ビジネスにおける障がい者インクルージョンが極めて重要な理由
世界経済フォーラムとThe Valuable 500は、グローバルビジネスのエコシステム全体で障がい者インクルージョンを推進しています。 Image: Unsplash/ThisisEngineering RAEng
- 世界保健機関(WHO)の推計によると、世界人口の15%から20%にあたる13億人以上が障がいを持っています。このグループは、その友人や家族を含めて13兆ドルの消費力を有しています。
- 広範な調査により、企業およびパブリックセクターにおけるインクルーシブな政策と持続的なダイバーシティプログラムが、より質の高い意思決定とイノベーションの拡大につながるという、永続的な利点が明らかになっています。
- 世界経済フォーラムと、ザ・バリュアブル・ファイブハンドレッド(The Valuable 500)は、グローバルビジネスのエコシステム全体で障がい者インクルージョンを推進し、障がいと共に生きる人々にとってよりインクルーシブで公平な経済の構築に向けて連携しています。
12月3日の国際障がい者デーは、障がい者に対する認識を高め、受容を促進するための道標です。世界保健機関(WHO)の推計によると、現在、世界人口の15%から20%にあたる13億人以上が障がいを持っています。
今年の国際障がい者デーは、アラブ首長国連邦で開催された国連気候変動枠組条約第28回締約国会議(COP28)と重なりました。この貴重な機会は、障がいと気候の結びつきを考える上で重要な意味を持ちます。例えば、ハーバード・ロースクール・プロジェクト・オン・ディスアビリティ(Harvard Law School Project on Disability)の共同設立者兼エグゼクティブ・ディレクターであるマイケル・アシュリー・スタイン氏によると、熱波、ハリケーン、洪水などの気候非常事態において、障がい者が死亡または負傷する確率は2倍から4倍高くなっています。
障がいを抱える人々は多様でそれぞれが異なります。障がいは、目に見えるもの、見えないもの、一時的なもの、永続的なものなどさまざまです。高齢者の増加や生活習慣病の増加などにより、障がいと共に生きる人々の数は増えており、ほとんどすべての人が、人生のどこかで一時的または永続的に障がいを経験することになります。
ビジネスにおける障がい者インクルージョン
企業およびパブリックセクターにおけるインクルーシブな政策と持続的なダイバーシティプログラムは、より質の高い意思決定とイノベーションの拡大につながり、永続的な利益をもたらすことが、広範かつ多角的な調査により明らかになっています。多様な従業員を擁する組織は、変化への適応力が高く、変革をリードする最前線に立つことが多いのです。
英国の中堅企業を対象とした、インベステックによる最近の調査では、環境、社会、ガバナンス(ESG)の強力なパフォーマンスが、企業の事業運営やリスク管理戦略を強化し、ブランドの評判を高め、潜在的な投資家、買収者、パートナーにとっての魅力を高めるという関連性が浮き彫りになりました。また、PwC(プライスウォーターハウスクーパース)の2022年版「グローバル投資家意識調査」によると、投資家の4分の1以上は、企業が社会や環境に有益な活動を行っている場合、投資収益率が低くてもその企業に投資を行うと回答しています。
13兆ドルとも言われる障がい者とその家族の消費力は、見過ごすことのできない重要な市場です。労働力と顧客層に障がい者を含めない企業は、膨大な人材と潜在的な収益を逃しているのです。
「世の中の仕組みが、障がい者にとって多くの経済的、社会的、文化的、環境的障壁を生み出し、他の人々と同等の生活や参加を妨げていることを忘れてはなりません。私たちはこのことを認識し、個人の障がいに注目するのではなく、誰もが成長できる環境をサポートするために何ができるかに焦点を合わせる必要があります。」と、PwCのグローバル・ディスアビリティ・インクルージョン・リーダーであるレアンドロ・カミロ氏は、ザ・バリュアブル・ファイブハンドレッド(The Valuable 500)との最近の対談で述べています。
「人間を中心に置きテクノロジーを活用する組織として、障がい者インクルージョンとアクセシビリティへの強いコミットメントが、成功に不可欠な要素だと私たちは考えています」。
インクルーシブなビジネス
