すべての人がコネクテッドホームに居住できるようにするためには

Image: Dan LeFevre/Unsplash
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IoT
- IoT(Internet of Things)テクノロジーの可能性は、公営住宅部門に恩恵をもたらすと見られています。
- スマートシステムにより、居住者はできることが増え、公営住宅機関は経費を節減でき、省エネが推進されます。
- 世界経済フォーラムの新しいレポートには、コネクテッド・ワールドにより社会的利益をもたらすために、どのように協力すべきかが明示されています。
世界中で新型コロナウイルスの感染が拡大する中、公営住宅機関は、サービスをオンラインに移行したり、在宅テレワークにシフトしたりせざるを得なくなりました。このような状況から、公営住宅機関は、計画的にデジタル化された組織への転換を加速させています。公営住宅機関が次に取るべき行動は、住宅データ標準を採用し、スマートホームの実現に向けて機会をとらえることです。
ピーボディ・グループ、ヴィヴィッド・ハウジング、フラッグシップ・ハウジングなど、多くの公営住宅機関はパイロットスキームを実施し、公営住宅にIoTを導入するメリットを明示しています。このような試験から、個々のIoTテクノロジーは、居住者の生活の質や貸主の収益に、大きなメリットをもたらすことが明らかになりました。
世界経済フォーラムは、新たに発表した「コネクテッド・ワールドの現状に関するレポート」で、社会に公平な形で恩恵をもたらし、保護するコネクテッドデバイスとシステムの可能性に注目し、世界中の政府と企業が取り組むべき最優先事項であると強調しました。
スマートホームは、居住者と貸主両方にメリットがある
公営住宅部門にスマートホームが採用されることにより、居住者とそのコミュニティができるようになることが増え、そのことが、ウェルビーイング(幸福)の大幅な向上、居住者と貸主間の賃貸契約期間の延長につながります。また、公営住宅機関は、IoTテクノロジーの導入により、資産をより効率的に維持・管理できるようになります。
例えば、スマートロックを導入することにより、居住者が就業中であっても修理担当者が室内に入ることができるようになり、修理の過程でこれまで感じていた居住者の心配やストレスを軽減することができます。これにより、修理予約の不履行時に伴うコストが低減され、わずかな修理で済むものが大きな問題に発展することは確実に防げます。
他のデバイスと連動するスマートセンサーは、住居環境の制御を自動化するため、少ないインプットで生活環境を改善し、ガス、水道、電気、電話などの経費が削減されます。公営住宅機関は、スマート温度センサーの導入により、湿気やかびなどの問題を測定、早期に解決することで、高額な修理費がかかる問題になる前に対処することができます。また、スマート水漏れセンサーも、水漏れを検知し、スマート止水栓を稼働させて、大きな損害を未然に防ぐことができるので、修理費を節約し、居住者の家財を守り、修復工事の手間の軽減につながります。
スマート照明は、住居内の視覚的な快適性を向上させ、居住者は、照明スイッチのオン/オフにとどまらず、照度調節にいたるまで幅広いコントロールが可能になります。このようなスマートテクノロジーを活用することにより、住居内環境の制御域が広がり、特に、身体に障がいを持つ人の可能性を広げることに役立つでしょう。
コネクティビティは、低所得市場にも資産が行き渡る新しい事業モデル構築の機会を提供します。
”省エネを推進する
建物からの二酸化炭素排出量は、人為起源の二酸化炭素排出量の40%を占め、全世界における建築ストックの90%は、省エネ基準がなかったり、限定されたりしていた1970年以前に建築されたものです。このような統計の中で見落とされがちなのは、低所得労働者の家庭が直面している問題です。都市が巨大化し、居住スペースの争奪が激化するにつれ、低所得世帯は、都市の中で耐候性と質が最も悪い建物に住まざるを得なくなることが少なくありません。社会に共に住む私たちができる、最もインパクトのあることのひとつは、低所得世帯に現在の省エネ基準を満たす住居を提供することです。
スマートホームは二酸化炭素排出量の低減に貢献することができます。例えば、スマートサーモスタットを使い、必要な時だけ暖房を稼働させることで、居住者は、エネルギーコストを約20%節約することができます。英国の493物件で展開されたスマートサーモスタットの試験的な導入により、今後10年間でエネルギー料金を60万ポンド節約し、年間の二酸化炭素排出量を1.82トン削減することが可能であると明らかになりました。
公営住宅機関が開発計画と既存資産の両面で、二酸化炭素排出量実質ゼロに向かうことは極めて重要です。投資ファンド・マネージャーは、公営住宅機関に、ESGの影響を報告することを要求するようになってきています。スマート公営住宅は、公営住宅機関が環境への取り組みにコミットしていることを実証するのに役立つでしょう。
スマートシステムにより広がる、さまざまな事業モデルの可能性
コネクティビティは、低所得市場にも資産が行き渡る新しい事業モデル構築の機会を提供します。一般家庭のデジタルフットプリントにアクセスできる事業者は、収益性がさらに高まります。
デジタル化により、従来の住宅所有モデルから低初期費用モデルへの移行を構想できるようになりました。低初期費用モデルでは、居住者が電力消費要件や装置性能などの特定のデータへのアクセスを事業者へ提供することと引き換えに、住宅所有にかかる初期費用を下げることができます。また、従来の賃貸モデルから、アズ・ア・サービスモデルへの移行も考えられます。アズ・ア・サービスモデルは、住宅機関が、家賃、エネルギー消費、メンテナンス、インターネット、その他の経費を月額料金としてまとめ、家計のあらゆる側面を適切に管理します。このようなモデルの提供を通じて、利益率の向上と競争力の維持を望むサービス提供者は、意欲的に省コストを図ります。
省エネのコネクテッド家庭電化製品が普及するにつれ、ESCO事業者には住戸レベルでの省エネルギーの実現と収益化が実現可能になります。助成金を受けた供給住宅では、ESCO事業者が政府保証による追加の収入も別途受けられる場合があります。
これにより、低所得世帯は、省エネ高機能製品への高額な初期投資を、時間の経過とともに製品コストを分散させる利用料の支払いによって回避することができ、老朽化した性能の悪い家電製品の廃棄を加速することにもつながります。

「つながっている」未来を創造する
適正なデータ基盤が整備されていなければ、公営住宅部門におけるスマートホームのメリットは実現しません。2018年以降、住宅協会チャリタブルトラスト(HACT)と不動産オープン標準協会(OSCRE)は、70を超える公営住宅機関と協力し、英国住宅データ基準(UKHDS)を策定しています。
同標準の最新版(第3.3版)には、主要顧客データ、顧客要請対応型の修理、資産管理、ケアとサポート、家賃・サービス料回収、開発の引き継ぎなどの、ユースケースのデータ基準が記載されています。最新のユースケースは、居住者からのフィードバックと苦情処理に焦点が当てられる予定です。
テクノロジーが、社会的、経済的、環境的な持続可能性の実現を牽引する、相互接続された未来の世界の「共有現実」の構築に向けて、今こそ私たちは世界規模で協力し、相互接続のメリットを活用すべきです。
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