<報告書発表> 分断化による経済的コストは、 2008年の金融危機や新型コロナウイルス感染症のパンデミックによる経済的コストを上回る可能性

発行済み
2025年01月23日
2025
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世界経済フォーラム 広報統括(日本)栃林直子 naoko.tochibayashi@weforum.org

  • 各国は制裁措置や産業政策、その他の経済的手段を通じて、地政学的な目標を推進するために、グローバルな金融・貿易システムを一層活用するようになっています。·その結果として分断が生じ、極端な分断化シナリオにおいては、グローバルGDPを5.7兆ドル、つまり約5%減少させる可能性があります。これは、2008年の金融危機や新型コロナウイルス感染症のパンデミックよりも大きな影響となるでしょう。
  • この新しいレポートでは、政策立案者が「エコノミック・ステイトクラフト」の手段を活用して、世界的な繁栄を損なうことなく、国家の安全保障と主権を守る方法を検討しています。
  • レポートはこちら。年次総会の詳細はこちら。ソーシャルメディア上のハッシュタグは、#WEF25。

2025123日スイス、ダボス – 発表された世界経済フォーラムの新しいレポートは、地政学的分断の増加による重大な経済リスクを明らかにしています。

「グローバル金融システムにおける分断への対応(Navigating Global Financial System Fragmentation)」と題する本レポートでは、各国の政策によって生じる分断によって、貿易および国境を越えた資本移動の減少や経済効率の低下が起こり、世界経済に6,000億ドルから5兆7,000億ドル(最大でグローバルGDPの5%)の損失が生じる可能性があると推定。また、極端な分断化シナリオでは、世界的なインフレ率が5%以上上昇する可能性もあると指摘します。

オリバー・ワイマンの協力を得て作成された本レポートは、地政学的な分断化の進行による経済への影響が、2008年の金融危機や新型コロナウイルス感染症のパンデミックによる混乱を上回る可能性があることを示しています。各国は、自国の地政学的目標を推進するために金融システムを一層活用するようになっています。これを示すように、2017年以降、制裁措置は2017年以降、370%増加。また、補助金や産業政策、並列的な金融構造の構築に関する議論も行われています。本レポートでは、政策立案者に対し、世界経済における協力、持続可能な発展、レジリエンスの向上を促進する経済政策の採用を呼びかけています。

同フォーラムの金融と通貨システム部門長、マシュー・ブレイクは「グローバル経済における分断化の潜在的なコストは莫大なものです。リーダーたちは、原則に基づくアプローチを通じてグローバル金融システムを守るという重大な機会に直面しています」と述べています。

分断化のインパクト

分断化がインフレ率やGDP成長率に与える影響は、グローバルリーダーたちが採用する政策に大きく依存します。原則に基づくアプローチにより、政策立案者は、生活費やGDP成長率などへの予期せぬ影響を緩和しながら、自国の経済や社会にとって適切な政策を進めることができるでしょう。

例えば、貿易関係をモデル化した際に、東側ブロック(中国やロシアなど)と西側ブロック(米国およびその同盟国)が完全にデカップリングされるシナリオでは、資本や貿易の流れが国家安全保障や競争力に関連する敏感な分野のみに制限される低デカップリング・シナリオと比較して、GDP成長率がほぼ10分の1に減少することが示されています。同時に、インフレ率もほぼ9倍となります。

東側諸国と西側諸国との間が完全にデカップリングされる最も極端な分断化シナリオでは、非同盟諸国が貿易を行うことができるのは、最も重要な経済パートナーとの間のみとなります。このとき、GDP成長率は10%以上低下する可能性があり、これは世界平均のほぼ2倍にあたります。インド、ブラジル、トルコ、そしてラテンアメリカ、アフリカ、東南アジア地域の新興国が最も大きな負担を強いられるでしょう。

同フォーラムのプライベート・マーケット・リード、マット・ストレイハンは、次のように述べています。「分断化はインフレを加速させるだけでなく、統合された金融システムに依存して発展を続ける新興市場や発展途上国の経済成長の見通しにも悪影響を及ぼします。各国のリーダーたちは、グローバルな金融システムの完全性と機能を保護し、金融関係者が地政学的に様々な分野の取引相手と関わる権利を確保することで、すべてのステークホルダーにとってより効果的な金融システムを実現することができます」。

グローバルな金融システムの保護

本レポートは、金融セクターで活躍する25人以上の最高経営責任者(CEO)、研究者、その他のリーダーたちが作成した、グローバル金融システムの分断化を防ぐための原則を提示しています。この原則は、グローバルに展開する金融サービスが有効に機能するための基盤となるものであり、これを守ることが金融システム分断化の影響軽減に役立つでしょう。同原則では、法の支配の尊重、財産所有権、システムの相互運用性、主権資産の一方的な収用回避など、金融システムの運用と市場の信頼を維持するための8つの主要条件が概説されています。

オリバー・ワイマンのパートナーであり、金融犯罪防止を担当するダニエル・タネンバウム氏は、「制裁、輸出規制、関税など、経済的手段によって他国に影響を及ぼそうとするエコノミック・ステイトクラフトが、各国の外交政策の一部として実施されることが増えています。グローバル経済に予期せぬ衝撃を与えないよう、これを管理する枠組みを確立することが重要です」と述べています。「この新しいレポートは、各国政府が経済政策を展開する際に、市場の安定とグローバルな繁栄を考慮することを求める企業からの行動要請です」。

さらに、本レポートでは、グローバルな繁栄を損なうことなく、国家の安全保障と主権を守るための経済的国策の実施方法についても概説しています。これには政策立案者向けの8つの主要な検討事項が含まれており、特に、より効果的な制裁の設計、互いに利益のある分野の促進、予期せぬ影響の削減、21世紀の地政学的および経済的ダイナミクスを反映した金融システムの近代化などを取り上げています。

年次総会2025について

2025年1月20日から24日までスイスのダボス・クロスタースで開催される世界経済フォーラム年次総会は、「インテリジェント時代における連携」をテーマに世界有数のリーダーたちを招集して行われます。本会合では、テクノロジーが急速に進歩する時代における5つのサブテーマ「成長の再構築」、「インテリジェント時代における産業」、「人材投資」、「地球環境保全」、「信頼の再構築」に焦点を合わせ、より持続可能かつ包摂的な未来を形作るための新たなパートナーシップと洞察を促進します。詳細はこちら

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