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新型コロナウイルスが解き放った、医療用酸素の革新

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新型コロナウイルスは、医療用酸素の供給に対する関心をこれまでにないほど呼び起こし、永続的かつインパクトのある技術革新を多くもたらしました。 Image: REUTERS/Navesh Chitrakar

Evan Spark-DePass
Strategy Consultant, Unitaid
  • 新型コロナウイルスがもたらした数少ない明るい要素のひとつとして、世界中の患者に医療用酸素を供給する方法を早急に見直す必要に迫られたことが挙げられます。
  • 現在、厳しい環境下を含めて、患者にとって重要な酸素を供給することにより生活を変える技術革新が生まれつつあります。
  • 過去数年間で開発された製品は、中低所得国における酸素へのアクセスに革命をもたらす可能性を秘めています。

2020年6月、新型コロナウイルスの波が世界中に広がったとき、NASAのエンジニアであるジョン・グラフ氏は、NASAの通常の宇宙開発とはかけ離れた課題に直面していました。彼は、呼吸器ケアの解決策を切望する、恵まれない国々における緊急のニーズに応えるために、宇宙服用の酸素を製造するために設計された技術を再利用する方法を考えていたのです。こうした試みを行っているのは、グラフ氏だけではありませんでした。世界中のイノベーターたちが、長い間放置されてきた問題に取り組んでいたのです。「どうすれば、患者、特に遠隔地の患者が医療用酸素を利用できるようになるのだろうか」という問題です。

新型コロナウイルスのパンデミック渦、工学の学位とガレージを持つ人のほとんどがこの問題に取り組んでいるようでした。フォードやGMのような自動車メーカーは人工呼吸器の製造にシフトし、メルセデス・ベンツはF1エンジンの製造から持続陽圧呼吸器(CPAP)の製造に移行しました。ケニアセネガルのようなサハラ以南のアフリカ諸国では、企業が3Dプリンターで作った呼吸ケア機器を開発することで対応。これらは、輸入品よりも安価で迅速に製造できるよう設計されていました。

必要性が発明の母であるならば、数十年にわたる酸素技術への投資不足は、2020年に突如、集団的な認識として結実したのです。これが、投資と技術革新の波に火をつけました。

医療用酸素の革新における新型コロナウイルスの影響

パンデミックの初期段階には、酸素濃縮装置の限界について、すでに多くのことが知られていました。患者のベッドサイドで酸素を発生させるこの装置は、もともと設備の整った病院のために開発され、厳しい環境条件下では性能をうまく発揮できないことが多くあったのです。酸素の需要が急増したことにより、こうした限界が露呈し、ユニセフとOxygen CoLab(オキシジェン・コラブ)、メーカーが協力し、遠隔地や十分なサービスを受けていない人々のニーズに合わせて製品を革新し、調整する道が開かれました。その結果生まれたのが、ドライブデヴィルビスとSanrai International(サンライ・インターナショナル)によるPulmO2です。PulmO2は、エネルギー効率、使いやすさ、修理のしやすさ、高温多湿で埃っぽい環境でのレジリエンスを特に考慮して設計された、世界初の目的適合型酸素濃縮器です。

ハーバード大学医学部教授のトーマス・バーク博士は、2020年よりかなり前からバブルCPAP装置を試作していました。呼吸困難な新生児に施す、簡単かつ非侵襲的な呼吸補助として開発されたこの装置は、高価であるとともに、安定した電力が不可欠でした。バーク博士は、パンデミックが、コストと電力供給のハードルを克服する設計による改良型バブルCPAP装置を配備することによって、世界中の乳幼児の健康と幸福を迅速に支援するまたとない機会であることを認識していました。博士が設立した組織であるVayu Global Health(ヴァーユ・グローバルヘルス)は、超低コストかつ持ち運びができ、電気を使わない装置を開発。このバブルCPAP装置は、ウクライナのような紛争地域を含む低資源環境において貴重であることがすでに証明されており、現在、ウクライナ国内の小児科医において使用されています。

2020年代初頭の緊急を要する状況は、酸素ケア製品における長年の格差にも光を当て、再設計を促しました。

ユニットエイド戦略コンサルタント、エヴァン・スパーク=デパス氏

新型コロナウイルスによるパンデミックはまた、高所得諸国の想定外とも言える環境においても、前例のない既存の呼吸ケア技術の応用を促しました。例えば、2020年にニューヨーク市が新型コロナウイルス感染者で溢れかえった際、収容しきれない患者を管理するためにセントラルパークに野戦病院が設置されました。こうした施設において、患者のベッドサイドと酸素源を迅速かつ直接接続するために使用されたのが、オメガ・フレックス社が開発した、フレキシブルな医療用ガス配管製品であるMediTrac(メディトラック)です。この効率的な配備を目の当たりにしたことにより、現在、世界的な医療コミュニティが同様のアプローチをサハラ以南のアフリカで使用する機会を探っています。硬い銅管を設置するのには時間がかかり、間違った配管は危険につながる可能性があるからです。

2020年代初頭の緊急事態は、酸素ケア製品における長年の格差にも光を当て、再設計を促しました。パンデミックの最中に発表された研究では、血中の酸素濃度が低いことを検知するために使われる、従来のパルスオキシメーターは、肌の色が濃い患者を診断する際の有効性が低いことが明らかになりました。現在研究開発中の次世代パルスオキシメーターは、この欠点を修正することを目指しており、パンデミックによるもう一つの不幸中の幸いだと言えるでしょう。

医療用酸素イノベーションの現状

現在、ようやく2020年以降に起こった酸素製品の技術革新の規模を振り返ることができるようになりました。ユニットエイドの最新報告書「The Medical Oxygen Innovation Landscape(医療用酸素イノベーションの現状)」は、まさにその検証を行っています。この報告書によると、ここ数年で開発された製品は、中低所得国における酸素へのアクセスに革命をもたらし、数十年間放置されてきた状況を覆す可能性を秘めています。

しかし、これらの技術革新は万能ではありません。いくつかの製品は、その代替となる製品よりかなり高価です。また、低資源環境での試験がまだ行われていないものもあり、高所得環境および実験室の環境とは全く違う課題が存在する可能性があります。さらに、こうした次世代技術は、低資源で手薄な医療システムに組み込まれなければなりません。つまり、パンデミックの間に開発されたすべての酸素関連技術が、規模を拡大できるとは言えないのです。

次のステップは、有望な製品の費用対効果と実現可能性を厳密にテストし、その結果に基づいて、資源に制約のある保健システムのニーズを満たすよう、製品パイプラインを繰り返し進化させること。このような製品を開発するきっかけとなった勢いと資源を維持することが重要です。

新型コロナウイルスによるパンデミックにおける保健セクターの大規模な再構築は、数十年にわたる低資源環境における酸素製品の技術的停滞を飛躍的に改善する機会を提示しています。これらの技術を再設計するための多大な努力は、世界中で酸素を供給する方法の持続的な変化につながる可能性がある一方、そのためには継続的かつ緊急な努力が不可欠なのです。

ユニットエイドは、この記事で取り上げた組織であるVayu Global Health Innovations(ヴァーユ・グローバルヘルス・イノベーションズ)に出資しています。いかなる技術についての言及も、将来的な資金提供の保証や約束を示唆するものではありません。

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