世界経済フォーラム 広報統括(日本)栃林直子 naoko.tochibayashi@weforum.org
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2024年12月11日、スイス、ジュネーブ - 世界経済フォーラムが発表した2つの新しいレポートによると、企業は増大する気候リスクに対処して今すぐに行動を起こす必要があります。遅れをとった企業は、2035年までに年間収益の最大7%が消失するという、深刻な財務的損失に直面する可能性があるのです。これは、新型コロナウイルス感染症レベルの混乱が1年おきに発生した場合と同様のインパクトです。
アクセンチュアの協力を得て作成されたレポート「Business on the Edge: Building Industry Resilience to Climate Hazards(絶体絶命のビジネス:産業における気候災害レジリエンスの構築)」とボストン・コンサルティング・グループ(BCG)の協力を得て作成された「The Cost of Inaction: A CEO Guide to Navigating Climate Risk(無行動のコスト:気候リスクをナビゲートするCEOのためのガイド)」は、企業が気候リスクを乗り越えて、脱炭素化、自然保護、適応、レジリエンス構築を通じて長期的な価値を引き出すためのロードマップを提供します。
猛暑をはじめとする気候変動による上場企業の固定資産損失は、2035年までに年間5,600億~6,100億米ドルに上ると予想されており、中でも電気通信、公益事業、エネルギー関連企業が最も脆弱です。エネルギー集約型セクターの企業が脱炭素化に失敗した場合、グローバルな気候規制の強化に伴い、移行リスクの高まりに直面します。2030年までに、カーボンプライシングのみで収益の最大50%が消失する可能性があるのです。
このようなリスクは、サプライチェーンや地域社会への連鎖的な影響と相まって、レジリエンス戦略の重要性と必要性を浮き彫りにしています。
対照的に、適応、レジリエンス、脱炭素化にすでに投資し始めている企業は、すでに目に見える見返りを得つつあります。1,200万人の従業員を代表する世界のCEO131人の参加する「CEO気候リーダー・アライアンス」の調査によると、気候への適応とレジリエンスに1ドル投資するごとに、最大19ドルの損失回避が可能であるとのこと。これは、CDPからのデータに基づいており、企業や公共機関による環境への影響の開示に役立つものです。また、急速な移行シナリオにおいて、ほとんどの産業が排出コストの50%以上を経済的に削減できるという証拠を提示し、CEOや企業がリスクを回避し、機会を捉えるための青写真を示しています。
リスクはあるものの、進化する気候関連市場は大きな成長機会ももたらします。グリーン市場は、2024年の5兆ドルから2030年には14兆ドルに成長すると予想。いち早く市場に参入した企業は、持続可能なソリューションと適応策において競争優位性を獲得できるでしょう。これらの市場は様々なセクターやバリューチェーンにまたがっており、最大のセグメントは代替エネルギー(49%)、持続可能な輸送(16%)、持続可能な消費財(13%)であり、いずれもGDPを大きく上回る成長を遂げている最中です。
世界経済フォーラム取締役のギム・フエイ・ネオは、次のように述べています。「ネットゼロへの移行や自然保護に積極的なソリューションを主導する先駆者たちは、環境を改善し地域社会を支援すると同時に、企業がどのように価値を創造できるかを示しています。気候関連のリスクと機会にホリスティック(全体論的)にかつ体系的に取り組むことで、企業はより強固で持続可能な事業を構築し、生態系を保護、回復し、複雑化、不確実化する世界において長期的、経済的、社会的なレジリエンスを構築することができるのです」。
ポツダム気候影響研究所のヨハン・ロックストローム氏をはじめとする一流の科学者たちは、氷床、海流、永久凍土など、5つの地球システムが不可逆的転換点に近づいていると警告しています。
地球システムとは、相互に結びついた自然のプロセスであり、地球の気候を調整し、生態系を維持し、炭素貯蔵、水ろ過、気温安定化など、社会や経済の繁栄を可能にする重要なサービスを提供しています。グリーンランドと南極西部の氷床が崩壊すれば、海面上昇は最大10メートルに達し、少なくとも5億人分の深刻な食糧不足が発生する可能性があるのです。
科学的知見に裏付けられたこのような転換点や気候変動の危険性は憂慮すべきものですが、これをビジネス上のリスクに置き換えることには困難が伴うのも事実です。本レポートはこのギャップを埋めることを目的としており、ビジネスリーダーたちが様々なステークホルダーにとっての価値を守りつつ、持続可能かつ強靭な社会に貢献するための基盤を提供します。また、両レポートとも、調査結果の背景にある方法論、情報源、データセットに関する詳細な情報を掲載しています。
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