民間セクターは西アフリカとサヘル地域の強力なパートナー
セネガルのサンルイ市にあるガストン・ベルジェ大学(UGB)にて、コンピューターサイエンス修士課程で学ぶ大学院生 Image: Sarah Farhat/世界銀行
経済成長には社会を変革し、繁栄を加速させ、人々に豊かな生活をもたらす力があります。しかし、経済成長の恩恵を社会の最も貧しい人々に届けるためには、雇用の数と質を高めることが欠かせません。良い仕事に就くことは貧困から脱するための代表的な方法です。これは雇用の創出が優先度の高い開発課題――そして決定的に重要な課題であり続けている理由です。
私は今、 2019年の開発金融フォーラムに向け、コートジボワールのアビジャンへ発つ準備をしているところです。フォーラムの開催を前に、民間セクターは開発の重要なプレーヤーであることを改めてお伝えしたいと思います。活気ある民間セクターは雇用創出の強力な原動力であり、イノベーションと貧困削減を加速し、持続可能な経済成長を支える力を持っています。
世界銀行グループの一員として、最貧国の開発を支援する国際開発協会(IDA) は、最貧国が経済を変革し、生産性の高い仕事を創出できるように、基本的インフラへの投資、貸付・融資へのアクセス、労働者の技能構築、個人と企業による市場アクセスの拡大を最前線で支援しています。
IDAのアフリカ向け支援は過去最高の水準に達しています。この2年間に、IDAは世界各地の開発プロジェクトに総額450億ドルを超えるコミットメントを行い、この内300億ドル近くはアフリカに対するものでした。IDA第18次増資(IDA18)では、対象となる3年間が終わる2020年6月までに450億ドルをアフリカに提供することになっており、進捗は順調です。サヘル諸国に対するIDAのコミットメントは、IDA18の最初の2年間で37億ドルに達しました。これはIDA17の同期の実績(18億ドル)の2倍を超えています。
開発金融フォーラムは、世界銀行グループが毎年開催しているもので、今年で5回目を迎えます。官民セクター、国際機関の他、各地域のステークホルダーが一堂に会し、後発開発途上国 の投資環境を変革する機会を探り、制約の解消に取り組みます。参加者はディスカッションを通じて互いの役割に対する理解を深め、高い効果が期待されるアイデアや取組み、パートナーシップを検討します。
2019年の開発金融フォーラムは、「G20アフリカとのコンパクト」に沿って西アフリカ諸国とサヘル諸国に焦点を合わせ、成長と雇用創出の強力な原動力になると期待される3つのセクター、すなわちアグリビジネス、運輸・物流、デジタルインフラを中心とした議論が行われる予定です。
西アフリカでは、農業が地域のGDPの35%、現役労働力の60%を占める重要セクターとなっていますが、アフリカの他の地域と比べると、バリューチェーンの構築は大幅に遅れています。政府と民間セクターは協力して、農家と食料生産者を質の高い市場機会とつなぎ、競争力のある活気にあふれた農業バリューチェーンを構築する必要があります。雇用を創出し、所得を向上させるためには、生産、加工、流通を含む農業バリューチェーンの整備が欠かせません。
アフリカの社会経済変革にとって、運輸は非常に重要です。 アフリカでは交通インフラと輸送システムの未整備により、農村人口の70%超に相当する約4億5,000万人が農業バリューチェーンとつながっていません。西アフリカとサヘル地域の主要都市では、企業の24%から58%がビジネス上の深刻な障害として運輸を挙げています。今後、多くの都市・地域に交通網が整備され、気候への影響が少ない効率的で安全な運輸サービスが普及すれば、教育、雇用、サービスにアクセスできる人が増え、企業の市場アクセスも拡大するはずです。
サブサハラ・アフリカは世界で最も若年人口が多い地域でもあり、デジタル革命が起これば、アフリカがたどる軌道は大きく変わる可能性があります。デジタルエコノミーへの迅速な移行は生産性を向上させ、テクノロジーの受容が進むアフリカに雇用をもたらします。例えば、アフリカは人口に占める電子マネー利用者の割合が世界で最も高く、これまで金融包摂の進展を妨げてきた障壁を崩し、起業家にビジネスチャンスをもたらしています。しかし、デジタルインフラの面では西アフリカとサヘル地域の国々は後れを取っています。世界銀行グループは、2030年までに全ての女性、男性、企業、政府にデジタル化の恩恵をもたらすための取組み「アフリカのためのデジタルエコノミー(Digital Economy for Africa)」を推進していますが、こうした投資が重要である理由はここにあります。
世界銀行グループは、これらの重要領域でアフリカ地域のIDA対象国を力強く支援しています。コートジボワールでは、世界銀行が資金を提供する情報通信技術を利用した農業プロジェクトによってデジタルサービスへのアクセスが改善し、デジタルプラットフォームを活用した農業生産性と市場アクセスの向上が期待されています。本プロジェクトは、コートジボワールの人口2,370万人の約4分の1にあたる、610万人の自作農に恩恵をもたらす見込みです。
西アフリカでは、西アフリカ地域通信インフラ・プログラムを通じて、アフリカ海底通信ケーブルシステム「African Coast to Europe(ACE)」に6カ国を接続する取組みを支援しました。その結果、インターネット接続料が劇的に下がり、ほとんどのケースで半額以下となったため、多くの学校、家庭、中小企業が以前よりも質の高いインターネットに接続できるようになりました。例えばガンビアでは、インターネットアクセスの卸売価格がかつての5分の1を切るまでになっています。
また、世界銀行グループはIFC(民間セクター開発に特化した世界銀行グループ機関)を通じてガーナのテマ港に投資し、新しい深水コンテナターミナルの建設と運用を支援しています。本プロジェクトは貿易の促進を通じてガーナ経済を刺激し、民間セクターにおける雇用創出を支援します。テマ港はガーナの首都アクラから見て戦略的に重要な地理的位置にあることから、同国のコンテナ輸送の90%超を処理する他、ブルキナファソ、ニジェール、マリといった近隣サヘル諸国向けの輸送も取り扱う予定です。
開発金融フォーラムは、幅広い官民セクターの専門家が一堂に会し、サヘル地域や西アフリカなど、様々な地域の経済改革に共同で取り組む機会です。IDA、そして世界銀行グループは、アフリカが民間投資を動員し、質の高い雇用を創出し、現地の人々に恩恵をもたらす高い開発成果を達成できるよう、地域のパートナーと力を合わせていきます。
*この記事は、世界銀行のブログを転載したものです。
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Gala Díaz Langou and Diana Rodriguez Franco
2024年10月23日