<報告書発表>2025年のグローバルなサイバーセキュリティの展望を左右するサイバー空間の複雑化

発行済み
2025年01月13日
2025
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世界経済フォーラム 広報統括(日本)栃林直子 naoko.tochibayashi@weforum.org

  • 大規模な組織の54%が、サイバーレジリエンスの達成を阻む最大の障壁としてサプライチェーンの相互依存性を挙げています。
  • 地政学的な混乱はリスクに対する認識に影響を与え、CEOの3人に1人がサイバー諜報活動と機密情報の漏洩/知的財産の盗難を最大の懸念事項として挙げています。
  • 複雑性の増大は、サイバー空間に関する不平等をさらに悪化させ、先進国と新興国の格差を深め、セクター間の不均衡を拡大し、大規模な組織と小規模な組織の差を広げることになります。
  • レポート全文はこちら。年次総会の詳細はこちら。ソーシャルメディア上のハッシュタグは、#WEF25。

2025年1月13日、スイス・ジュネーブ – 世界経済フォーラムが発表した「グローバル・サイバーセキュリティ・アウトルック2025」において、企業や国家に重大な影響を及ぼすサイバー空間の複雑性の増大が指摘されています。この複雑性は、新興技術の急速な成長、広範な地政学的不確実性、脅威の進化、規制上の課題、サプライチェーンの相互依存に潜む脆弱性、そして拡大するサイバースキルギャップに起因しています。

複雑性の増大は、サイバー空間に関する不平等をさらに悪化させ、先進国と新興国の格差を深め、セクター間の不均衡を拡大し、大規模な組織と小規模な組織の差を広げることになります。

同フォーラム取締役のジェレミー・ジュルゲンズは次のように述べています。「サイバー空間は、急速な技術革新、サイバー犯罪の巧妙化、そしてサプライチェーンが深く相互に結びついていることにより、かつてないほど複雑かつ困難な状況となっています。本報告書は、リーダーたちがこれらの課題に対処し、サイバーレジリエンスを強化するために必要な洞察力をもたらします。すべての人がデジタル化の恩恵を確実に享受するためには、各国政府、企業といったステークホルダーの連携が何よりも重要です」。

本報告書では、サイバー環境における加速する複雑性と予測不可能性を促進する主な要因を特定し、組織および国家のサイバーセキュリティ体制に対する累積的な影響に関する以下の洞察が示されています。

  • サプライチェーンリスクの相互依存性:相互依存関係の増加は、相互接続されたサプライチェーン内に脆弱性を生み出し、サイバー空間の複雑化に拍車をかけています。大規模な組織の54%が、サイバーレジリエンスの達成を阻む最大の障壁としてサプライチェーンの課題を挙げています。
  • 地政学的な緊張:広がり続ける混乱がリスクに対する認識に影響を与え、CEOの3人に1人がサイバー諜報活動と機密情報の漏洩/知的財産の盗難を最大の懸念事項として挙げています。一方で、サイバーリーダーの45%は業務とビジネスプロセスの混乱を懸念しています。
  • インテリジェント時代のセキュリティ:AIがもたらすサイバーセキュリティのリスクが認識されている一方で、サイバーレジリエンスを確保するための必要なセキュリティ対策が不十分なままAIの導入が急速に進んでいるというジレンマが存在します。2025年には、66%の組織がサイバーセキュリティにAIが大きな影響を与えると予想。しかし、AIツールの展開前にそのセキュリティを評価するプロセスを導入していると報告した組織は37%にとどまっています。
  • 脅威に関する見通しの進化:新興テクノロジーによって可能となった前例のないレベルのサイバー脅威の巧妙化により、詐欺やソーシャルエンジニアリング攻撃の実行、偽情報の生成、ランサムウェアの実行といった悪意ある行為者の能力が、かつてないほどのペース、範囲、規模で強化されています。約47%の組織が、生成AIによって強化された敵対的攻撃を最大の懸念事項として挙げています。
  • 規制:規制はサイバーレジリエンスを強化しますが、2024年の「サイバーセキュリティ年次総会(AMC)」に出席したCISOの76%が、規制の断片化が重大なコンプライアンス上の課題をもたらしていると報告しています。
  • 人材に関する課題:2024年以降、サイバーセキュリティのスキルギャップは8%拡大し、3社のうち2社でセキュリティ要件を満たすために必要な人材とスキルが不足。現在必要な人材とスキルを確保できていると自信を持っている企業は、わずか14%にとどまっています。

アクセンチュアでセキュリティのグローバル統括を務めるパオロ・ダル・シン氏は、「サイバーセキュリティの脅威はかつてないほど複雑かつ予測不能であり、企業の財務安定性に直接的な影響を及ぼす可能性があります。AIの破壊的な力は、サプライチェーンの脆弱性や地政学的な緊張と相まって、あらゆる業界で強固なサイバーレジリエンスを確保するための、より積極的かつ協調的なアプローチを必要としています」と述べています。「こうした課題に自信を持って対処するためには、経営幹部がサイバーセキュリティを事業や組織のレジリエンスを維持する手段として活用し、セキュリティを最優先とするマインドセットを身に付けなければなりません」。

本報告書では、サイバーセキュリティから「サイバーレジリエンス」(重大なサイバーインシデントが目標や目的に与える影響を軽減する組織の能力)への視点の転換を求めています。 さらに、組織や国家が効果的にリソースを配分し、サイバー脅威に対するレジリエンスを強化するために不可欠な、社会経済的な視点からのサイバーリスク評価の重要性を強調しています。

コスタリカの科学技術・電気通信大臣であるパウラ・ボガンテス・サモラ氏は、「2022年のコスタリカに対するサイバー攻撃が警鐘となり、サイバーセキュリティを単なる経費ではなく、未来への重要な投資として認識するという根本的な転換の必要性が強調されました。このことを通じて、コスタリカだけでなく地域全体でレジリエンスを高めるために、近隣諸国と協力してエコシステムを強化することが必要だということを認識しました」と述べています。

グローバル・サイバーセキュリティ・アウトルック2025」は、複雑化が進むサイバーセキュリティの状況について包括的な分析を行い、刻々と変化するサイバー空間をナビゲートするための実行可能な洞察を提供します。本報告書では、デジタル経済に不可欠な相互接続ネットワークのセキュリティを確保し、深刻化するサイバーセキュリティ人材の不足に効果的に対処するには、エコシステム全体にわたる力を合わせた協調的取り組みが必要であることを強調しています。また、サイバーセキュリティの経済的な影響についても考察し、サイバーセキュリティをビジネスの中核となる推進要因として優先させる上で、リーダーシップが果たす重要な役割を強調しています。

年次総会2025について

2025年1月20日から24日までスイスのダボス・クロスタースで開催される世界経済フォーラム年次総会は、「インテリジェント時代における連携」をテーマに世界有数のリーダーたちを招集して行われます。本会合では、テクノロジーが急速に進歩する時代における5つのサブテーマ「成長の再構築」、「インテリジェント時代における産業」、「人材投資」、「地球環境保全」、「信頼の再構築」に焦点を合わせ、より持続可能かつ包摂的な未来を形作るための新たなパートナーシップと洞察を促進します。詳細はこちら

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