テレワークの課題を解決に導く、シンプルな取り組み
テレワークで最大限の成果を生み出すには、強力なリーダーシップが欠かせない。 Image: Unsplash/StartupStockPhotos
- 最近実施された調査では、在宅勤務をする従業員が管理者からのケアやサポートを十分に受けられないと、会社に対するコミットメントが200%低下することが明らかになりました。
- 従業員に対してアンケート調査を行うといった小さな取り組みでも、士気を高める効果があることも明らかになっています。
- 別の調査では、管理職の80%が従業員のウェルビーイング(幸福)をサポートしていると回答した反面、そう感じている従業員は46%しかいないという結果が出ています。
- 課題が多いテレワークですが、米国では、従業員の5人に2人以上がテレワークへの移行を歓迎しています。
テレワークが進む中、人々はオフィスワークのどのような点を恋しく感じているでしょうか?おそらく同僚ではない可能性が高いでしょう。毎日と言っていいほどデジタルでつながっているでしょうから。では、上司はどうでしょうか?最後に上司と積極的にコミュニケーションを取ったのはいつだったか、覚えていますか?
新しい調査によると、テレワークで働く従業員が抱く疎外感の大きな原因は、管理者からのケアやサポートの欠如であることが明らかになりました。また、従業員と管理者との間で十分なコミュニケーションが取れていないと、企業全体の士気に致命的な影響を及ぼす可能性があることも指摘されています。
ソーシャルキャピタル(社会関係資本)が不可欠
リーダーシップ育成を支援するバイタルスマーツ社は、2,000人以上の従業員と200人以上の企業幹部に対してインタビューを実施、新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)によって普及したテレワークの影響について、実態調査を行いました。その結果、興味深い事実が浮き彫りになりました。
例えば、半数以上の企業幹部が「テレワークへの移行を強いられたことで企業文化が揺らいでいる」と回答したほか、企業幹部の取り組みと従業員の士気には明白な関係性があることもわかりました。
ソーシャルキャピタルの本質とは、従業員が積極性を持って協調的に業務を遂行する意思があるかという点にあると言えますが、ソーシャルキャピタルを企業が維持できるかどうかを左右する大きな要因は、従業員とのコミュニケーションを欠かさないために管理者がどのような取り組みを行っているか、さらに言えば、管理者がどのような取り組みを怠っているかであることも、この調査から明らかになりました。
企業におけるソーシャルキャピタル意識の高さは、従業員が互いに助け合い、対立を避け、チームとして業務に取り組み、率先して問題解決にあたり、業務を維持するために必要最低限以上の行動を取る、といった姿勢に現れてきます。
シンプルな取り組みが大きな効果を発揮する
従業員に対してアンケート調査を実施するといったシンプルな取り組みだけでも多大な効果があると、同調査で明らかになりました。ウェルビーイング(幸福)のためのヒアリング、カウンセリング、オンライン研修、デジタルツールの提供を通じて、従業員とのつながりを保つことには大きな価値があります。
また、研究者たちは、テレワークが従業員に与える従来とは違ったストレスを認識することも重要であると述べています。フレックスタイム制を導入し育児がしやすい環境を整えたり、業務とは無関係のバーチャルな集まりの開催を推奨したりするといった対応策が必要となるでしょう。
「何の取り組みも行わなければ、ソーシャルキャピタルは簡単に失われます」と、バイタルスマート社の共同創業者であるジョセフ・グレニー氏は、米国ビジネス誌ファストカンパニーの記事で語っています。「喜ばしいことに、企業幹部が実際に行った取り組みのほぼすべてがソーシャルキャピタルに好ましい影響を与えたという結果が出ています」。
コミュニケーションが活発である程士気も高まるという事実も、同じ調査が明らかにしています。「企業幹部がソーシャルキャピタルの向上に積極的であれば、テレワークが企業文化に与えるマイナス面の影響を大幅に抑えることができます」とグレニー氏は指摘しています。
グレニー氏が、「2020年に広まった強制的なテレワーク実験」と表現するこの状況においてひとつ明白になったのは、職場環境が良好であるか否かを決めるのは、働く場所ではなくリーダーシップだということです。
「企業幹部と従業員が物理的に緊密でなくても、リーダーがソーシャルキャピタルを強固にしていくことは可能であり、実際にそう努めることが非常に重要なのです」とグレニー氏は結論づけています。
管理者の取り組みが生産性を高める
別の調査からも、同様の結果が出ています。テレワークをしている従業員の間でコミュニケーションが活発だと生産性が47%上昇すると、ある調査は示しており、これは、逆の視点から言うと、グレニー氏が指摘するように、コミュニケーションが欠如すればコミットメントが200%低下する可能性があるいうことになります。
一方、管理者は、自分の取り組みを過大評価していないか注意する必要があるでしょう。IBMが実施した調査では、従業員に対する管理者の取り組みについて、管理者の自己評価と現場の従業員からの評価との間に深刻なずれがあることが分かりました。
従業員が、新しい方法で仕事に取り組むために必要なスキルを習得できるよう支援「している」と回答した管理者は74%に上ったものの、実際に「受けている」と答えた従業員はわずか38%にすぎませんでした。また、管理者が従業員のウェルビーイング(幸福)をサポートしているかについて、「している」と回答した管理者は80%に上った反面、「受けている」と感じている従業員は46%しかいないという結果も出ています。
ビジネス関連のデータを分析・提供するスタティスタ社の調査によると、中国、ドイツ、米国、英国の従業員の約80%が昨年、テレワークでの業務に満足していると回答しています。最も好意的な反応を示したのは米国の従業員で、42%がテレワークに大満足でこの先もずっと続けていきたいと回答しました。
世界経済フォーラムの「仕事の未来レポート2020」では、新型コロナウイルスのパンデミックによってデジタル技術の進歩が加速した結果、「働き方の未来」がすでに到来しつつあり、膨大な数のオフィスワーカーに影響を及ぼしていることが指摘されています。
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