世界経済フォーラム コミュニケーションズ・リード 栃林直子 naoko.tochibayashi@weforum.org
スイス、ジュネーブ、2024年6月12日 - 発表された「グローバル・ジェンダー・ギャップ・レポート2024」によると、世界はジェンダー・ギャップの68.5%を解消しました。しかし、現在のペースでは、完全なジェンダー・パリティ(ジェンダー公正)を達成するまでにあと134年かかることが明らかになりました。これは、5世代分に相当します。世界全体では、ジェンダー・ギャップは昨年から0.1%ポイント縮小しています。
「いくつかの明るい話題はあるものの、2024年の『グローバル・ジェンダー・ギャップ・レポート』で強調されているように、改善は緩慢で漸進的であるため、特に経済的・政治的分野におけるジェンダー・パリティの達成に向けた世界的な新たなコミットメントが緊急に必要です。ジェンダー・パリティの実現を2158年まで待つことはできません。断固とした行動をとるべき時は今です」と、世界経済フォーラム取締役のサーディア・ザヒディは述べています。
政治分野における女性の地位は、国レベルでも地方レベルでも向上していますが、グローバルに見て女性がトップレベルの地位に就くことはかなり難しいままです。2024年には60を超える国政選挙が実施され、史上最大のグローバル人口が投票することになるため、こうした代表権の課題は改善される可能性があります。リンクトインのデータが示すように、産業界のトップレベルのポジションには依然として女性が少ないのです。あらゆる業界で、新卒入社から経営陣に加わるまでの間に女性の割合が大きく減少することが観察されています。
ジェンダー・ギャップ指数に含まれる国々の半数が少しずつ前進しているものの、依然として大きな格差が残っています。2024年のグローバル・ジェンダー・ギャップのわずかな縮小は、「経済」のプラスシフト(0.6%ポイント増)に牽引されたもので、「政治参加」と「医療へのアクセス」は少し前進し、「教育」はわずかに減少しました。
課題は残り続けていますが、レポートでは注目すべき前向きな進展が強調されています。女性のグローバルな労働力参加率におけるジェンダー・パリティは、新型コロナウイルス感染症パンデミック後の最低値62.3%から65.7%に回復しました。ラテンアメリカとカリブ海諸国は、総合的なジェンダー・パリティ・スコア74.2%を達成し、労働力参加と専門的役割における強力な平等によって、これまでで最高の「経済」スコア(65.7%)と、地域別で2番目に高い「政治参加」スコア(34%)を達成しました。ラテンアメリカにおけるこのサクセス・ストーリーを、他地域のモデルにすることができるでしょう。
多くの国が大きく前進し、最も改善した6カ国はランキングで20位以上上昇しました。その6カ国は、エクアドル(+34、16位)、シエラレオネ(+32、80位)、グアテマラ(+24、93位)、キプロス(+22、84位)、ルーマニアとギリシャ(+20、それぞれ68位と73位)です。
欧州はジェンダー・パリティ・スコア75%で引き続きリード。上位10カ国中の7カ国を欧州の国々が占めています。アイスランドは依然として最もジェンダー平等な国であり、全体的なジェンダー・ギャップの93.5%を解消しています。その他の上位国には、フィンランド、ノルウェー、スウェーデン、ドイツ、アイルランドが含まれ、いずれもジェンダー・ギャップの80%以上を解消しています。欧州全体のジェンダー・パリティ・スコアは、2006年以来6.2%ポイント向上しています。
北米のジェンダー・パリティ・スコアは74.8%で2位にランクされ、2006年以来4.3%ポイント改善しました。この地域は、「教育」と「医療へのアクセス」において高い実績を示しており、それぞれ100%と96.9%のスコアを獲得しています。「経済」は76.3%と高水準を維持していますが、所得格差や指導的役割への参加率の低さにより、若干低下しています。
ラテンアメリカ・カリブ地域は74.2%で3位。2006年以降、大きな前進が見られ、全体として8.3%ポイント改善しています。これはどの地域よりも大きな改善です。同地域では、労働参加においても心強い改善が見られ、専門的・技術的職務における女性の代表性は高く、同地域の68%で完全平等を達成しています。
東アジア・大洋州地域のスコアは69.2%で4位。同地域の「経済」のスコアは71.7%に改善しましたが、労働力参加と労働力代表には国によって大きな格差が残っています。「教育」や「医療へのアクセス」の成果は高いものの、「政治参加」は遅れています。ニュージーランド(4位)やフィリピン(25位)などの国々がこの地域をリードしています。
中央アジアは69.1%で5位。「教育」と「医療へのアクセス」はほぼ同等であるにもかかわらず、「経済」と「政治参加」のスコアは2023年以降後退しています。アルメニア、ジョージア、カザフスタンがトップで、それぞれジェンダー・ギャップの71%以上を解消しています。
サハラ以南のアフリカ諸国は68.4%で6位。この地域は、ナミビアや南アフリカのような国々がリードしており、「政治参加」において大きな進展を見せています。しかし、「経済」と「教育」には依然として課題があります。同地域の半数以上の国がジェンダー・ギャップの70%以上を解消していますが、上位と下位では22.9%ポイントもの開きがあります。
