「協力」がグローバル経済システムを強化する鍵 – 今こそ、団結の時

本稿は、アラブ首長国連邦の日刊新聞アルバヤン紙による、世界経済フォーラム取締役のミレク・デュセクのインタビューを編集・要約したものです。インタビューは、ドバイで開催されている「グローバル・フューチャー・カウンシル2023 年次総会」にて行われました。

「世界は、地政学的緊張の高まりから不確かな経済見通し、気候変動、自然、エネルギー危機に至るまで、複雑に絡み合った多くの課題を抱えています。この分裂の時代に、私たちは、地域、産業、視点を超えて協力し、差し迫った危機へのソリューションを見出すことで、より持続可能でレジリエント（強靭）な世界を築く基盤を整える必要があります。」

「グローバル・フューチャー・カウンシル2023 年次総会は、専門家たちが、テクノロジーの管理、社会のレジリエンスの向上、経済成長、地球の保護などに関して、これまで考えもしなかったような事実や反対意見に出会い、意思決定を改善するための新たな洞察を生み出す機会となります。」

「世界の分裂と二極化が進む中、国、産業、分野を超えた信頼構築と協力が、これまで以上に重要視されています。本会合では、成長に関する分野横断的なセッションにおいて、現在の状況下での経済成長が何を意味するかを探り、私たちが目指すべき成長のあり方を提案します。成長を実現かつ維持するために不可欠な、貿易、投資、アイデアの交換を活性化するためには、生産的かつ効果的に世界が協力する必要があります。」

「教育、スキル開発、雇用創出は、経済成長の中心的な要素です。労働者が未来の仕事に備えるためには、大規模なリスキリングとアップスキリング（技能向上）の取り組みを世界的に推進する必要があります。政府と企業は、教育、リスキリング、社会的支援体制に投資し、個人が未来の労働市場で活躍できる包括的な経済成長を実現しなければなりません。」

「各国は、経済成長と持続可能な開発のトレードオフの深まりに直面しています。世界経済フォーラムの最新の『チーフエコノミスト・アウトルック』が警告するように、特に、政治と金融の不安定さが高まる状況下において、それは顕著になります。包括的な成長、気候行動、社会正義を確実なものとするためには、イノベーションの創出、国境を越えた投資、技術移転が急務です。」

「新しいアイデアやアプローチを重視するイノベーションには、より公平で持続可能かつレジリエントな成長に必要なモメンタムを生み出す力があります。イノベーションを市場にもたらし、差し迫った課題に対処するテクノロジーソリューションを拡大させるためには、デジタル産業とグリーン産業への持続的な資金の確保が不可欠です。本会合では、参加者たちは、サイロ化したアプローチから一歩踏み出して、分野を超えた最新のアイデアを統合し、すべての人の生活の質を向上させるための新たなアプローチを模索します。」

「今年のグローバル・フューチャー・カウンシル年次総会では、生成AI（人工知能）が初めて取り上げられ、この技術の急速な発展が、産業、経済、社会に与える影響について、複数のセッションで議論されます。この技術に対する包括的なアプローチの必要性に応えるため、世界経済フォーラムのAIガバナンス・アライアンス（AI Governance Alliance）は、産業界、政府、市民社会から主要なステークホルダーを結集し、透明性と包摂性あるAIシステムの責任ある設計、開発、展開を推進しています。」

「加速するAIやその他の先進技術の進化により、産業の発展が急速に進むと同時に、生産性も向上しています。例えば、大規模なデータセットを用いて、コンテンツを認識、要約、翻訳、予測、生成できるディープラーニング・アルゴリズムである大規模言語モデルは、クリティカルシンキングや複雑な問題解決スキルを必要とする仕事に役立つ可能性が高いと、世界経済フォーラムの最新の白書で示されています。」

「包括的で持続可能かつレジリエントな経済を促進するために不可欠なのが、官民パートナーシップです。例えば、今週ドバイで発表された世界経済フォーラムの最新の報告書は、中東・北アフリカ地域における企業の気候行動が、いかに経済成長と質の高い雇用創出を促進し、新たなテクノロジーの領域でリーダーシップを発揮することができるかを示しています。」

「世界経済フォーラムは、官民連携を推進する組織として、雇用創出、エネルギー転換、貿易と投資など、グローバル・フューチャー・カウンシルのネットワークで取り上げられる多くのテーマに対し、マルチステークホルダーによる協力機会の拡大に取り組んでいます。」

「グローバル経済システムを強化する唯一の方法は、協力です。世界が直面する多くの複雑な課題に対処するには、産業や地域を超えて、点と点を結ぶ必要があります。包括的なアプローチでソリューションを特定・開発し、建設的な対話を通じて互いに学び合う場を作る必要があります。」