世界経済フォーラム コミュニケーションズ・リード 栃林直子 naoko.tochibayashi@weforum.org
2024年1月8日、スイス、ジュネーブ - エネルギー需要を下げるために企業が行動を起こし、これからの10年で対策が講じられることで、世界経済にとって少なくとも年間2兆ドルの節約につながる可能性があります。これは、成長を促進し、企業にとっては排出量を削減するとともに、費用を節減しつつ競争上の優位性をもたらすものです。
このことを示す新たなレポートが発表されました。世界経済フォーラムの「エネルギー需要変革」イニシアチブ(Transforming Energy Demand initiative)がPwC(プライスウォーターハウスクーパース)と協力して作成したもので、インターナショナル・ビジネス・カウンシル(IBC)のメンバーであるCEOが支持しています。IBCは日本企業を含む120人以上の企業経営者で構成されるグループであり、そのビジネスはグローバルなエネルギー使用量の3%を占めています。
このレポートは、エネルギー需要が国際的な課題として急浮上していることを受けて作成されました。国連気候変動枠組条約第28回締約国会議(COP28)で最も広く支持されたイニシアチブのひとつとして、各国政府は、2030年までに世界の再生可能エネルギー容量を3倍にし、エネルギー効率改善率を2倍にすることを約束しました。各国は2023年から2030年にかけて、エネルギー強度(第一次エネルギー供給量を国内総生産(GDP)で割った値。1単位の経済生産のために消費したエネルギー量を表す)をこれまでの2倍以上のスピードで削減する必要があり、そのためには企業からの大幅な変革が求められます。
本レポートでは、エネルギー需要に対応するために企業が今すぐできる実践的な行動を紹介。その原動力となるのは、建物、産業、輸送におけるエネルギー強度の削減です。例えば、人工知能を活用した工場ライン設計の最適化、エネルギー効率の向上、バリューチェーン連携、クリーンエネルギーへの取り組みを共有するための産業クラスター化、建物の改修、交通や輸送の電化などの省エネ対策などがあります。
また本レポートは、「このような需要サイドの行動が持つポテンシャルは極めて大きい」とし、すべての経済セクターで協力して、短期的でコスト効率のよい31%の需要削減を行うことを提案。試算によると、これらは今すぐに実現可能であり、新しい技術を必要としないにもかかわらず、魅力的なリターンがあるとしています。これによって3,000基の新たな発電所の建設を回避することが可能となり、またこのような行動を協調して行うことで、成長と生産性が向上します。同時に、COP28で各国が設定したエネルギー効率改善率に必要な変化をもたらし、パリ協定で設定された目標達成の軌道に乗せることが可能となります。
世界経済フォーラムのオリビエ・シュワブ取締役は「政策立案者とビジネスリーダーたちは協力して、人、社会、地球にとってプラスとなるエネルギー転換を加速させなければなりません。企業はこの変革において主導的な役割を果たすことができます。だからこそIBCは、各組織が今日、個別に、またバリューチェーンを通じてとることができる実践的な行動を示し、各企業のエネルギー消費に焦点を合わせることにしたのです」と述べています。
エネルギー需要に焦点を合わせるのは、1年前の2023年年次総会でIBCのメンバーが一堂に会した際に、需要サイドのエネルギー転換を推進する上で企業が主導的な役割を果たす必要性を認識したため。エネルギー転換と気候に関する議論の多くは供給サイドに着目してきましたが、需要サイドの行動は「今すぐに実行でき、新技術を必要とせず、魅力的なリターンがある」とレポートは指摘しています。
エネルギー強度削減の事例はいずれもまだ十分に取り組まれていない分野であり、業績の向上や温室効果ガス削減につながる可能性についてもほとんど認識されていません。エネルギー効率を高めることの重要性を強調する啓蒙キャンペーンと相まって、進展を促進するための規制や政策も必要となるでしょう。本レポートで調査したIBCのCEOの約47%は、エネルギー需要の削減に取り組む企業を支援する規制が不足していると回答しており、企業とパブリックセクターが協力して変革を推進する必要性を示唆しています。
「製品の製造やサービスの提供に必要なエネルギー量の削減は、今すぐにでも取り組めることです。前進しているとは言え、まだまだやるべきことはたくさんあります。また、エネルギー需要が持続不可能な速度で増加し続けているのも事実です。企業は、拡張性のある現在利用可能な技術を使用することで、生産量を減らすことなく、現在のエネルギー強度を最大3分の1まで削減できるという重要な役割を担っています。したがって、各国政府や規制当局と協力して、先進国と開発途上国の両方の市場でこの課題の進展を加速させることが極めて重要です」と、IBCの議長を務めるバンコ・サンタンデールのアナ・ボティン会長は述べました。
「エネルギーの供給と並行して需要削減に取り組み、現在の活動のエネルギー強度を下げ、エネルギー効率を高めて将来の成長につなげることが極めて重要です。そうすることで、世界はパリ協定で定められた目標を達成し、2030年までにエネルギー効率の改善率を倍増させるというCOP28の公約を支持しながら、ビジネスの成長を支えることができます。そのためには、官民を超えた深い協力が必要です。変革のためのビジネスケースに対する認識を高め、政策と企業のインセンティブを整合させ、行動を喚起するための新たな金融ソリューションを開発する必要があります」と、PwCグローバル会長のボブ・モリッツ氏は述べています。
このレポートは、ダボス-クロスタースで開催される年次総会2024で議論される予定です。IBCのメンバーは、公共政策のアジェンダについて行動を起こし、需要に応じた行動を目標とするビジネスパートナーシップを加速させるために、各国政府のリーダーと会合を開きます。
世界経済フォーラム2024年年次総会について
世界経済フォーラムは「信頼の再構築(Rebuilding Trust)」をテーマに、世界有数のリーダーたちを招集して世界経済フォーラム2024年次総会を開催します。
調査について
世界経済フォーラムの「エネルギー需要の変革」イニシアチブ(Transforming Energy Demand initiative)は、PwCの協力により行われています。PwCは、直接事業がグローバルなエネルギー需要の約3%を生み出している多国籍企業のグループ、IBCのメンバー120名以上と取り組みを進めてきました。本調査の目的は、企業や各国政府がエネルギー需要に対する行動を通じてグローバルなエネルギー転換を加速させる具体的な方法を特定することです。方法論に関する詳細はレポートをご参照ください。
<ご参考>
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