南アジアのスコアは63.7%で7位。この地域は、2006年以降、「教育」において顕著な改善を遂げましたが、「経済」や、閣僚レベルや議会における代表のような「政治参加」のいくつかの側面では苦戦しています。バングラデシュがこの地域をリードし、ネパールとスリランカがこれに続いています。
中東・北アフリカは61.7%で8位。「経済」と「政治参加」のスコアは低いものの、この地域では2006年以降、教育達成度に顕著な改善が見られます。労働参加率は依然として低いものの、近年はサウジアラビア、バーレーン、アラブ首長国連邦(UAE)がジェンダー・パリティに向けて前進しています。UAEとイスラエルは、この地域でトップ100にランクインしたただ2つの国々です。
2024年、女性の労働力参加におけるジェンダー・パリティは改善したものの、地域差は依然として大きいままです。リンクトインのデータによると、業界レベルでは女性の労働力比率はほぼすべての業界と経済圏で男性を下回っており、グローバルな労働力の42%、シニアリーダーの31.7%が女性です。さらに、職業上のネットワークや育児・介護負担におけるジェンダー・ギャップなどの要因が、女性の経済的進歩を遅らせています。世界銀行は、雇用と起業におけるジェンダー・ギャップを解消すれば、世界のGDPを20%以上増加させることができると見積もっています。
前向きな進展は、AIエンジニアリングにおける女性の割合が2016年の2倍以上になったことであり、この分野で一定の進展があったことを示しています。しかし、STEM分野とAI人材におけるジェンダー・ギャップは依然として大きな課題です。リンクトインのデータによると、新卒でSTEM(科学、技術、工学、数学)職に就く女性は29%、経営幹部ではわずか12.2%です。コーセラのデータによると、オンライントレーニングにおけるジェンダー・パリティは、AIとビッグデータ(30%)、プログラミング(31%)、ネットワークとサイバーセキュリティ(31%)のコースにおいて、既存の労働力格差を解消するには低すぎます。さらに、PwC(プライスウォーターハウスクーパース)による大規模な労働者調査では、現在の役割から見た需要の認識に男女差があることが明らかになっており、女性はデジタル、分析、グリーンに関するスキルが今後5年間の現在のキャリア軌道にとってそれほど重要ではないと見積もっています。また、将来のスキルを身につける機会に関する認識にもジェンダー・ギャップがあります。
「2022年をピークに、女性のリーダー職への登用が減り始めています。世界経済が冷え込む中、不釣り合いに打撃を受けているのは女性であり、女性が会社で働くことを妨げている構造的課題が強化されています」とリンクトインのグローバル・パブリック・ポリシーとエコノミック・グラフ担当バイスプレジデントのスー・デューク氏。「生成AIが労働市場に影響を及ぼし始め、雇用主が最も重視するスキルが再調整される中、私たちは極めて重要な局面を迎えています。雇用主は、スキル向上のプログラムや施策を性別に関係なくすべての従業員に対して公正かつ平等に提供されるようにすることが重要です」。
コーセラのCEOであるジェフ・マッジョンカルダ氏は次のように述べています。「私たちの調査によると、受講者総数は増加しているものの、AIとデジタルスキルにおける男女格差は拡大しています。「このギャップを埋め、新しいテクノロジーを学ぶための公平なアクセスを確保するためには、的を絞った介入が不可欠です。生成AIはこの取り組みで重要な役割を果たし、世界中の学習者の多様なニーズを満たすためにパーソナライズされた多言語学習体験を可能にするでしょう」。
政府と企業は、サステナブルな成長に不可欠なジェンダー・パリティを受け入れるために、リソースとマインドセットを転換しなければなりません。協力と的を絞った介入によってのみ、平等な世界を実現することができるのです。世界経済フォーラムは、2030年に向けた「グローバル・ジェンダー・パリティ・スプリント」において、連帯して行動することを呼び掛けており、ジェンダー・パリティに関する傾向をリセットするために、パブリックセクターと企業の両方からパートナーを募っています。
「グローバル・ジェンダー・ギャップレポート」は、「経済」、「教育」、「医療へのアクセス」、「政治参加」におけるジェンダーに基づく格差を評価するもので、今回で18年目を迎えます。2006年以降の進展を追跡する最も長い歴史を持つ指標として、これらの格差の解消の進展を長期的に監視しています。
「グローバル・ジェンダー・パリティ・スプリント2030」は、2030年までに経済参加とリーダーシップにおけるジェンダー・パリティを加速させるために、企業、政府、国際機関を結ぶプラットフォームです。このイニシアチブは、ジェンダー平等を掲げてインパクトのある介入策を提供することで、グローバルな経済成長とイノベーションの新たな基準の設定に取り組んでいます。
「グローバル・ジェンダー・パリティ・スプリント」の詳細はこちら。
以下、インフォグラフィックスもご参照ください。(英文のみ)
<ご参考>
世界経済フォーラムの アジェンダ を 日本語 | スペイン語 | 中国語で読む
フォーラムの インパクトの詳細を知る
フォーラム ストラテジック・インテリジェンスとトランスフォーメンション・マップ
フォーラムの動画/写真、X @wef|@davos|Instagram|リンクトイン|ティックトック|ウェイボー |ポッドキャスト| フェイスブック|YouTubeでフォローする
英文プレスリリース配信登録