起業家が投資家と上手く付き合う4つの方法
起業家にとって、投資家に自社の技術を簡潔に説明することが課題の一つとなっています。 Image: Getty Images
- 起業家は、自社の技術の価値を説明し、売り込む方法を学ばなければなりません。
- ベンチャー企業が直面する課題が調査により明らかになっています。
- イノベーターや起業家が投資家とより効果的に関わるための4つの方法を説明します。
イノベーターは興味深い課題に直面しています。ほとんどの企業は、世界を変えるテクノロジーの開発に重点を置いており、そのテクノロジーをどう説明するかは二の次になりがちです。しかし、成功を収めるためには、投資家、顧客、規制当局、そして一般市民に対して、テクノロジーの価値を売り込む必要があります。
昨年、私たちはスイス、米国、中国、英国で開催された著名なテクノロジー、気候、健康関連のイベントに参加した100社以上のベンチャー企業を対象に調査を行いました。調査対象となった企業の成熟度は、スタートアップから株式公開を目指して成長段階にあるユニコーン企業まで、様々でした。
取り組む課題は、特定の気候問題から、がんの治療、SaaS(Software as a Service)の開発まで多岐にわたります。いずれも素晴らしい発明を成し遂げる優秀な人たちですが、彼らは一様に、特に投資家との効果的なコミュニケーションに苦労していると述べています。
イノベーターが投資家と関わる際に直面する4つの課題と、それらを解決するためのアイデアをいくつか説明します。
1. 投資家との関係構築
イノベーターにとっての最優先事項は、投資家とのコミュニケーションの改善です。開発資金を調達できなければ、発明品を世に送り出すことはできません。つまり、投資家との関係を構築する必要があるのです。
コミュニケーションが難しい理由の一つは、投資家のことがよく分からないと感じているからです。これは理解できるでしょう。投資家を求める企業は極めて多いため、適切なイベントに招待されるか紹介がない限り、彼らに連絡を取るのは難しいからです。さらに、イノベーターの大部分は、コンピュータープログラマーや生化学者など、同じ専門分野の仲間とのつながりによりビジネスを始めているため、資金調達の経験や、頼れる人脈がほとんどありません。
また、投資家も常に協力的というわけではありません。例えば、バイオテクノロジーや気候関連技術などのピッチ(短い事業説明)に対して、投資家が関心を持っているかをイノベーターが知りたいとしても、その投資家のウェブサイトやソーシャルメディアから判断することは難しい場合が多いのです。
投資家は、最高の案件に関してはいつでも話を聞く用意があると公言しています。しかし、本当に幅広いイノベーターを惹きつけたいのであれば、どのような案件を探しているのかをコミュニケーションチャネルを通じてより明確にする必要があるでしょう。関心のある業界や、提供可能な資金規模を明確にすることが、大きな一歩となります。
2.「エレベーターピッチ」を完璧に
イノベーターたちは、メッセージを簡潔にまとめることに苦労すると述べています。どのような内容であっても難しいものですが、新規テクノロジーを短く説明するのはことに困難です。
もしあなたが、これまで誰も見たことのないものを開発したのであれば、投資家への説明はさらに難しくなります。なぜなら、投資家にはそれを文脈に沿って理解する方法がないからです。イノベーションが優れているほど、この難しさは増大します。
そして、通常、企業が成長するにつれ、より多くの課題を解決することになり、自社の事業内容を説明するのがさらに難しくなります。
どの起業家も一貫して、投資家に対して何を優先して伝えるか、そして自社のビジネスの複雑性をいかに理解しやすくまとめるか、ということが最大の課題であると語っています。
最も良くないのは、イノベーターが一貫して競合他社のほうが自分たちよりもうまくやっていると述べていることです。これは競争心から来るもので、ある程度は当然であり、賞賛に値します。しかし、掘り下げてみれば、彼らはすでに何を改善すべきかについて考えを持っているのです。
素晴らしいストーリーを語るのは難しいことですが、物事をシンプルにするのに役立つ簡単なステップがあります。まず、技術に詳しくない親戚を見つけます。13歳の姪や、祖父などがよいでしょう。できるだけ簡単に、自分が何をしているかを伝えます。そして、そのストーリーを繰り返してもらいましょう。あなたが持っている知識をすべて駆使してもかなわないような方法で、あなたの仕事がシンプルに説明されていることに気付くでしょう。
3. 競合他社から学ぶ
イノベーターは、自社よりも競合他社のほうが、実現できることを誇張して伝える、つまり良く言えばメッセージをうまく「簡素化」して伝えることで、より優れたコミュニケーションを行っていると考えています。
競合他社が本当に自社の技術力を誇張しているかどうかを示すデータはありませんが、ここで競合他社のコミュニケーションと呼ばれるものは焦点が絞られ、明確なものであり、おそらく既存企業によるものだろうと推測されます。
イノベーターは競合他社から学ぶことができます。ストーリーを簡潔にした後は、より興味を引くストーリーにする方法を考える時です。イノベーションの仕組みを誇張すべきではありませんが、創造性は投資家がどのようにメッセージを理解するかを変えることができます。
4. 業界ネットワークを持つ投資家を探す
イノベーターは、何よりもまず、投資家に自社の業界に関する専門知識を求めていると言います。つまり、特定の業界に関する知識をアピールできるベンチャーキャピタル(VC)には、大きな利点があるということです。投資家側はこれを、社内チーム、投資先企業、またはオピニオンリーダーシップを通じて得ることができます。
しかし、このシンプルな要件を満たすVCはほとんどありません。私たちは、スタートアップ企業データ事業者のディールルームが「著名である」とした欧州のVC12社を対象に調査を行いましたが、その3分の2は、自社の業界における専門分野を明確に定義していませんでした。また、4分の3は、ポートフォリオ企業が人事およびその他の部門を拡張するにあたってサポートすることのできる、社内の専門家やアドバイザーを用意していませんでした。
アンドリーセン・ホロウィッツ(略称a16z)のような有名なVC一社につき、数十、数百もの投資家がいます。つまり、イノベーターに資金調達するための競争が激化しているということですが、同時に、状況が複雑化していることも意味しています。より多くのイノベーターを惹きつけたいのであれば、投資家はまず、実際に誰に投資しようとしているのかを明確にすることから始めるべきでしょう。