世界経済フォーラム コミュニケーションズ・リード 栃林直子 naoko.tochibayashi@weforum.org
2023年11月28日、スイス、ジュネーブ - 世界経済フォーラムの最新のレポートは、より持続可能かつカーボンニュートラルな未来への移行には、2050年までに13兆5,000億ドルの投資が必要であり、特に生産、エネルギー、運輸部門への投資が不可欠であるとしています。
アクセンチュアと共同で発行した「ネットゼロ・インダストリー・トラッカー 2023」レポートでは、鉄鋼、セメント、アルミニウム、アンモニア、石油・ガス、航空、海運、トラック輸送の8つのセクターについて、ネットゼロ・エミッションに向けた進捗状況を調査しています。これらのセクターは、そのエネルギー需要の90%を化石燃料に依存しており、脱炭素化に向けた技術的・資本集約的な課題が突き付けられています。
国連気候変動枠組条約第28 回締約国会議(COP28)において、国連が「排出の谷間」を埋めるための「劇的な気候変動対策」を求めたのと同じ週に発表された同レポートは、排出密度の高い生産、エネルギー、輸送産業の脱炭素化を加速するための道筋を概説しています。ネットゼロへの道筋は、セクターおよび地域独特の要因によって異なるものの、産業の脱炭素化を加速させるためには、ほとんどのセクターにおいて、クリーン電力、クリーン水素、および炭素回収・利用・貯蔵(CCUS)のためのインフラへの投資が必要です。
世界経済フォーラムのエネルギー・マテリアル・インフラ部門長であるロベルト・ボッカは、次のように述べています。「現在、世界の温室効果ガス排出量の40%を排出するこれらの産業・運輸セクターの脱炭素化は、ネットゼロの達成に不可欠です。経済成長に不可欠な、安価かつ信頼のおける資源へのアクセスを確保しつつ、二酸化炭素排出を低減するテクノロジーの使用へと転換できるよう、政策やインセンティブ強化によって補完された大規模なインフラ投資が必要です」。
同レポートによれば、13兆5,000億ドルの投資は、太陽光、洋上および陸上風力、原子力、地熱の平均クリーンパワー発電コスト、クリーン水素および炭素輸送のための電解装置のコストおよび貯蔵コストに基づいています。
「ネットゼロ・インダストリー・トラッカー」は、進捗を測定しギャップを特定するための排出駆動要因と促進要因の包括的な枠組み、各産業のスコアカード、およびセクターを超えた協力の機会を提案。2022年版を基に更新された同レポートは、輸送セクターを含み、枠組みを用いてネットゼロ産業変革に向けた戦略を特定しています。
同レポートの調査結果は、低排出技術、インフラ、グリーン製品の需要、政策、および投資を含む、強固な促進環境の構築が急務であるともしています。既存の産業および輸送資産基盤を脱炭素化するためのさらなる資本支出に加えて、クリーンエネルギーインフラを構築するためにも、さらなる投資が必要です。
世界の温室効果ガス排出量に占める重工業部門と運輸部門の割合
ネットゼロ排出を実現するために必要な技術の大部分は、2030年以降に商業的な成熟段階を迎えると予想されており、研究、開発、および規模を拡大するためには、協力的なアプローチが必要です。これには、旧式の技術を低排出の代替手段に置き換えること、プロセスおよび機械の効率向上、電化、および循環経済の推進が含まれます。
「脱炭素化とエネルギー効率向上のために、早急に行動を起こすことが不可欠です。さもなければ、過去3年間の平均増加率が8%と高い主要産業部門の化石燃料需要は、2050年までに大幅に増加してしまいます」と、世界経済フォーラムのエネルギー・トランジション・インテリジェンスとリージョナル・アクセラレーション部門長、エスペン・メーラム。「しかし、産業界のリーダーたちは、例えばインダスドリー・クラスターやベストプラクティスの育成、クリーン水素やCCUSのような重要分野におけるインフラの共有、低排出製品に対する需要の構築など、新たな共同作業やイノベーションの方法を通じて対応できるのです」。
また、同レポートによると、カーボンプライシング、税控除、公共調達、強力なビジネスケースの策定により、必要な投資が行われやすくなりますが、実証されていないテクノロジーを利用したリスクの高いプロジェクトに資本を集めることは、現在のマクロ経済環境では難しい可能性があります。しかし、機関投資家や多国間銀行は、排出量目標に連動した低コストの資本へのアクセスを提供することで重要な役割を果たすことができます。
アクセンチュアのストラテジー部門を率いるムークシット・アシュラフ氏は、「エネルギー転換を成功させるためには、官民の協力が不可欠です。また、クリーンエネルギーへの安価で信頼性の高いアクセスを管理し、脱炭素化のための増分コストに対処する上で、テクノロジーは重要なイネーブラーになり得ます。クリーンな電力、二酸化炭素回収・貯留、エネルギー効率化といったテクノロジーを、産業を超えて広く普及・導入することが、脱炭素化の進展には不可欠です」と述べています。「さらに、ビジネスモデルのイノベーションも、需要を喚起し、産業の脱炭素化を加速させ、ネットゼロの目標を達成してレジリエントなエネルギー転換を実現することに役立つでしょう」。
レポートは、最近の政策展開が産業界のネットゼロ転換を正しい方向に導く可能性があることを認めています。先進国の中には大規模な政策措置を実施している国もありますが、工業製品や輸送サービスに対する将来的な需要の大きな割合を占めることになる新興国では、二酸化炭素排出量削減のためのテクノロジーやソリューションにアクセスするための支援が必要になります。
同レポートはまた、産業部門に対し、以下の5つの分野に注力するよう求めており、各部門の具体的な行動を個別のスコアカードに詳述しています。
「このレポートでは、低炭素ソリューションとインフラストラクチャーが、排出削減が困難な産業における脱炭素化のペースアップにどのように貢献できるかが詳細に探求されています」と、アクセンチュアのグローバル・リソース・インダストリー・プラクティス・リード兼グローバル・サステナビリティ・サービス・リード、ステファニー・ジャミソン氏は語ります。「この深い検討内容があってこそ、企業がネットゼロ・カーボン・エミッションの達成に向けて持続可能な価値とインパクトを創出できるようになるでしょう」。
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