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安全で効果的な新型コロナワクチン普及への5つのステップ

Vials labelled "COVID-19 Coronavirus-Vaccine" and medical syringe are placed on the European Union map in this picture illustration taken December 2, 2020. REUTERS/Dado Ruvic/Illustration - RC2XEK9ZWEW9

Image: REUTERS/Dado Ruvic/Illustration

Carlos Grau Tanner
Director-General, Global Express Association
Sean Doherty
Head, International Trade and Investment; Member of the Executive Committee, World Economic Forum
  • 新型コロナウイルス感染症ワクチンの実用化が近づく中、どのように世界的に普及させるかが課題となっています。
  • グローバル・エクスプレス・アソシエーションは、タイムリーで安全なワクチンの流通体制を整えるために、各国政府が取るべき重要なステップを提案しています。
  • 具体的には、製品の安全性の確保や、国境でのボトルネックの回避などが挙げられます。

新型コロナウイルス感染症ワクチンは、実用化され次第、迅速かつ安全に世界中に流通させなければなりません。運送業者各社は、すでに、これまでの医療輸送の経験を活かしながら、ロジスティクスの調整とプラン作成に取り掛かっています。

1. 製品の安全性を最優先に

出荷されたワクチンの中身について、混乱が生じるようなことは決してあってはなりません。

世界保健機関(WHO)は、すべての承認済みワクチンに世界共通の製品IDを割り当て、公式のリストを公開し、世界税関機構(WCO)は、新型コロナウイルス感染症ワクチンに標準分類(HS-6)を設定する必要があります。そして、製造国は、他の国が認識できるよう、ワクチン製品の分類決定を事前に行うべきでしょう。

また、偽造を防ぐため、真正なワクチン製品は、認可されたサプライチェーン以外での流通を禁止することとし、サプライチェーンの安全性を確保しなければなりません。

2. 事前計画でロジスティクスを最適化

航空輸送業者は、数千単位のフライトを増便できるよう事前に承認を受けておきます。貨物機のために、着陸、上空通過、空港スロットの許可も迅速に取得する必要があります。空港でも、夜間フライトなどの例外的な運用をサポートできるよう準備しなければいけません。また、国際民間航空機関(ICAO)の「救援活動のための公衆衛生回廊」のコンセプトに概説されているように、隔離、渡航禁止、出発前と到着後の検査要請を、症状がない限り免除するなど、搭乗員も移動できる環境を整えておかなければなりません。

さらに、国境を越える道路運送の円滑化や、国境での専用レーン開設も必要です。ワクチン輸送ができるだけ中断されないようにするには、入国の要件を簡略化し、可能な範囲で自動化しなければなりません。そして、国から国へのワクチン輸送が滞らないことと同時に、各国の検問で警察や軍などによるセキュリティサービスが、ワクチン輸送を停止させることがないようにもしなければなりません。

また、あらゆる規制要件を見直し、効率化や免除をすべきかどうか判断しなければなりません。中央政府から州や地方自治体まで、あらゆるレベルで、ワクチンの流通や保管など、ロジスティック上の取り扱いにライセンスや承認が必要となる場合があります。組織的な取り組みによって、その検討が進められるべきでしょう。

3. 温度管理と危険物のためのサプライチェーンの準備

ワクチンによっては、-70℃程度の超低温での貯蔵が必要と言われています。温度管理された施設でワクチンを優先的に保管できるよう手配するか、場合によっては、すぐにでもそういった施設を造る必要があります。輸送中にドライアイスが必要になるとすれば、特別な危険物取扱手順も求められます。

航空機メーカーも、自社のガイダンスを早急に更新し、対応しなければなりません。航空会社も、安全リスク評価の実施が求められるでしょう。サプライチェーンの安全性を確保するために、RFIDやGPSデータロガーの使用を予定しているワクチンメーカーや輸送業者は、事前にサプライチェーンパートナーとともに、これらのデバイスを承認しておく必要があります。

政府は、輸送業者が出荷できなくなる事態を避けるため、ワクチン輸送業者に向け、遺伝子組み換え生物の分類(UN3245)への準拠などの要件に備えるためのガイダンスを公開する必要があります。可能であれば、出荷ごとに個別に承認を行うのではなく、監査プロセスが導入されることが理想です。

4. 緊急時の国境におけるボトルネックを回避

貿易に関する規定も、合理化・標準化しておく必要があります。パンデミック(世界的大流行)の初期段階において、スムーズな国境通過のために、電子記録や電子決済、デジタルリスク管理プロセスがいかに重要であるかが明らかとなりました。国境管理当局は、電子予備申告データを活用し、サプライチェーン事業者とのやり取りをスピーディーな電子手続きで行うようにしなければなりません。

新型コロナウイルス感染症ワクチンの出荷は、非常に急を要するため、その必要性を宣言し、輸出制限の免除、国境到着前の通関手続き、輸入税の免除などの措置が取られるべきでしょう。そして、同じ基準(WCO)に従ったデータセットが、輸出入双方の通関で機能するようにする必要があります。

特に、熱に弱いワクチンの性質を考慮し、物理的な検査はリスクを踏まえた上で、エンドユーザーの施設など適切な保管施設でのみ行うこととしなければなりません。ワクチンの安全な輸送には温度管理されたコンテナのような特別な輸送機器が必要なことを考慮すると、輸送マニフェストを設けて輸出入での通関手続きを廃し、一時入国・出国による関税や保税・保証の要件も免除が必要となります。

5. ステークホルダー間の協力を確保する

これは、通常の業務以上に、非常に多くの期待を背負ったオペレーションです。さまざまな課題に対し、規制当局と民間企業(特に製薬業と物流業)の協力による、緊急的な対処が必要です。

その一助となるために、世界経済フォーラムは、信頼できる情報の拡散、ワクチンの信頼度向上、普及における課題への対処などを含むアクションに協力してくれるリーダーが集結する場を提供することで、新型コロナウイルス感染症ワクチン接種の支援を行っています。例えば、先日、貿易円滑化のためのグローバル・アライアンスは、東南アジア諸国連合(ASEAN)各国による、新型コロナウイルス感染症ワクチンと関連医療機器の輸入に向けた準備状況を確認するため、米国ASEANビジネス協議会と提携関係を結びました。

これらを含む、多くのパートナーシップがあってこそ、新型コロナウイルス感染症ワクチンの世界的な流通が、最大限スムーズに行われるための準備を整えることができるのです。

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