パナマ運河の深刻な水不足がグローバル貿易にもたらす「前例のない挑戦」
170カ国の2,000近い港を結ぶパナマ運河では深刻な干ばつの影響により、貨物船は通過するのに数日から数週間の待機を余儀なくされています。 Image: REUTERS/Aris Martinez
- 気候危機がグローバルサプライチェーンや貿易ルートに及ぼす影響は、ますます拡大しています。
- ここ数週間、パナマ運河では干ばつの影響により、貨物船は通過するのに数日から数週間の待機を余儀なくされています。
- 当局によると、この危機は「前例のない挑戦」であり、「歴史上前例がない」としています。
パナマで発生した深刻な干ばつが、パナマ運河での船舶の長蛇の列と遅延を引き起こし、海運の混乱を招いており、気候危機が世界貿易に与える影響をさらに浮き彫りにしています。
パナマ運河庁(ACPは、水不足のため乾季の数ヶ月間、運河を通過する船舶の数を制限。また、船舶の深さにも制限が課せられ、積載量の制約も強化されました。
ACPは声明の中で、現在進行中の干ばつは「前例のない挑戦」であり、「歴史上前例がない」と述べています。
大西洋と太平洋を結ぶ人工水路であるパナマ運河は、100年以上にわたって国際貿易の主要な幹線航路としての役割を果たしています。
ACPによると、今日、パナマ運河は170カ国の約2,000の港を結び、また発着国の上位は米国、中国、日本となっています。2022年には、船舶の通過が1万4,000回を超え、2億9,100万トン以上の貨物が運ばれました。
しかし、ここ数カ月は長引く干ばつにより、運河の閘門(こうもん)を満たすのに必要な水の量が減少し、そのために通航する船舶数が制限されています。運河の閘門には10万1,000立方メートルの水が必要とされ、水は近くの湖から供給されています。
S&Pグローバル社(S&P Global)によると、船舶数が制限された結果、運河に到着した船舶は数時間から数週間の待機を余儀なくされることになりました。さらに、複数の民間船会社は、運河を通過して荷物を運ぶ顧客に対してサーチャージを導入したと報じられています。
パナマ運河の水不足問題は、気候危機がグローバルサプライチェーンに及ぼす破壊的な影響を浮き彫りにしています。
干ばつがサプライチェーンに与える影響
世界貿易機関(WTO)の世界貿易報告書2022は、「気候変動は各国の経済と貿易の見通しを変えつつあり、将来の成長と繁栄にとって大きな脅威である」とし、さらに「気温の上昇、海面水位の上昇、異常気象の頻発によって、生産性の低下、生産量の不足、輸送インフラの損害、供給の停止といった事態が発生する」と指摘しています。
パナマ運河では、当局が気候危機の影響に備えた対策を進めています。ACPは年初から節水対策を実施し、米国陸軍工兵隊の専門家を起用して長期的な解決策の構築に取り組んでいます。
ラテンアメリカには長い間、一人当たりの水資源量が世界最高水準の国がいくつもありました。しかし、気候危機が悪化するにつれて、干ばつや水不足の問題が深刻化すると専門家は予想。世界銀行によると、すでにラテンアメリカとカリブ海諸国の人々のおよそ4分の1が水不足の地域に住んでいます。
現在、気候変動の影響に負けない強靭なサプライチェーンを作るための取り組みが、世界中で進められています。
例えば、国際民間企業センター(Center for International Private Enterprise) 、国際商業会議所(International Chamber of Commerce)、世界経済フォーラム(World Economic Forum)によって設立された貿易円滑化のためのグローバル・アライアンス(Global Alliance for Trade Facilitation)は、WTOの貿易円滑化協定(TFA) の実施に向けたグローバルな取り組みを支援しています。
TFAは災害救援を明確に取り上げてはいませんが、特に透明性、協調的な国境管理、リスクに基づく戦略、到着前処理、生鮮品の優先的取り扱いといった条項は、効果的に実践されれば、気候関連の災害救援に大きく貢献する可能性を秘めていると専門家は指摘します。
「貿易促進とTFAの実施は、プロセスを合理化し、透明性を向上させ、効率的な物品の移動を支援することで、気候変動へのレジリエンス(強靭性)を強化するための重要な手段となり、より良い災害対応と復旧に貢献します」と、アライアンスのディレクターであるフィリップ・イスラー氏は述べています。
例えばマダガスカルでは、地元当局がアライアンスの支援を受けて、救援物資の通関と調整のための新たな標準作業手順書(SOP)を作成しました。アライアンスによると、その直後、2022年2月にマダガスカルを襲った熱帯サイクロン「バツィライ」による被害が発生した際に、新しいSOPが救援活動の中で重要な役割を果たしました。
さらに、アライアンスは年次報告書2022の中で、「洪水、干ばつ、伝染病など、異常気象による災害は、世界の最貧国の一部で憂慮すべき頻度で発生して人々を苦しめており、気候変動モデルは、このような事態が今後ますます増えていくばかりだということを示唆している」と警告しています。
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