若者の声を、グローバル課題への取り組みに
今こそ、若者の声を政策形成に反映させる時だ。 Image: Photo by Devin Avery on Unsplash
- 15歳から24歳の若者は世界人口の16%を占めています。
- しかし、若者にとって伝統的な制度は信頼できるものではなく、包摂的で安全なプラットフォームも存在しないため、無秩序な方法で変化をもたらすリスクが高まっています。
- 社会は、若者が声を上げ、自分たちの将来に影響を与える政策を追求し、その形成に関わる機会を実際に持てるようなプラットフォームと道筋を作る必要があります。
15歳から24歳までの若者は世界で11億2,000万人。世界人口の約16%を占め、2030年には13億近くまで増加すると予想されています。
1999年、国連総会(United Nations General Assembly, UNGA)が8月12日を国際青少年の日(International Youth Day)と定めて以来、世界では技術革新が加速しました。そのため、社会の相互関係、消費や情報処理のスタイル、そして従来の公的機関や企業に対する認識や関わり方を一変させました。
Walton Family Foundation(ウォルトンファミリー財団)が最近発表した報告書「Looking Forward with Gen Z(Z世代と共に未来を見つめる)」は、1997年から2012年の間に生まれた、こうした変革を支える世代に関する知見を明らかにしています。世界人口の約26%に当たるこれら18億の若者たちは、「政府や企業、その他の機関が自分たちを優先し、ニーズを考慮してくれることをあまり期待しておらず、社会的正義や気候変動などの課題に対してより進歩的なスタンスをとり」、「届かない声のために立ち上がることが、自分たちのアイデンティティーの中心だと考えて」います。言い換えるなら、Z世代は、多面的なグローバル課題に対処する上で正義、尊厳、平等を優先しているということです。ところが、伝統な制度に対する信頼がない、つまり包摂的で安全なプラットフォームが存在しないため、変化を起こそうとする時に無秩序な手段に逆戻りするリスクが高まっています。
若者に発言力を与え、グローバル課題への対策作りに関わる機会を持たせるために必要なのは、より強力で効果的な世代間の協力関係を確立し、市民と政治の包摂的プラットフォームを構築すること、そして尊厳ある経済的機会を提供し、革新的な教育制度を設計することです。これを実現する方法は三つあります。
1. 包摂的な政治代表制度を作る
世界的に見ても、35歳未満の人が正式な政治的地位に就くのは稀なことです。国連開発計画(United Nations Development Programme)によると、世界の国会議員の平均年齢は53歳。多くの国では、国会議員への立候補資格は25歳です。
そのような中でも、若者による公的なリーダーシップに関して、世界各地で心強い事例があります。例えばアラブ首長国連邦の閣僚の平均年齢は34歳。また、サウジアラビアでは先月、30代半ばのShihana Alazzaz(シハナ・アラザーズ)氏が初の女性閣僚会議事務次長として任命されました。フィンランドのサンナ・マリン首相は36歳。アイスランドのギルバドッティル外務大臣は34歳です。
各国政府は、若者が意思決定プロセスに関わる機会を持てるような、応答性の高い公共政策の策定を目指すだけでは不十分です。政治参加と市民参加を可能にする環境を整え、若者がアカウンタビリティを果たすステークホルダーとなり、変革のプラットフォームとしての公的機関に対する若者の信頼を回復できるようにしなければなりません。
また、包摂的な政治参加は、増大する社会的暴力に対抗することができます。例えば私の故郷、ヨルダン川西岸地区南部にあるヘブロン市では、ここ数年の間に地域紛争で銃が使われるケースが増えています。これには政治的な解釈もありますが、他にも理由があります。その一つは、声を聞き入れてもらうことができ、望む改革を主張し、信頼できる代表政党に発展させることができる、市民参加のための、または選挙を通じた政治参加のための信頼できるプラットフォームが存在しないことです。
2. 経済的機会への尊厳ある道筋を作る
新型コロナウイルスの感染拡大以前であっても、若者の失業は他のグループに比べて3倍も高い水準にありました。新型コロナウイルス感染拡大の余波で、パンデミック(世界的大流行)前に就業していた若者の6人に1人が職を失い、40%が収入の減少を報告しています。女性や移民などの疎外された若者や、貧しく脆弱なコミュニティに属する若者にとって、ディーセント・ワークの獲得と維持はいっそう困難になっています。
グローバル経済がパンデミックの影響から徐々に脱却し、各国が世界的なインフレに対処していく中で、若者が経済的機会を得ることは、低所得国を中心により困難になるでしょう。国際金融協会(Institute of International Finance)によると、2021年に世界の債務は過去最高の3億300万ドルに達し、第二次世界大戦以降の最高水準に急増しました。国際通貨基金(IMF)は、各国が債務返済のために教育、保健、社会的保護への支出を削減しなければならないとしています。さらに、金利の上昇により借入の負担はさらに大きくなります。若者はこの先、食料品などの重要品への支出を減らさざるを得なくなるでしょう。
経済的機会の平等は、一般に尊厳のある生活の核となるものですが、政府の対応だけでなく、企業が果たすべき役割もあります。官民連携の活用や、ビジネスに適した環境作り、社会起業家のエコシステムの強化により、新たな雇用機会を創出し、革新的で応答性の高い経済マインドセットを育成することができます。
3. 質の高い教育への平等なアクセスを実現する
教育格差は依然として大きく、特に低所得国では多くの人にとり中等教育を受けることが夢のような状況です。「エコノミスト(Economist)」の報告書によると、授業を受けていない学齢期の子どもの割合は、2000年の26%から、2018年には17%まで低下したにも関わらず、「(世界の子どもの90%が居住する)開発途上国の10歳児のうち、簡単な物語を読み、理解できる子どもは半分にも満たない」状況です。効果的な対応がとられなければ、新型コロナウイルスのパンデミック下での学校閉鎖の影響で、事態はさらに悪化するとみられます。世界銀行は、「中低所得国の10歳児のうち、簡単な物語を読んで理解できない子どもの割合は、2019年の57%からおよそ70%に上昇した」とし、これらの子どもの生涯収益が21兆ドル消えると推定しています。
急速に変化する雇用市場で若者が活動するためのスキルとツールを備え、競争力を高めるために、各国政府は質の高い教育への平等なアクセスを確保しなければなりません。また官民連携により、教育分野におけるイノベーションに取り組み、労働市場への包摂的で公平な移行とディーセント・ワークの確保を徹底する必要があります。
政治的排除の意識、経済発展の停滞、不平等といった問題は、若者が未来を形作る上での障害となり、全世界においてより包摂的で平和な社会への展望を損ないます。
社会は、若者が政策形成を追求し、そして実際に関わる機会を得るために、自分たちの将来に影響を与える意思決定のためのプラットフォームや道筋を作らなければなりません。こうすることでアカウンタビリティの意識が生まれ、社会においてステークホルダー間の信頼の再構築が促されるのです。
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