります。アクセシビリティを向上させる機能の多くは、全体的な使い勝手も向上させ、幅広い人々に利便性と使いやすさを提供するからです。

インクルーシブデザインに注力することにより、企業は消費者層を拡大し、より多くの人々にとって魅力的な製品を作ることができるのです。

ブランドロイヤルティとコンプライアンスの強化

直接的な金銭的利益に加えて、アクセシビリティを優先する企業は、ブランドの評判を大幅に高め、より忠実な消費者層を得ることができます。企業がアクセシビリティに取り組んでいることが消費者に伝わると、消費者はブランドとのつながりを感じやすくなり、リピート購入に加え、長期的なロイヤルティにつながります。

消費者はまた、社会的責任やインクルージョンを示す企業に、これまで以上に惹かれるようになっています。ニールセンの報告によると、消費者の66%が、社会的影響に積極的に取り組んでいる企業の製品に対して、より高い金額を支払うことを厭(いと)いません。

ある全国調査では、92%の消費者に、障がい者を積極的に雇用・支援している企業を支持する傾向があることがわかりました。これは、消費者が、包摂的かつ社会的責任を果たしていると認識される企業を選ぶ傾向が強いことを示しています。

消費財をより物理的に利用しやすくすることにより、市場や評判におけるメリットを得るだけでなく、本質的な倫理的・法的責任を果たすこともできます。多くの国々が、自社製品のアクセシビリティを確保することを企業に義務付ける法的枠組みを導入しています。

例えば、Americans with Disabilities Act(障害のあるアメリカ人法)には、米国における製品パッケージとラベルに関するガイドラインがあります。同法は、パッケージに対する特定のアクセシビリティ機能は義務付けていないものの、合理的な使いやすさが提供されていない場合、同法に基づいて苦情を入れることができます。

最終的には、消費者向けパッケージ商品や小売商品をよりアクセシブルにすることは、単純に正しい行いであるだけでなく、市場と社会の両方における長期的な成功につながる賢明なビジネス上の決断なのです。

ウマ・ギルカ氏、グローバル・シェイパー、パロアルト・ハブ

模範を示す

同様に、欧州アクセシビリティ法は、EU全域の製品が特定のアクセシビリティ基準を満たすことを義務付けており、インクルーシブなパッケージの使用を奨励しています。これらの法的義務に積極的に取り組むことにより、企業はコンプライアンス違反による潜在的な罰金、訴訟、風評被害を回避することができます。

さらに重要なのは、アクセシブルな製品を設計することにより、企業は、誰もが全面的に市場に参加できる、より公平な社会を積極的に創造することです。

著名な消費者向けパッケージ製品企業のいくつかは、すでに障がい者にとってより物理的に利用しやすい製品作りに向けて歩み始めています。

プロクター・アンド・ギャンブル(P&G)社のハーバルエッセンスは、視覚障がい者がシャンプーとコンディショナーを区別できるよう触覚マークを付けた、北米初となる大衆ヘアケア・ブランドとなりました。

Rare Beauty(レアビューティ)はCasa Colina Research Institute(カサ・コリーナ研究所)と提携し、手先が不自由でも簡単に開け閉めできる製品の特徴を特定。トミー・ヒルフィガーは、障がい者と共に、障がい者のために作られた、より簡単に着ることができる衣服のラインを立ち上げました。

戦略的優位性

これらの例は、ブランドによるアクセシブルデザインの取り組みが拡大していることを示すとともに、消費者のニーズに対応していることを反映し、大きなビジネスチャンスがあることを証明しています。

消費者向けパッケージ商品の物理的アクセシビリティを改善するのは当然の流れです。アクセシブルな製品設計に投資する企業は、新たな収益源を確保し、顧客満足度を高め、ブランドの評判を高めることができるからです。

さらに、アクセシビリティを考慮したデザインは、高齢の消費者から一時的な障がいを持つ消費者まで、より幅広い層に恩恵をもたらすイノベーションにつながります。

結局のところ、消費者向けパッケージ商品や小売商品をよりアクセシブルにすることは、単に正しい行いであるだけでなく、市場と社会の両方における長期的な成功につながる賢明なビジネス上の決断なのです。

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