ジェンダーに基づく労働形態の撤廃が、アフリカの女性の可能性を引き出す鍵
アフリカの女性たちがインフォーマル経済の歯車から抜け出すために、ヒューマンキャピタルへの投資が不可欠 Image: PICHA Stock/Pexels
- 新型コロナウイルスの感染拡大により、アフリカの労働市場に根強く残る男女不平等が明らかになりました。
- こうした格差は、ジェンダーによる労働分担に裏打ちされており、変化が難しい問題です。
- 女性のヒューマンキャピタルへの投資は、伝統的に強いられてきた役割から抜け出す後押しになります。
新型コロナウイルスの感染拡大をきっかけに、世界を再構築する必要性、特に、女性にとっての世界のあり方を再考する必要性が高まっています。アフリカの労働力という観点から、女性に影響を及ぼす生活基盤の脆弱さや根強い不平等もも浮き彫りになりました。
アフリカでは、女性は小規模な食品加工や自給自足の農業、食料品の取引などのインフォーマル経済に従事する割合が圧倒的に高く、その結果、劣悪な労働条件や貧困に苦しんでいます。これらの分野では、女性たちは主にジェンダー別役割を担っているため、不公平な土地所有法やフードサプライチェーンへのアクセスの悪さなどの障壁に直面し、力を発揮できずに不利な立場に置かれているのが実状です。
アフリカの労働力と経済における女性の可能性を引き出すためには、女性のヒューマンキャピタル(人的資本)への投資を早急に検討する必要があります。人材開発のアプローチは、経済ではなく人間を豊かにすることで、人間のウェルビーイング(幸福)を高めることに焦点を当てています。ポストコロナの世界を、アフリカの女性たちが自らの可能性を最大限に発揮できるものにするためには、それぞれが豊かな人生を送るための機会を創出し、選択できる環境を提供することが重要です。
性別による職域分離の解消
アフリカでは、ジェンダーに基づく分業のパターンにより、女性の経済参加の範囲が極端に狭められています。教育水準の男女格差はほぼ解消されているにもかかわらず、女性の雇用機会の増加は進んでいません。女性の大半は、美容師、ファッション小売業、フードケータリングなどのサービス業に従事しています。
パンデミック(世界的大流行)によりり厳しい状況が続く中、女性の育児や介護の負担が重くなっている事実を始め、根底にあるジェンダーの社会化の構造がさらに露呈しました。また、家事負担が増えることで、女性のウェルビーイングや労働条件は悪化してしまいます。このような危機的状況の中、圧倒的多数を女性が占めていた顧客対応や事務職の分野へのテクノロジーの導入が加速し、アフリカの女性が失業へ追い込まれるケースは男性に比べ不均衡に拡大しています。この影響は、キャリアの再構築に必要なスキルを持たない高齢の女性にとっては、特に深刻な問題となっています。
一方で、パンデミック下で食品や農業分野に携わる女性に新たな雇用機会が生まれた事例もあります。ナイジェリアのナイジャーデルタで行われた調査によると、パンデミックにより石油・ガス分野に勤務する配偶者の収入が減少し、食料・農業分野で主要な役割を担う女性たちが経済的に家族を支える立場になったことが分かりました。
しかし、こうした分野を根本的に変革する力は女性にはなく、長期的に見ると、経済力のレジリエンス(適応、回復できる力)の欠如はさらに拍車がかかるものと見られています。例えば、インフォーマル経済における女性たちは、食品小売、原材料から完成品に食品を作り上げること、標準化された食品包装と輸出慣行への対応、構造化された食品・農業ビジネスの構築など、技術的な部分における能力が十分に開発されていません。
固定化されたジェンダー別役割分担が世代を超えて引き継がれることは、女性のキャリアアップの足かせとなります。こうした先入観は、女性の可能性をフルに発揮することを難しくさせるばかりか、労働力としての女性の価値にも影響を及ぼしています。さらに、女性が独立した思考力、自律性、クリティカルシンキングなどの高いスキルを発揮することも難しくしてしまいます。女性の価値を過小評価することで、未熟な労働力として女性を消費する傾向に拍車がかかってしまうでしょう。
女性の就労率を上げるには、女性や少女たちの主体性や自己認識がが高まるよう促す必要があります。自らの可能性や意思決定力を自覚することは、高い成果とキャリアアップにつながります。プロシェア社は、パンデミックが金融業界に起こした変化を「銀行業界全体の人材の戦略的な配置による変化」と表現していますが、女性たちはこうした変化をよりよく活用できるようになるはずです。女性のリスキリング(新たな学び)は、不安定で不確実な上に、複雑で曖昧な世界における次のチャンスに備える上で不可欠です。
選択の力
国連開発計画(UNDP)は「人材開発のプロセスは、個人あるいは集団としてあらゆる人が潜在能力を最大限に発揮し、生産的かつ創造的な生活を送るために必要なチャンスを得られる環境の創出を目指すものである」と訴えています。労働力としての女性の可能性を引き出す上で重要な役割を果たすのは、企業や教育機関です。最新版のグローバル・ジェンダー・ギャップレポートでは、女性の未来の経済的機会のために「政策と実践は、ジェンダーによる職域分離の解消に焦点が当てられたものであるべき」と提言しています。
例えば、ナイジェリアのWISCAR(Women in Successful Careers)は、ロールモデルを通じて女性のキャリアアップの機会を促進しています。私はWISCARメンタリングプログラムのメンティーの一人として、このイニシアチブがキャリアを再構築するための能力とソーシャルキャピタル(社会関係資本)を提供することで、スキル向上の機会を得た女性たちが、中堅から上級プロフェッショナルへとキャリアアップを実現するのを見てきました。
教育システムは、ジェンダーに基づく分業のパターンに対する思考や信念の形成に大きな影響を与えると同時に、女性の就労率低下を改善する戦略的機会も提供します。学校でのジェンダーに起因する慣行を排除することで、早期の段階から女子の就労率向上を促進することができるのです。
パンデミックによる影響は、包括的な解決策なくして、自給自足的な農業・食料システムに従事する女性がレジリエントなビジネスを構築することは困難であることをはっきりと示しました。解決策の良い例のひとつに、国際労働機関(ILO)によるバリューチェーン開発アプローチがあります。輸入業者や幅広い市場との関係を強化することで農家を支援しています。スーダンでは、このアプローチを用いて女性主導のハイビスカス栽培を支援し、女性がハイビスカス製品の生産から取引やマーケティングにまで一貫して携われるようになりました。
このように、女性主導のビジネスへと構造変革をもたらす解決策が用いられ、女性生産者に力を与え、市場の搾取から守ることができた時、真の意味での進歩がようやく形になるでしょう。
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