「スキルファースト」が1億人以上をより良い仕事に導く
「スキルファースト」が1億人以上をより良い仕事に導く Image: rawpixel.com/kwanloy.
- スキルファーストは、資格や職歴ではなく、スキルやコンピテンシーに焦点を当てたアプローチです。
- このアプローチは、より包括的で多様な労働力を生み出し、生産性、経済成長、レジリエンスを向上させることができます。
- 世界経済フォーラムはPwCと共同で、最高経営責任者と政府がこれを実現するためのフレームワークを作成しました。
スキルや労働力不足は、ビジネスリーダーたちが直面している大きな課題として上位に挙げられるでしょう。特に、デジタル、グリーン、エネルギーの移行に必要なスキルなど、いわゆる「未来の仕事」に必要なスキルをどのように開発するかについて、彼らは懸念しています。
PwCの第26回年次グローバルCEOサーベイによると、調査対象となった4,410人の最高経営責任者の半数以上が、彼らの業界の今後10年の収益性に大きな影響を及ぼすのは、労働力とスキルの不足であると確信しています。また、世界経済フォーラムが発表した最新の「仕事の未来レポート2023」は、スキルギャップと人材を惹きつけることができないことが、あらゆる業界の組織の変革を阻む主要な障壁になっていると指摘しています。
同時に、世界中の多くの人々が、高収入で質の高い仕事に就くために必要な資格がないために、労働市場から排除されています。これは、個人のウェルビーイング(幸福)や価値観、経済的な見通しだけでなく、その家族や地域社会にも大きな悪影響を及ぼす可能性があります。
このような事態の解決策として期待を持てるのが、「スキルファースト」のアプローチです。このアプローチには、労働市場のあり方を変革する力があります。
スキルファーストが1億人以上に新たな可能性を
世界経済フォーラムが開催したグロース・サミットで発表された、PwCの最新の報告書「スキルを最優先に: 行動のためのフレームワーク」によると、考え方をスキルファーストに切り替えることで、現在の仕事で十分な能力を発揮できていない、あるいは失業している世界中の1億人以上の人々に直接利益をもたらす可能性があることがわかりました。18カ国を対象とした分析によると、労働力の活用不足は、タイでは労働人口の4%、米国では7%、フランスでは13%、ブラジルでは27%、南アフリカでは43%に及ぶといいます。
スキルファーストのアプローチは、従来の採用・定着モデルを覆し、資格や職歴ではなく、その人のスキルやコンピテンシーに焦点を当て、学歴よりも、何ができるのかという点を重要視します。
また、このスキル重視の考え方は、採用後も継続され、キャリアを通じて継続的に能力を開発することに重点が置かれています。
スキルファーストがもたらす変化
スキルを最優先することは、すべてのステークホルダーに大きな変化をもたらすでしょう。企業にとっては、スキルファーストのアプローチをとることで、活用できる人材の潜在的な可能性が飛躍的に高まります。さらに、イノベーションの促進、顧客体験の向上、コスト管理、新規市場への参入など、優先度の高いビジネスの成果を上げるために必要な特定の人材を提供することができる。
多くの企業は、経済的・地政学的な不確実性からステークホルダーや競合他社の圧力に至るまで、外部・内部のさまざまな要因に対応し、ビジネスモデルの刷新を試みています。新たな人材プールへのアクセスは、収益の拡大、収益性、生産性、革新性、持続可能性の目標など、現在および将来の目標を達成する上で重要な役割を果たします。
個人にとっては、スキルファーストのアプローチにより、適切な資格がなければ就くことができないような、スキルアップ、キャリアアップ、高収入の可能性を提供する良い仕事のチャンスを得ることができるようになります。同時に、継続的なスキルアップの機会を得ることで、絶えず変化する雇用市場において、自分のスキルが適切であることを保証します。2021年に、PwCが3万2,500人対象に行ったグローバル労働力調査「希望と不安(Hopes and Fears Survey)」では、大学院卒の46%が「雇用主はデジタルスキルを向上させる機会を与えてくれる」と回答した一方で、義務教育終了程度の資格を持つ人は28%しか同じ回答をしていません。
スキルファーストのアプローチで最も重要なことは、企業が求めているスキルや個人が提供できるスキルの多くが、異なる役割や業界間で移行可能であるということです。例えば、ある企業が情報セキュリティ分野の人材を採用しようとしている場合、サイバーセキュリティやデータ分析のスキルを持つ人材が、少しトレーニングを受けるだけで自社のニーズに合うかもしれません。
社会にとっては、スキルファーストのアプローチをとることで、より包括的で多様な労働力を生み出すことができます。なぜなら、従来の教育の道から外れてしまった人々にも、労働市場でより多くの機会を与えることができるからです。経済界にとっても、スキルや労働力の不足が減ることは、生産性の向上、イノベーションの促進、GDPの成長率の上昇を意味し、さらに将来への備えにもなります。
リーダーに求められていること
このような画期的な変化を実現するためには、単に人事チームの関与だけでは不十分であり、最高経営責任者や政策立案者などの最高レベルのコミットメントが必要です。
PwC UKは、学位がない応募者が会社で働きながら学位が取得できるよう、さまざまなプログラムを導入しています。また、テクノロジストのキャリアパスを新設するなど、変化する経済ニーズに対応できる適切なスキルを確保するため、ネットワーク内で新たなキャリアパスの開発を進めています。
スキルファーストのアプローチを導入するためには、マルチステークホルダーによる徹底した連携が求められるため、世界経済フォーラムとPwCは、最高経営責任者と政府のための首尾一貫したフレームワークを共同で作成しました。
スキルファーストのアプローチは、重要な問題に対するエキサイティングで革新的、かつ結果に焦点を当てた答えです。それは、ネットゼロの世界への移行をデジタル技術が容易にするだけでなく、より包括的かつ公平で、より豊かな社会を創造する、課題をチャンスに変えるものなのです。
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