障がい者の排除をなくすために協力する500社で構成されるグローバルビジネスパートナーシップ、The Valuable 500は、世界経済フォーラムのニューエコノミー・アンド・ソサエティ・センターと共に活動しています。具体的には、障がい者のインクルージョンを阻む3つの主な障壁である、インクルーシブ・リーダーシップ、インクルーシブ・レポーティング、インクルーシブ・レプリゼンテーションに対処するための3つのアクションを主導してきました。
インクルージョンの気運は「草の根」から始まることがよくありますが、それを醸成するのはトップであるべきです。
”- インクルーシブ・リーダーシップとは、組織のあらゆるレベルのリーダーが、障がい者インクルージョンの推進と実践に取り組むことを意味します。スイス・ダボスで開催された世界経済フォーラムの年次総会で、The Valuable 500の「ジェネレーション・バリュアブル(Generation Valuable)」プログラムが発表されました。同プログラムは、71の組織において、障がいのある75人のマネージャーを経営陣のメンターとペアリングし、障がいと共に生きる人々が自信をもってリーダーシップをとる地位に就ける未来を形作ることを目指しています。
- インクルーシブ・レポーティングは、企業の障がい者インクルージョンに向けた取り組みへの透明性を確保するものです。2023年の同フォーラムの年次総会で、The Valuable 500は「ESGと障がい者データ:インクルーシブ・レポーティング(ESG & Disability Data: A Call for Inclusive Reporting)」を発表しました。これは、障がい者インクルージョンに関する5つの主要業績評価指標を軸に、ビジネスコミュニティが足並みを揃えるよう呼びかけるものです。2025年に東京で開催予定の「バリュアブル・ファイブハンドレッド・アカウンタビリティ・サミット(Valuable 500 Accountability Summit)」は、企業が進捗状況を共有し、インクルーシブ・レポーティングへのコミットメントに対する説明責任を果たす機会となります。
- インクルーシブ・レプリゼンテーションは、メディアや広告において障がい者が正しく、かつポジティブに描写されることを保証するもので、この条件を満たすグローバルビジネスケースを作成するためのレポートが近々発表される予定です。ニールセンとオープン・インクルージョンは、すでにエビデンスベースの実証を始めていますが、グローバルなデータセットはまだありません。このような調査により、障がいと共に生きる人々のインクルーシブ・レプリゼンテーションが世界的にどのように定義されているかが明らかになり、それを実践している企業が特定され、インクルーシブな表現戦略と実践のためのデータ主導型のビジネスケースが構築されていくでしょう。
The Valuable 500に新たに加わったイケアグループのCEO、ジェスパー・ブローディン氏は「私たちは、事業を展開する社会の多様性を、当社の経営陣と社員にも反映するべきであると考えています。イケアが常に人々が帰属意識を感じられる場所であることを願い、多様でインクルーシブなチームを有することで、より革新的で、より多くの人々にかかわりのある存在になれると確信しています」と述べています。
イケア、PwC、サノフィをはじめ、世界経済フォーラムの「ライトハウス」プログラム参加企業などは、障がいと共に生きる人々のインクルーシブな職場づくりで優れた実績を上げています。
「インクルージョンの気運は『草の根』から始まることがよくありますが、それを醸成するのはトップであるべきです。足並みを揃えて取り組むことで、組織全体の構造変革を引き起こすための十分な力が生まれるでしょう」と、サノフィのダイバーシティ・カルチャー・アンド・エクスペリエンス担当チーフ・オフィサーであるラジ・ヴァーマ氏はコメントしています。
障がい者インクルージョンは、道徳的な義務であるだけでなく、ビジネス上の義務でもあるのです。よりインクルーシブな世界を構築するために、私たちは、よりインクルーシブな表現、アクセスしやすいコンテンツ、そして、アカウンタビリティを追求し続けなければなりません。
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